くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「森と湖のまつり」「恋や恋なすな恋」

森と湖のまつり

非常に長く感じるのは物語の構成がまとまっていないためか、主人公の視点が誰なのかがわかりづらく、滅びゆくアイヌ民族の切なさを描いているのだが、中心になる高倉健の灰汁が強すぎて、響いてこない仕上がりになった感じです。ただ、ヨーロッパ映画のような映像作りがとっても美しく、洋画を見ているのかと思う瞬間もあり作品でした。監督は内田吐夢

 

北海道阿寒地方の列車の中、アイヌ民族研究の池博士と女流画家雪子がアイヌ部落に向かっている。そこで出迎えた茂子の絵を描くことになった雪子は茂子がアイヌ人であることから、本土の人間との差別意識があることを知る。

 

一方、アイヌ民族の存続のための基金集めをしている一太郎はその強引なやり方に地元の人々から反感を負っていた。池博士はそんな一太郎の安否を気遣っていた。雪子はふとしたことから一太郎と知り合い、一方、アイヌ人でありながら本土の人間だと偽って暮らしている大岩との争いに巻き込まれていく。

 

エピソードそれぞれがバラバラで絡み合っていかないために、とにかく長く感じてしまう。結局、大岩との争いで殺めてしまった一太郎はカヌーに乗って湖の彼方に消えるのだが、途中、一太郎の姉ミツのかつての恋人の男の死体を湖で引き上げ、何処かへ去って映画は終わる。まあ、映画の出来栄えはちょっとなあという一本でした。

 

「恋や恋なすな恋」

これはなかなか面白い作品でした。アニメーションや舞台装置を取り入れた実験的な映像世界はとにかく面白いし、幻想的な恋の物語は見応え十分でした。傑作人形浄瑠璃を基に夢か現実か不思議な映像世界が展開します。監督は内田吐夢

 

絵巻物が開かれる場面から映画が始まり、京都で様々な事象を占う加茂保憲には跡継ぎの子がいなかった。占ってみれば羊の年に生まれた女性を養女にするが良いと示され、和泉国信太の榊と葛の葉という双子の娘のうち榊を幼女に迎える。保憲には弟子として保名、そして後添えの息子道満がいたが、実直な保名と引き換え道満は野心が強く、保憲は保名を榊の婿して迎え後を継がせようと考えていたが、欲深い後添えは道満に継がせるため、保憲を暗殺、代々伝わる巻物の紛失を保名と榊のせいにし、拷問して榊を殺してしまう。

 

愛する榊を失った保名は気が触れ、巻物を道満から奪い返したものの、そのまま信太までにげていき、そこで葛の葉の両親と会い身を寄せる。そんな頃帝では世の乱れを鎮めるため、白ギツネの生き血を必要という道満の指示により、信太の森に狐狩りが行われる。保名と葛の葉の目の前で矢にいられた老婆を助けたが、実はその老婆は信太の森の白ギツネだった。

 

老婆の夫の老ギツネは恩を返すため、都の追手に傷付けられた保名を助けるために孫の白ギツネに葛の葉の姿とし介抱させる。しかし、榊と間違えた保名は白ギツネの化身を愛してしまい、白ギツネも保名を愛しやがて子供が生まれる。ところが、行方知らずになった保名の居所を掴んだ葛の葉の両親は保名の庵を訪ねてみると娘と瓜二つの女がいて驚く。

 

白ギツネは障子に「恋しくば訪ねてきてみよいずみなる、信太の森のうらみ葛の葉」とかき子供だけ残してさっていく。保名は子供を抱き上げ悲嘆に暮れて映画は終わる。

 

白ギツネがアニメになって巻物をくわえるくだりや、クライマックスは完全に舞台劇となる展開など、実験的な映像と様式美を駆使した演出が見事な作品で、木下恵介の「楢山節考」を思わせる一品でした。