くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「実は熟したり」「水曜日が消えた」

「実は熟したり」

軽い恋愛ドラマかと思っていたら、後半に進むに連れてどんどんねちっこくドロドロしてきて、結局ちょっと後味の悪いラストシーンになった。流石に白坂依志夫の脚本といえる映画でした。監督は田中重雄。

 

年頃のしのぶが新しい見合い相手松戸を紹介されるところから映画は始まる。ところが彼女は古くからの友人五郎に惚れていた。しのぶは見合いの後相手の松戸と道を歩いていて五郎と出会う。しのぶは自分の見合い相手を友達に配給して別の縁談を作っていた。

 

五郎はたまたま付き合っていたモデルの女性が、五郎にふられて自殺未遂したことに責任を感じ、結婚することを決める。一方、しのぶの会社の同僚堀田は五郎に次いで二番目と知りながらしのぶにアタックしてくる。

 

物語はしのぶ、五郎、堀田の三人を中心の、しのぶが松戸を配給した会社の友達との展開をからめ、実は松戸が女たらしであること、五郎のフィアンセになったモデルも浮気性であることなどを絡めて、次第にドロドロの物語に発展していく。

 

結局、五郎はモデルとの結婚をやめるが、しのぶが思い切って告白するも、五郎は取引先の社長の娘との結婚を進めていた。しのぶは堀田と結婚することを決心して手を組んで歩いていって映画は終わる。

 

普通ならしのぶと五郎のハッピーエンドで締めくるるところだが、この時代の映画としてはある意味異色な感じです。前半軽いタッチの笑いが続きますが後半どんどんしつこくなってくる。そこが白坂依志夫の脚本かなと思える映画でした。

 

「水曜日が消えた」

映画としては大したことはないのですが、好きですねこういうなんか意味のない映画というか、なんなのだろうという映画。デジタル映像で作り出した、あり得なさすぎるファンタジーなのですが、どこか青春映画的な切なさも垣間見られるのが良い。監督は吉野耕平。

 

交通事故のシーンから映画が始まり。飛び散るガラス、倒れる少年、割れたミラーに映る鳥が割れ目に沿って分かれていく。そして一人の男性がベッドで目を覚ます。良くありすぎる平凡なオープニング。火曜日。主人公の僕は事故の後曜日ごとに別れる7つの人格に別れてしまった。物語は、火曜日の僕を中心に、7つに別れたことで起こるめんどくさい仕事を中心にコミカルに始まる。彼のところにはいつも一人の女性一ノ瀬が訪ねてくる。子供時代からの友達だという。

 

図書館も休み、前一週間の人格がええ加減なのでその整理で終わってしまう火曜日の僕は、とにかく真面目である。ところが、ある朝目覚めると水曜日だった。僕は今まで行けなかった図書館に行き、受付をしている端野という女性に一目惚れしてしまう。そして次の週も水曜日に目覚めた僕は、次第に端野と距離を縮め、とうとうデートに誘う。そんな彼を見つめる一ノ瀬の視線はどこか寂しげだった。

 

いつも通う病院の担当医の高橋はルーティンワークのように僕の診察をしているが、そこに来た新木という若い研修医がどうも胡散臭い。この新木を演じた中島歩という役者が下手クソすぎてまいった。ある時、僕が病院を訪ねると何やら物々しいことになっている。高橋がデータを改ざんして僕を診察していたことがわかり、その調査に新木が来たのだというがいかにも雑な演出で緊迫感がない。

 

ある夜、僕は突然意識がなくなり、気がつくと別の日になり、意識が不安定になり始める。そして、スマフォの動画で、木曜日が他の曜日に目覚めるようになったという。いかにも邪悪な存在であるかに描写され、次第に一人に統合されてくる。

 

そんなある日の、一ノ瀬が訪ねてくる。一つになったという僕と会話していたが、どうやら火曜日ではなく木曜日だという。そして、僕の事故の原因は小学校の時に一ノ瀬にもらった非常ベルのマスコットではないと告げ、一方で火曜日の僕が好きなのだろうと詰め寄る。

 

後日、新木のところに来た僕は、一つにするための手術を提案していた新木に、元のままにしてほしいと依頼する。こうして、七日間の七つの人格に戻った僕は、前と同じく、火曜日には一ノ瀬が訪ねてきて、ほのぼのした一日になる一方、他の曜日の僕もそれなりに楽しんで生きている様子が描かれて映画は終わる。

 

なんか妙なのです。火曜の僕に話しかけてきた木曜日はいかにも邪悪だったが、結局普通だったという終盤の描写がチグハグだし、高橋先生は実は僕を周りから守るためにしていたというがそのあたりに根拠も全然見えない。新木先生の演技下手でラストもよくわからない。端野と僕のことはどうなったかは結局尻切れで終わる。全体がなんともボヤけた映画ですが、なんか好きになってしまう。そんな映画だった。