くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「モータル」「脳天パラダイス」「記憶の技法」

「モータル」

思いのほか面白かったです。北欧らしい神秘的な空気感の中で描かれるちょっとSF的でちょっとスペクタクルでちょっと切ない展開が魅力の映画でした。監督はアンドレ・ウーヴレダル。

 

一人のホームレスのアメリカ人青年エリックが森に隠れている場面から映画ははじまる。足に火傷を負っていて、街に行き医院に忍び込んで薬を盗んで森に戻る途中、若者たちにからかわれ、思わずその若者の一人を何かの力で殺してしまう。

 

逮捕されたエリックだが、どうも殺した方法もわからないまま警察所長のヘンリクは心理臨床士のクリスティーヌを呼ぶ。彼女はエリックと二人きりになり事情を聞き始めるがエリックの感情が高ぶると部屋が高温になる。そんな時、アメリカから彼を保護するため大使館員がやってくる。そしてエリックに鎮静剤を打ちヘリコプターに乗せるが途中で目覚めたエリックはパニックになり嵐を起こしてヘリコプターは墜落する。エリックは大使館員の女性を助けた後逃亡し、クリスティーナのところに来る。彼女だけがエリックの感情をおちつかせてくれたからである。

 

クリスティーナはエリックと共に逃亡し、エリックが力を得るきっかけになった農場へ向かう。いつか2人の間には恋が芽生えていた。しかし、彼を追ってきた警察やアメリカ大使館職員らに湖にかかる橋の上で追い詰められる。落雷を起こして大火傷を負って包囲陣を退かせ、ヘンリクの指示でエリックとクリスティーヌを病院へ搬送する。すでに住民たちの間には雷神トールの再来だともてはやされていた。

 

病院を出たエリックらは目指す農場へ向かう。そしてエリックが燃やした小屋の地下を掘るとそこにクメール文字で描かれた石室と石箱が見つかる。一人の底へ潜ったエリックはそこで雷神の道具である槌を発見、自分の存在を理解する。彼は雷神トールの末裔だった。そして、誇らしく外に出てきたエリックだが、彼の存在を恐れるアメリカ大使館は狙撃手で狙っていた。

 

エリックの姿を見て喜んで駆け寄るクリスティーヌだが、狙撃命令が降り銃弾がクリスティーヌを捕らえてしまう。自分の代わりに撃たれたクリスティーヌを見て怒りに燃えるエリックは槌を振り上げ、雷を呼び付近一帯に大惨事を起こして何処かへ消える。

 

神話を巧みに利用した物語作りはいかにも北欧映画という感じで、SF的な要素が神秘性を帯びる流れは独特の世界です。面白かったです。アベンジャーズのマイティソーの原点が彼なのですね。

 

「脳天パラダイス」

どんちゃん騒ぎのオンパレードで、やりたい放題に展開するバイタリティだけの映画ですが、楽しかった。監督は山本政志

 

父修次の借金で家を売らざるを得なくなり引っ越しをする日に映画は始まる。父の借金で出て行かざるを得ない娘のあかねは憂さ晴らしに、勝手に、パーティをするから誰でもきなさいとSNSに投稿。すると訳のわからない連中が集まってきて、いつの間にかどんちゃん騒ぎのなんでもありになってしまう。

 

コーヒー豆の怪物や死体が生き返ったり子供が木の枝になったり、違法薬物を作る男たちや、ゲイカップル、などなど、現実ともその場限りともいえないドンちゃん展開に圧倒。そして朝が来てみんな帰って行って映画は終わっていく。まあ、これが山本政志の世界ですがダンスも歌もありありで楽しかった。

 

「記憶の技法」

頭で作っただけの脚本と、役者を生かしていない演出で、登場人物が生き生きしてこないために、とにかくうんざりするような陳腐な映画だった。監督は池田千尋

 

女子高生の華蓮の日常から映画が始まる。時々見る幼い頃の夢が気になってはいたが卒業を前に友達と韓国へ行く話が持ち上がっている。ここに同学年で、女付き合いにも慣れた男子学生の怜がいる。

 

華蓮は時々貧血のようになって気を失い記憶が飛ぶことがあった。パスポートのために戸籍謄本を取った華蓮は自分に由という姉がいたこと、そして養子であることを知る。高校になるまでこういうことを話していない両親の存在にまず疑問を持つのだが、華蓮はその秘密を知るために韓国に行くのを断って福岡へ行くことにする。しかし何をしていいかわからない華蓮はたまたま戸籍謄本を見られた怜に相談。今時の高校生はここまで世間知らずかと思ってしまう。

 

華蓮は1人で行くことにしていたが怜がお節介でついてくる。そして福岡で、実は自分の本当の両親、家族は隣に住んでいた石田という男に殺されたことを知る。そして、石田の息子が地元に戻り金魚屋をしていた。

 

華蓮は、忘れていた記憶を少しづつ取り戻し、自分がなぜ今の両親に引き取られたかを思い出していく。かつて石田に息子は、父が包丁を持って華蓮の家族の家に向かった時、たまたま帰ってきた華蓮を見つけ、助けるため金魚屋へ誘い出した。そのあと華蓮は自宅に戻り、居座っていた石田と遭遇、石田に追いかけられる。交通事故で娘を亡くした今の華蓮の母がたまたま事故現場の花を見ていて、そこへ駆け抜けてきた華蓮を助けたのだ。

 

ということで、めでたしめでたしで全てがわかり、実は怜も記憶のことで寂しい思いをしていたとか、石田の息子も苦しんでいたとかが適当にセリフで説明され映画は終わる。本当に、陳腐な作品だった。