くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エジソンズ・ゲーム」

エジソンズ・ゲーム」

長回しと細かいかっと編集を繰り返すハイテンポな映像作りで1880年から1893年まで駆け抜けていくドラマ作り、目まぐるしいほどくるくると展開していくのリズムの作品。ドラマ性を期待すると入り込めない気がしますが、一つの映像表現の固まりとして見るとそれなりにオリジナリティのある佳作だった気がします。ただ、もう少し緩急をつけた演出を組み合わせれば傑作になったかもしれない。映画としての絵作りの感性もしっかりしているし、面白い作品でしたが、エジソンをかなり神格化している気がしないわけでもない。監督は アルフォンソ・ゴメス=レホン。

 

1880年、一両の汽車が走っている。ブレーキは空気ブレーキでウエスティングハウス社製とある。突然急ブレーキがかけられ、人々が下りてぞろぞろ歩いていくと、突然、円形に配置されている電球が灯り、エジソンが自慢げな顔をしてカメラは空中へ上がる。このオープニングがなかなか見事。

 

ここから、一気に本編に入り、直列電流で成功しているエジソンと、交流電流で迎え撃つウエスティングハウスの攻防戦がカットの切り替えで次々と描かれていく。

 

資金がなくて、夢を求め、自信の信念を曲げず、必死で事業を進めようとするエジソン。一方、空気ブレーキや天然ガス事業で未来を見据えていく中で明らかに低予算で広範囲に供給できる交流電流を推進していくウエスティングハウス。二人の攻防合戦が時に相手を嘲笑したり、時に卑劣さ策謀を繰り返したりと展開していきます。のですが、どこか中途半端で描き分けられていない。

 

また、それぞれの画策が十分に描かれ切れていないので、中身に入り込めないままに次のエピソードへ進んでいくため、次第に単調さが目立ってくるのも残念。

 

時々見せる美しいカメラアングルや流れるようなワーキングはなかなかのものなのに、一つ一つのドラマが全く真に迫ってこない。

 

結局、二コラ・ステラはどういう立ち位置で描かれたのか、エジソンの妻メアリーはどういう風にエジソンに寄り添ったのか、そしてウエスティングハウスの妻の姿、片腕だったポープの存在はどれほど大きいものだったのか、それぞれが実にさらっと流れていくので、何がポイントなのか入り込めない。

 

結局、シカゴ博覧会でウエスティングハウスの交流電流が灯るというスペクタクルな展開と、そこでエジソンとウエスティングハウスが仲良く出会うシーン、キネマトグラフのヒントを見つけるエジソンがかぶり、ラストは、まるで映画はエジソンが発明したかのような映像で幕を閉じる。

 

悪い映画ではないはずなのに、どこか足りない部分が多すぎて、本当にもったいない映画でした。