くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ビーチ・バム まじめに不真面目」

「ビーチ・バム まじめに不真面目」

ちょっとぶっ飛んだ映画でしたが、逆光を効果的に使った映像が実に美しいし、主演のマシュー・マコノヒーの抜群の最低男の演技が最高で映画がとってもいい感じの仕上がりになりました。ラストの人生讃歌が愛する妻への切ない恋物語を増幅させて感動してしまいました。監督はハーモニー・コリン

 

かつて天才と謳われた詩人ムーンドックは、今は資産家の妻ミニーのもとで酒と女に溺れる日々を過ごしていた。この日も娘の結婚式にとんでもない格好で現れて周囲は呆気に取られる。しかし牧師を務めた黒人のランジェリーはムーンドックの親友でもあった。しかも彼は麻薬の売人で大金持ちでもある。こうして物語は始まる。あとは、延々と酒と女遊びに明け暮れるムーンドックの姿をひたしら写していく。

 

しかし、ムーンドックは妻ミニーを愛していた。ミニーはランジェリーと体の関係があったもののそれでもムーンドックを愛していた。ムーンドックもそれを知り、微かな嫉妬を覚えながらもミニーを信じていた。パーティの場で、ミニーがランジェリーと抱き合う姿を見つけて、しばらく言葉をなくしながらも遠目に見ているムーンドックのシーンが実に上手い。

 

パーティで盛り上がり、妻ミニーの運転で車で帰るムーンドックだが、お互いハイになっていて事故を起こしてしまう。ムーンドックは無事だったがミニーは重傷で間も無くムーンドックの前で死んでしまう。ミニーの財産は娘に半分、残りはムーンドック宛だったが、自由に使うためにはムーンドックが新しい詩集を出すことが条件だった。

 

一文なしになり、ホームレスと盛り上がったムーンドックはかつての自宅に侵入して大暴れして逮捕されてしまう。そして、アル中の施設に一年入ることを強制されるが、そこで知り合った男と脱走、知り合いを訪ねて回り始める。しかしムーンドックの友人は最低の男ばかりだった。それでも、彼を雇ってイルカ見物の観光仕事をもらうが、その船長がサメに足をちぎられリタイア、続いてムーンドックは、ランジェリーの元にやってくる。

 

ランジェリーは大金持ちで、ムーンライトと盛り上がり酒と女を提供して楽しむが、ある時警察が迫っているという情報が入り、ランジェリーはムーンライトにドラッグを大量に分けてやり飛行機で脱出させる。そんなドタバタの中でもムーンライトはひたすら新しい詩集のための執筆をしていた。

 

やがて詩集が出版され、ミニーの資産も手に入る。ムーンライトの詩集はピューリッツァ賞を受賞。ムーンライトはミニーの遺産5,000万ドルでヨットを買い、そこに全ての現金を積み、花火を打ち上げて大騒ぎをする。そして最後にヨットの金に火をつけ、自分は小さなボートに乗って大海原へ流れていく。彼の脳裏にはミニーとの幸せな日々が蘇っていた。こうして映画は終わります。

 

オープニングから映像が実に美しいし、背後に流れる楽曲のメロディに乗って展開する前半はとにかくバイタリティ満点。そして、ミニーが死んでから、悲惨であるはずのムーンライトは、かえってさらにバージョンアップして狂ったように暴れまわっていく。この映像展開のリズムが最高。そしてそんなドタバタの合間に詩を描いている姿を挿入し、どことなくミニーの存在を描く絵作りも上手い。マシュー・マコノヒーの存在感に負うところが大きいですが、素敵なラブストーリーだったように思いました。