くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「新喜劇王」「コリー二事件」

「新喜劇王

オープニングから、いつものテンポで始まるものの、前半はちょっとテンポ悪い。しかしながら終盤一気にチャウ・シンチーの色が炸裂する展開がなんとも清々しいほどに楽しいし、胸が熱くなってしまいました。香港映画の味はまだ少し残っているようですね。監督はチャウ・シンチーハーマン・ヤウ

 

海のシーンから、なんか踊っている集団、カメラが引くとエキストラで一生懸命なモンの姿に物語が入っていく。この導入部がまず良い。エキストラで駆けずり回りながら、将来の大スターを夢見るモンは、藁をもつかむ思いでプチ整形する。しかしそれでもらえたのもヒロイン白雪姫の代役のやられ役。同室の友人は街でスカウトされスターへの道を歩み始め、半ばヤケクソになっていく。

 

白雪姫の主人公役はかつての大スターマーで、何かにつけわがままを言うばかりでスタッフを困らせている。監督は無理やり怖がるシーンを撮るために、モンに幽霊の役をやらせ、マーが本当に怖がるようにするが、マーはそれでお漏らしをしてしまう。

 

屈辱を味わったマーはその場を去るものの、モンと彼女を見にきていた両親に励まされる。マーはその後、端役のエキストラで食いつないでいくが、落ち込んだモンは恋人に電話をする。ところがその恋人はモンを騙していた詐欺師だと分かりどん底に突き落とされる。そして役者をやめて、実家に戻る。

 

そんな時、マーのお漏らし動画がネットに流れて大反響になり、マーは一躍トップスターに返り咲く。マーは恩人であるモンを訪ね、シンチー監督のオーディションを受けろと去っていく。一度は断ったモンだが、再度チャレンジすることにしオーディションへ。そこで、恋人に騙された時の演技をして採用される。

 

時が経つ。今日は主演女優賞に発表の会場。マーが読み上げたのはモンに名前だった。こうして映画は終わる。ひたすらおバカで適当なコメディタッチで進む展開がラストで一気に盛り上がる。決して一級品でも傑作でもないのだが、根底にある何かに、演出陣の才能が垣間みられてしまう。楽しい映画でした。

 

「コリーニ事件」

なかなかしっかり作られた力作で、しかもストーリーの展開も面白く、娯楽映画としても仕上がりの良い映画でした。ただ、実話ということ、さらにまたもやナチス映画かというのもないわけでもありません。監督はマルコ・クロイツパイントナー。

 

3ヶ月前に弁護士になったばかりのライネンがボクシングの練習をしている場面、そしてコリー二という男がハンス・マイヤーという事業家の部屋に入っていく場面がかぶる。間も無くして、コリー二が血のついた靴を履いてホテルにやってくる場面が続き、ハンス・マイヤーが銃で殺され、コリーニという男が逮捕されたことがわかる。

 

ライネンは、たまたまコリー二の事件のことを知り、コリー二が全く黙秘を続けているということを知り国選弁護人として軽い気持ちで引き受ける。ところが、殺されたハンスというのはライネンにとっては父親のような人物で、幼い頃家を出たライネンの父の代わりにライネンを弁護士にまで育ててくれた人物だった。ライネンはハンスの息子と親しかったが、交通事故で死んでしまい、ライネンは子供のようにハンスに可愛がられていた。

 

私情が入るからと降りるつもりだったが、恩師マッティンガー教授が検察側の代理人となったこともあり、勉強も兼ねたライネンは引き受けることになる。

 

ライネンはなんとかコリー二に口を開かせようとするが一向に心を開いてこない。どうしようもなくなったライネンはコリー二の故郷に行くことにする。そして、イタリア語を学んでいる学生を手伝いに雇い、本屋を営む父にも手伝ってもらい、コリーニの故郷へ行き、そこで一人の人物と出会う。彼の父は第二次大戦当時ナチスの通訳をしていて、その時、その街でナチスの虐殺事件があった。その目撃者がこの男であり、虐殺された市民の一人がコリー二の父親であると知る。そして、その虐殺を指揮したのがハンス・マイヤーであるとわかる。

 

ライネンはその事実を法廷でマッティンガー教授に突きつけるが、マッティンガー教授は1968年にコリー二がハンスを提訴した際に、ハンスらは当時できた法律により戦争犯罪として時効になったとして結論が出されたと反論する。

 

一時は劣勢になったライネンだが、当時成立したドイツ連邦の法律によって戦犯が戦時中の犯罪が時効になった事実を知る。そして、その法律は戦後、法律関係の立場にいたナチス関係者が関わって作ったものであり、その法律にマッティンガー教授も関わっていたことをライネンは教授を追求、とうとうその法律の非を認めさせる。

 

ようやく、すべてが明るみになったことで安堵するコリー二は法廷を退出する。翌日の公判、裁判官は昨夜コリー二が自殺したことを告げる。こうして映画は終わる。

 

ナチスの戦犯を追及する物語、戦後のドイツの司法の闇などを描いた作品で、展開もそれなりに面白いのですが、ただ、果たしてここでも一方的にナチスを悪人としている描きかたは今更のことだと思います。戦争が起こした悲劇であり、戦争がなければナチス将校もああいう非道に進むことはなかったと考えれば、今の時代もうちょっと奥の深い描き方もできるのではないだろうかと思います。