くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「水上のフライト」「泣く子はいねぇが」

「水上のフライト」

よくある話なのでと全く期待していなかったが、これがとっても良かった。ストーリー展開のリズムが爽やかで清々しいし、クライマックスの超望遠を使った人物と背景のボケ具合の映像表現が素晴らしい。監督は兼重淳ですが、この人の作品にハズレがない。多分映像リズムのセンスがいいのでしょう。見て良かったです。

 

体育大学で走り高跳びの花形選手でもある藤堂遥はこの日もベスト記録を出していた。しかし常にトップを目指すことに固執する彼女には周りは見えていなかった。この日学校の帰り雨になり、母に迎えを頼むが仕事で来れないという返事に駆け足で帰る途中、車にはねられ下半身不随になってしまう。

 

車椅子生活を余儀なくされたが、子供の頃カヌーをやっていたことで、母はカヌー教室をしている宮本に連絡を取り遙を外に連れ出してもらう。最初は拒否していた遙だが、次第に持ち前の勝ち気な性格からカヌーにハマっていく。そんな彼女に宮本はパラリンピックを目指そうと提案する。

 

周囲の人々に支えられ本格的に競技カヌーの練習を始める遙。そして選手権の日がやってくる。パラカヌーの第一人者朝比奈麗香には敵わなかったものの見事に二位でゴールインする。

 

よくある物語だが、ありきたりのあざとい演出は一切排除し、あるようでなかったさりげない細かい演出が散りばめられ、クライマックス、人物が浮き上がるように背景を完全に飛ばした超望遠のカメラ映像が素晴らしく、未来を確信して前に進み始めた主人公遙の輝くばかりの画面が最高。何気ない話だが勇気付けられている自分を感じてしまいました。

 

「泣く子はいねぇが」

なんとも独りよがりな映画だった。物語の行き末は作り手だけが知っているという演出で、全く観客に表現していくという形ではないために、ひたすら主人公が卑屈になってどうしようもないままに突き進む後ろ向きな映画にしか見えなかった。監督は佐藤快麿。

 

秋田県男鹿、なまはげの伝統を守る街が舞台となる。ここに一人の青年たすくに娘凪が生まれるところから物語は始まるが、いきなり妻ことねから離婚を言い出されている。どうやらたすくは酒癖が悪く夜遅く帰る日々が続いているようで愛想を尽かされたようであるが、どうもこのことねが我慢弱いようにしか見えない。

 

この日、なまはげになって回る夜だが、ことねはたすくに行かないで欲しいと頼む。しかし、付き合いもあり、早めに帰るからと出かけたたすくだが、つい酒を飲み、面をつけたまま全裸になって歩き回ってしまい、たまたま取材していたテレビに映ってしまう。そして2年が経つ。

 

地元に居づらくなり東京へやってきたたすくは、それなりに都会で暮らしていた。幼馴染の志波が訪ねてきて、ことねの父が亡くなったこと、ことねがキャバクラで働いていることなどを伝える。たすくは、男鹿に戻ってくるが兄や周囲の人たちは彼を受け入れない。ただ、母だけが彼を暖かく迎える。

 

たすくはことねへの想いが立ちきれなかったが、ことねは再婚を決意していた。なんとかもう一度やり直したい、凪にも会いたいたすくだが、ことねは受け入れない。たすくは勝手に凪のお遊戯会の場に行くも結局凪を見つけられなかった。

 

なまはげの夜が来る。たすくは自前の面を作り、志波に手伝ってもらい、凪に一目会うためにことねの再婚先へ行く。そしてことねの新しい夫に抱かれる凪に「泣く子はいねえかぁ」と迫って映画は終わる。

 

結局、たった一度の過ちで村八分にされた一人の男がうじうじとやり直そうともがく姿をひたすら描いた映画に仕上がっている。なんともめんどくさい作品だった。