「ブラック・ファイル 野心の代償」
複雑で凝った映画にしようという気持ちはわかるのですが、度がすぎたために、だんだん収取がつかなくなって混沌としてしまったという感じの映画でした。前半三分の一あたりまではなんとかついていけたのですが、そのあとはなんでもありというか、余裕がなくなって飛ばしが多くなってきたというか、すごい映画になって終わりました。ラストの処理も無理やり的な感じでいただけない。監督はシンタロウ・シモサワという日本人です。
巨大製薬会社の薬害の問題のナレーションをバックに、CEOのアーサーが愛人のエミリーと公園を歩いているシーンから映画が始まる。ほどなくしてエミリーが誘拐され身代金の要求が来る。私設の警官を呼び、自分を監視させながら金の受け渡し場所に行くアーサーだが、近づいてきた男を殴って罵倒する。そして物語は一週間前に。
敏腕の若手弁護士ベンが今日も訴訟に勝利したと喜んでいる。愛する妻シャーロットと仲睦まじい毎日だが、突然SNSの友達申請で元カノのエミリーが近づいて来る。思わず、承認し、会うのだが、エミリーは製薬会社の極秘情報をベンに渡す。
兼ねてから製薬会社との訴訟に苦労してきたベンの上司に極秘情報を提供し、アーサーとの取引に臨むベンだが、謎の殺し屋がうろつくようになる。
この殺し屋のような人物が、なにか製薬会社の薬害被害者らしいが、その辺が全く曖昧。しかもアーサーの手先であるかのせりふも飛び出しさらによくわからない。
そんな時、エミリーのアパートに行ったベンはエミリーの死体を発見し、物語はベンが犯罪者の濡れ衣を着せられてという展開に変化して行く。ここからはもう無茶苦茶になってきて、アーサーの製薬会社の問題はほとんど霧に隠れてしまい、なぜかベンがはめられたかを探る展開から、結局黒幕はアーサーから賄賂をもらっていたベンの上司とわかり、上司はピストル自殺して、なぜか丸く収まる。しかし、ベンとシャーロットが引っ越す用意をしていると、シャーロットの服にエミリーの香水が付いていて、問いただすと、エミリーを殺したのはシャーロットでということでエンディング。
って、じゃあ、いったいなんの話だったの?というラストに呆れてしまう映画でした。アンソニー・ホプキンスやアル・パチーノなどの大スターが共演しているのですが、なにがしかの見応えがあるのかと思いましたが、結局混沌、ただそれだけが印象の作品でした。
「ユーリー・ノルシュテイン監督特集」
アニメーションの神様として、様々なアニメーターに尊敬されるロシアのアニメーターの短編作品6本をデジタルリマスター復元した特集です。とにかく、切り絵が動き出す芸術という感じの作品で、色彩感覚といい、絵作りの独創性といい、美しい。その独特の世界、芸術的なアニメーションの世界に浸ることができました。
作品は6本。
「25日・最初の日」「ケルジュネツの戦い」「キツネとウサギ」「アオサギとツル」「霧の中のハリネズミ」「話の話」