くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「春に散る」「#ミトヤマネ」「MEG ザ・モンスターズ2」

「春に散る」

決して出来のいい映画ではないのですが、素直に良かった。導入部分は今ひとつ精彩にかけるのですが、少しづつ良くなってくる。ボクシングシーンが抜群に良いし、役者がとにかく素晴らしい。これだけボクシングができる役者を揃えたことがまず成功だと思います。それに、細かいところまで丁寧に描かれた脚本と演出はこの作品づくりへの本気度が見えてきて、とにかくラストまで全くだれることなく引き込まれてしまいました。監督は瀬々敬久

 

居酒屋で一人ビールを美味しそうに飲む広岡仁一の肩から桜の花びらが落ちる場面から映画は始まる。背後で大騒ぎする若者達につい説教をしてしまうが、帰り道、その若者らが広岡に絡んでくる。しかし、一瞬で彼らを倒す。かつて活躍したボクサーだったが、アメリカで何度か試合をした後理不尽な判定で負けそのまま引退、たまたま知り合った実業家の男に拾われ、その後継者となった。最近、それも引退して日本に久しぶりに帰ってきたのだ。たまたま同じ居酒屋で飲んでいた黒木翔吾は広岡のパンチを見てつい身構えてしまい、一発で広岡にノックダウンさせられる。黒木もまた理不尽な判定負けをされた過去があったがもう一度ボクシングをしたかった。そして黒木は広岡にボクシングを教えてもらう決心をする。

 

広岡は日本に戻ってきた目的は、かつてのボクシング仲間次郎、佐瀬らのこれからを何か力になりたいと思ったためだった。二人共うらぶれた生活をしていたが、広岡は佐瀬と一緒に住むようになる。しかし次郎はそれを拒んだ。広岡は心臓に問題があり、常に薬が手放せず、医師から再手術を勧められていた。

 

そんな頃、黒木が広岡の居場所を見つけて、教えて欲しいとやってくる。広岡、次郎、佐瀬は、河原の堤防を10回かけ上がれるようになったら教えてやると約束をする。黒木は必死でトレーニングし、とうとう駆け上がることに成功。それでも広岡は教えるのを拒んだが佐瀬らに促され教えることにする。

 

かつて広岡らが所属していた真田令子のジムに黒木を連れていくが、そこで、そのジムのエース大塚とスパーリングをし、黒木と同士討ちになる。その結果、そのジムで受け入れるには難しいと令子に言われて、町外れの子供中心に教えているジムに行くことにする。そこで佐瀬は子供達にボクシングを教えるようになり生きがいを発見する。一方大塚は世界タイトル戦チャレンジ予定だったが、黒木を倒すまではチャレンジできないと言い出す。

 

そんな流れの中、中西のマネージャーは、黒木と大塚を戦わせ、その勝者に中西への挑戦権を与えるという企画を提案してくる。当て馬に近い試合になると広岡は反対するが、黒木は強引にその企画を受け入れる。そして、黒木は大塚を破る。それをきっかけに大塚はボクシングを引退する。

 

そんな頃、広岡の兄が亡くなり、その娘佳菜子が東京へ出てくる。ところが黒木の左目に異変が現れる。どうやら網膜に異変が認められ、治療した方が良いことになる。中西との試合を反対する広岡だが、黒木は今しか戦えないと言い張る。そんな時、広岡が倒れる。病室にきた黒木に、一緒に世界へ行きたいと告げる。さらに佐瀬らも応援することになる。

 

試合の日、中西はすぐに黒木を倒せるとたかを括っていたが、黒木と中西はラストラウンドまで死闘を繰り返して、次第に周りの人たちまで興奮させていく。そして判定の結果、黒木が勝利するが、黒木の片目は見えなくなっていた。広岡は黒木を見送り、満足げに会場を後にし、見にきていた真田令子に挨拶して、桜を見にいく。翌朝、黒木の緊急手術の日、広岡は桜の木の下で息を引き取っていた。

 

半年後、黒木は佳菜子と結婚し、勤め先に向かっている。ふと、駆け上がった河川敷の前で立ち止まり、思い出しながら叫んで駆け抜けて映画は終わる。

 

前半のつかみが非常に弱いので入り込みにくいのですが、役者が揃っているので次第に物語にのめり込んでいきます。ボクシングシーンがとにかくしっかりできているために映画が締まっているのが良かった。クライマックスの死闘場面は圧巻で、その後のエンディングも映画らしくて良かった。難を言えば、広岡の背景などそれぞれの人物のバックが描ききれていないので映画が薄っぺらく見えたのは残念。決して出来のいい作品ではないのですが、人生を振り返るにはいい作品でした。

 

「#ミトヤマネ」

今時のメッセージをポップな映像とハイテンポな展開、一方で飄々と演技をする玉城ティナの存在感で描いた面白い映画でした。ネット社会、AI社会到来による危機感を煽るというより、そういう世界になったのだと受け入れてしまう空気感がなかなか興味深かった。監督は宮崎大祐

 

インフルエンサーとして絶大な人気と影響力を持つミトヤマネの姿を見せて映画は始まります。デジタル映像を駆使しアニメを交えた非現実な映像がまず楽しい。次々とミトヤマネには新しい企画が持ち込まれ、それを淡々と受け入れていくミト。彼女の妹ミホがマネージャーを務めているが、飄々と仕事をこなすミトにやや危機感を持っていた。ミトらは街を歩くこともできないほどの大人気だった。

 

ある時、中国のアプリ開発会社から、ミトの顔を使ったディープフェイクアプリの依頼が来る。アプリ内のみならと気軽に受け入れたのだが、ディープフェイクが一人歩きし、ミトの顔が様々に悪用され始める。それでもミトは自身の拡販になればいいと抵抗もなく受け入れる。

 

東京で生活するにに危機感を持ったミトらは故郷へ帰るが、地元の人はミホのことは知っていたが姉のミトについては気づかなかったなどという。ところが暴徒とか化した反ミト派はミトらが隠れていた家にも押しかけ、対応したミホが暴徒の投げたもので倒れてしまう。やりすぎたと感じた暴徒は引き上げる。騒ぎになっていく様子を動画に収めていたミトは、その動画を公開。公開したのはミトの名を使ったミホだった。こうしてミホはミトとなり、ミトはサングラスなしで街を歩いても気づかれないようになる。全てが落ち着き、1人暮らすミトは自身のスマホを開くき、ミトヤマネの動画を撮り始めて映画は終わる。

 

結局、ネット上の人物は実在しないものか、名前さえも無意味な存在なのか、そんなメッセージを一気に見せつけていく面白さが楽しい。全体のテンポは今ひとつですが玉城ティナの飄々さが映画を牽引していきます。ちょっとした映画でした。

 

MEG ザ・モンスターズ2」

ストーリーを語る気は全くない感じで、危機感もスリルも何にも感じないのですが、ひたすらスペクタクルで派手なシーンの連続は、スクリーンならではの面白さ、それを徹底的に貫いた娯楽映画でした。やたらお金をかけたB級映画という一本でした。監督はベン・ウィートリー

 

海洋開発を進めるジウミン率いる海洋会社は、巨大ザメMEGを飼い慣らす実験を進めている。潜水レスキューのジョナスはそんなことに興味はないものの、MEGの危険を危惧していた。7500メートルまで潜ることができる潜水艇により調査を依頼されたジョナスは、ジウミンらと深海に潜るが、海洋開発で空いた穴から巨大な深海生物が出てくる気配を感じる。一方海洋開発の利権を手に入れようとするヒラリーらは海洋開発会社のジェスを引き入れて、会社乗っ取りの画策に乗り出す。

 

深海に潜ったジョナスらはジェスらの陰謀にはまり危機に陥り、開発基地でモンテスら悪党と銃撃戦を展開する。ところが、海溝から巨大ザメMEGが現れ、ジョナスらを襲い始める。さらに一番近いところにあるリゾートアイランド、ファンアイランドに危機が迫る。さらに、深海から出てきたのはMEGのみでなく巨大だこやトカゲの化け物まで現れる。あとはジョナスらとMEGらとの大バトル戦に利権を狙うモンテスらとの混戦となり、悪者は皆退治され、大タコはMEGに食われて大団円。なんの中身もないエンディング。

 

とにかく、ストーリーテリングをする気は全くなく、ひたすら派手なMEGとの乱戦を描いていく。しかし、襲われるという危機感もスリルも全然なくて、ただ、当たり前のように立ち向かっていって、悪者は死んで、ハッピーエンド。上白石萌歌似の顔の大きなブサイクな少女メイインが、意味もなく出てくるのはまさに中国映画、そんな作品でした。