くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画」「拝啓天皇陛下様」

「ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画」

面白かった。アジアで初めて火星探査船の打ち上げに成功したインドのミッションを描いた実話ですが、エンターテイメントとしてよくできているので退屈しない。見せ場の配分も的確で、ダンスシーンも程よいスパイスになっていてクライマックスもありきたりながらもハラハラドキドキしてしまいました。楽しめました。監督はジャガン・シャクティ

 

2010年、インドのロケット発射の日から映画は始まる。ところが打ち上げた直後不具合が生じて、自爆させざるを得なくなる。責任者のラケーシュは、右腕のタラと共にとても成功の見込みのない火星探査機打ち上げミッションチームという閑職に左遷されてしまう。しかし、世界に遅れをとった宇宙ミッションの挽回を図るべくラケーシュらは本気で取り組むことにする。ラケーシュの後釜にはNASAでいた経験のある男がやってきて月へのミッションの再計画に携わる。

 

ラケーシュたちに振り分けられたスタッフは、経験の浅い若手ばかりだったがラケーシュのリーダーシップで次第にまとまっていく。予算もなく一向に進まない中で挫折するかと思われた矢先、中国の月探査ロケットのミッションが失敗に終わり、インドのミッションは一時中断、そのためわずかだがラケーシュらのチームに予算が降ってくる。

 

そして紆余曲折の末、ついにロケットは完成し発射、そして見事火星の軌道に乗せることに成功する。こうして映画は終わる。非常にシンプルな作りになっているが、エピソードの配分がうまいのでとにかく見ていて楽しい。オーソドックスな作りではあるがこういう単純なエンターテイメントこそが映画の醍醐味だと思います。

 

「拝啓天皇陛下様」

これは良かった。純粋に名作です。物語のテンポもいいし、ラストでしんみりと熱くする感動を呼び起こす映像のうまさも絶品。監督は野村芳太郎

 

昭和の初め、軍隊に入隊した山正と棟本が出会うところから映画は始まる。棟本はこの物語の原作者で、山正と出会い彼との物語を語るという手法で展開していきます。軍隊生活を軽妙でコミカルにそれでいてしっかりと描きながら、山正と棟本の友情が次第に深まっていく展開となる。

 

やがて、徴兵の年期明けが近づいた頃、山正はようやく覚えた文字で天皇陛下に手紙を書こうとする。それは、軍隊においてほしいというものだった。娑婆に戻っても食べ物は貧しいし良いことはないというのだ。しかし天皇陛下に手紙などもってのほかだと棟本に諌められて山正は諦める。

 

その後も入隊するごとに棟本は山正と再会を繰り返す。やがて、棟本は軍隊生活を綴った小説で人気となるが、戦争も末期になり再び召集令状が来る。やがて終戦、内地に戻った棟本のところに山正がやってくる。こうして山正と棟本の腐れ縁のような戦後が語られ、山正の失恋なども語られる。そして一年の空白を経て山正は許嫁を連れて棟本夫婦のところに来る。ようやく山正にも幸せが来ると思われた矢先、棟本は新聞記事に、山田正助が交通事故で死んだ記事を発見する。

 

山正は許嫁の店でしこたま飲んで、一人酔っ払って帰る場面で映画は終わる。なんとも物悲しい作品ですが、戦中戦後のなんとも言えない時代色が見事に描写されている上に、人間ドラマとしてもしっかりと描かれている。名作というのはこういう趣のあり作品を言うのでしょう。良かったです。