くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「映画大好きポンポさん」「コントラKONTORA」

「映画大好きポンポさん」

突然上映が始まり、話題になっているアニメを見る。なるほど評判通り、ある意味傑作。映画をわかっている人が映画作りの面白さの本当を描くとこうなる。自由自在な想像力で作り出す絵と、軽快なテンポで一気に引き込む前半が特に秀逸。さらに、フレームを理解した絵作りにも脱帽。適当な興味本位映画に仕上げなかった、製作側の人間が作る映画でした。まさにトリュフォーの「アメリカの夜」を彷彿とさせます。ただ、中盤から後半、映画作りの面白さに監督自身が逆に入り込んでしまって、若干、自分本位にテンポが落ちたのが残念と言えば残念ですが、それでも一気にたたみかけて終わらせたのは良かった。ラストの「90分で終わらせたこと」という主人公の台詞もいい。監督は平尾隆之

 

いきなりに主人公?ポンポさんの登場から映画は始まる。いかにも安っぽいアニメキャラの姿のポンポさんの造形がまず良い。周りのキャラクターは妙にリアリティのある絵だったり、普通のアニメ調だったり、さらには背景の美術も実に多彩に始まる。まさに様々な映画の世界を凝縮させたような映像に圧倒されます。

 

ポンポさんのアシスタントとして働くジーンは、映画好きが高じてこの世界に入った駆け出しのプロデューサー見習いである。ポンポさんや監督の一挙手一動全てメモしている。ポンポさんが手がけているのはいかにもB級の娯楽映画、しかしポンポさんはただ楽しませるために一級品を生み出していく。ポンポさんの祖父は伝説のプロデューサーペーターゼンで、ジーンには神のような存在だった。

 

ある日、寝過ごしてスタジオに向かうジーンは、道で一人の少女ナタリーを見かける。どこか惹かれるものがあると思いながら会社に駆け込むが、そこでオーディション帰りのナタリーとすれ違う。ポンポさんに怒られながら、ジーンはたまたま出会ったペーターゼンに自分のことを聞いてみたりする。そしてポンポさんは、ジーンの才能を信じているのだと教えられる。ポンポさんは、今撮影している映画の15秒CMをジーンに任せる。舞い上がったジーンだが、必死で作り上げたCMフィルムは監督にも好評で、宣伝フィルムを一手に任される。

 

翌日ポンポさんのところへ行ったジーンは、新しい映画の話を言われる。そこへやってきたのが髪を切ったナタリーだった。そして主演の男優は伝説の大俳優マーティンで、しかも監督はジーンだと告げられる。さらに舞い上がるジーン、そして初めてオーディションに合格したナタリー。しかも大物俳優を起用の期待作。ここで、ジーンとナタリーの少し前がフラッシュバックされる。ナタリーは人気のトップ女優ミスティアの付き人になり演技の勉強を本格的にスタート、そしてクランクインの日、ベテランのマーティンの見事な場の雰囲気作りにガチガチのジーンも本気モードに入っていく。

 

次々と偶然やひらめきから生まれる名場面の数々、そしてついにクランクアップ。しかしここからがジーンの一番の大変なところ、編集作業だった。映画作りの本当の面白さはこの編集作業にあることを心得たストーリー展開が実にうまい。そして72時間もの撮影映像を90分にまとめる作業が始まるが、自分の求める作品にするのにどうしてもシーンが足りないことに気がつく。そこでジーンはポンポさんに頼む。一方追加の資金の銀行融資が必要だが、たまたまジーンの学生時代の知り合いアランが取引先で悩んでいたところへ、この映画の話が入り、アランは自分の目指すものを発見し、プレゼンの末融資金の決済を得る。

 

こうして追加シーンが撮影、ミスティアが特殊メイクで参加し映画は完成。最後の編集に入るが、過労でジーンは倒れてしまう。一時は諦めかけたポンポさんだが、ナタリーの必死の願いが届き、蘇ったジーンは最後の仕上げを行い映画は完成。

 

完成した作品は大ヒット、そしてニャカデミー賞も受賞する。ジーンは受賞の感想で一番良かったところを聞かれ「90分で仕上がったことだ」といって映画は終わります。

 

映画場面を横長のフレームにし、物語部分は普通のサイズで構成していく絵作りのうまさ、キャラクター造形と背景シーンのオリジナリティ、そして何よりテンポがいい。適当なお話をでお茶を濁していないのが何より良かった。掘り出し物でした。

 

コントラ KONTORA」

面白い映画なのですが、ちょっとくどい台詞とシーンが所々に見られて、全体が少し散漫になる瞬間があります。もう少し絞ったらもっと表現がストレートに訴えかけてきた気がします。奇をてらったシーンを使った映像表現の狙いはわからなくもないけれど、それほどインパクトを生んでいないのは、あえてそうしたのかどうか分かりにくかった。監督はアンシュル・チョウハン。

 

軍歌を歌いながら一人の老人が自分の箪笥から箱を取り出して眺める下から映画は始まる。カットが変わり一人の女子高生が自転車で帰って来るが、途中チェーンが外れて、切れた彼女は自転車を土手に投げ捨てるが思い直して引きずって帰ってくる。途中、後ろ向きに走るホームレスと遭遇する。祖父の部屋に入ってくるが祖父が死んでいることに気がつく。そこへ父親が帰ってきたので、祖父が見ていたものをベッドの下に隠す。

 

彼女の名はソラ、父は建具制作の仕事をしている。葬儀が終わって、父の従兄弟が魚を大量に手に入ったからと自宅に呼ぶ。行ってみると、その従兄弟はソラの父親の家を譲ってほしいという。明らかに財産狙いの発言にソラの父は帰ろうとする。酒を飲んで車に乗る父を止めるソラだが強引に運転。ところが後ろ向きのホームレスをはねてしまう。ソラは父の反対を押し切ってホームレスを自宅に連れ帰る。翌朝、父はホームレスを追い出すが、ソラは学校に行くと嘘をついてホームレスを自宅に連れ帰り、風呂に入れ、食事をさせて、祖父の服を与える。そして、祖父の残した日記帳から、何か宝物が埋まっていると判断したソラはホームレスを送り出して山の中へ行く。

 

ソラの父が帰ってくるとソラがいない。自宅にホームレスが来た形跡があったので、従兄弟の娘ハルを連れ出してホームレスを探し出し問い詰めるが何も喋らない。無理矢理車に乗せ、走っているとソラを見つける。そのままホームレスを自宅に連れ帰り、一緒に暮らし始める。

 

一方、ハルの父はソラの祖父の日記に何か宝物の埋めてあるのを察知し、勝手に掘りにいく。この下りが必要なのかどうかどうもわからない。慌ててハルが知らせに来たので、ソラと父が現場に行き、ハルの父を追い返して掘ってみると、古い銃などが出てくる。掃除をして撃てるようにしたソラの父は森で試し打ちをする。

 

いつのまにかソラとソラの父との溝は次第に埋まってきていた。ソラの誕生日を祝った夜、酒を飲んだソラは銃でホームレスを脅すが、冗談だというとホームレスに思い切り殴られる。その夜、寝静まった後、ホームレスはソラの祖父の日記の最後にソラの絵をデッサンし、翌朝ソラの元を去るが、後ろ向きではなく前向きになって走り去る。ソラはホームレスの描いたソラの絵を見て、銃を持って森に入っていき、高台で銃を何度も撃つシーンで映画は終わる。ホームレスはソラの祖父の幻影なのかという感じである。

 

映像としては面白いのですが、もうちょっと思い切って研ぎ澄ました映像に編集したらもっとキレのいい映画になった気がします。