「キーパー ある兵士の奇跡」
可もなく不可もなしという良質の作品でした。もうちょっと思い切ったキレのある毒があっても良かった気がしますが、その辺りを抑えたために映画にハリがなくなった感じですね。でも良い映画でした。監督はマルクス・H・ローゼンミラー。
一人の女性マーガレットがダンスホールで踊っている。時は1944年。カットが変わり、森の中をいくドイツ軍。敵に攻撃され、ドイツ兵のトラウトマンはイギリスの捕虜となる。
捕虜収容所では、イギリス軍曹スマイスによる執拗ないじめが繰り返されるのだが、サッカーが好きだったトラウトマンは、キーパーの真似事をして遊んだりする。この収容所シーンがもう少し毒があれば映画がしまった気がするが実にさらりと描かれている。そこで地元のサッカーチームの監督にスカウトされ、ゴールキーパーとして活躍し始める。しかし、敵国ドイツのトラウトマンへに風当たりはキツく何かにつけ蔑まれる。ここが非常に弱い。しかし、ひたすらゴールキーパーとして実績を重ねるうちに受け入れられ、さらに監督の娘マーガレットとも心を通じ始める。そして、ある時、イギリスのプロチームマンチェスターシティの監督ロバーツに見出される。
やがてドイツ兵が釈放される日が来て、マーガレットと結婚も決めたトラウトマンはマンチェスターシティのチームに入る。しかしここでも市民の反感は強く、チームのイメージダウンに近いことになるが、マーガレットの父とマーガレットが、トラウトマンが責められる現場に乗り込み、さらにその行動に心打たれた地元のラビの声明もあって、トラウトマンの立場は緩んでいく。そして、試合で大活躍していくトラウトマンだが、ある時試合中に大怪我を負う。それでも最後まで試合に出てマンチェスターシティは優勝。
入院するトラウトマンは自宅に電話するが、その時、アイスを買いに出た一人息子が事故で死んでしまう。実は戦場で、一人の少年が撃たれるのを庇いきれなかった過去がトラウトマンにはあった。
子供の墓にきたトラウトマンは、そこで家族をドイツ軍に殺されたスマイスと再会する。そして立ち直ったトラウトマンは再びチームに戻り活躍し始めて映画は終わっていく。トラウトマンもマーガレットも立ち直ったというテロップとともにエンディング。
丁寧に描かれた脚本と、やはり自国の映画ということもあって、ドイツもイギリスも戦争非難への極端なシーンがほとんど抑えられているのがはっきり見えてしまい、映画が、もう一歩わくを越えられなかった感じでした。でも良い映画です。