くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「惑星ソラリス」(デジタルリマスター版)「クローブヒッチ・キラー」

惑星ソラリス

四十年ぶりくらいの再見、大好きな映画です。やはり傑作でした。カット割の見事さ、映像表現の独創性、ストーリー展開のリズム、そして何よりシュールな中に美学が潜む世界は圧倒されます。名作中の名作ですね。監督はアンドレイ・タルコフスキー

 

水の流れのカット、水草でしょうかゆっくりと棚引いている。そこへ一枚の枯葉がながれてきて映画は幕を開けます。カメラが捕らえたのは一人の男クリス。仕事に疲れているのか人生に疲れているのか、父の住む家で過ごしている。この日、父の友人のバートンがやってきて、かつてソラリスという惑星上での研究者であった頃見た幻覚か現実かわからない出来事を発表した会議の映像を持ってくる。クリスは、ソラリスの研究が進まないために現地に飛び、その現状を確認して研究中止をするかどうか調べるために派遣されることになっていた。

 

バートンの報告はいかにも奇妙なことで、ソラリスの海に赤ん坊の姿が現れたり、公園ができたりしたのを目撃したのだという。半信半疑のクリスの態度にバートンは怒って帰ってしまう。バートンの車の中での帰路の場面は日本の首都高速のロケになっていて、初めて見た時はやたら長く感じたが今回は全く普通に感じた。

 

やがてクリスは惑星ソラリスの海の上空に浮かぶ宇宙ステーションへ向かう。着いてみると出迎えもなく、なんとかスナウト博士に会って、挨拶をするが、サルトリウス博士は出てこないし、もう一人いたギバリアン博士は自殺したのだという。しかも、何やら乗組員以外の生き物の存在を感じてしまう。

 

クリスがギバリアン博士も部屋に行くとそこにメッセージビデオが残され、死の直前の彼が映っていた。クリスは、自室に入り、誰も入ってこないように扉に重石を置いてひとまず眠るが、目覚めると一人の女性が部屋の中にいた。その女性は十年前に自殺したクリスの妻ハリーだった。

 

クリスはその女を脱出ロケットに乗せ宇宙へ送り出してしまう。そして、スナウト博士から信じられない報告を受ける。ソラリスの海に放射線を放出してみたところ、自分たちが想像した生き物が現れるようになったのだという。信じられないまま、クリスは眠りにつくが、目覚めるとハリーがいた。サルトリウス博士の声かけがあり、図書室へ向かおうとハリーを部屋に残したが、直後金属の扉を破ってハリーがクリスを追いかけてくる。しかも血だらけになったハリーの体はみるみる回復して行った。

 

クリスはハリーと行動を共にするようになって次第に愛情が芽生え始める。一方ハリーは自分が何者か悩むようになる。ある時、ハリーは液体酸素を飲んで自殺を図るも、結局死ねなかった。スナウト博士らはクリスの脳内思考をソラリスに照射する計画があり、間も無く実行に移される。

 

図書室でクリスとハリーは語り合う。間も無くクリスは高熱を出して倒れてしまう。うなされる中で、幼い日の思い出、母との日々などを夢見る。そして、ようやく目覚めた傍にはハリーの姿はなかった。スナウト博士がハリーの置き手紙をクリスに渡す。そして、地球に戻った方がいいと忠告する。

 

クリスは冒頭の水辺に立っていた。池は凍っている。家の方から愛犬がかけてくる。家の中を覗くと父がいた。クリスに気が付き出てきた父に縋り付くクリス。カメラはゆっくりと空へ舞い上がっていく。どんどん上がり、雲を超えてさらに上がっていくと、クリスの家はソラリスの海に浮かぶ島の上にあった。こうして映画は終わります。

 

もう何度見てもも圧倒されるラストシーンです。図書室でクリスとハリーが無重力になる場面も素晴らしいし、ハリーが現れる時のカット割が実に上手い。下手をするとホラーチックなシーンになりそうな宇宙船内の場面も、不気味さの中に科学的な不思議さを醸し出している演出も見事。さすがに凡人には作れない一本というのはこういう映画をいうのでしょうね。最高でした。

 

クローブヒッチ・キラー」

とんでも映画だった。ドキドキするサスペンスも曖昧だし、悪役は中途半端に怖くもない変態やし、あっと驚くサプライズも全然驚かない演出。しかも、ラストは、ええんかいというゆるゆるで、なんとも言えない映画でした。監督はダンカン・スキルズ。

 

ボーイスカウトの場面、指導者のドンがメンバーを指導している場面から映画は幕を開ける。同じ隊員のタイラーは息子で、ドンは叔父の保険金がかかるので、ボーイスカウトのリーダー研修への参加費用が難しいと詫びる。という普通も場面から映画は始まる。

 

タイラーは彼女を誘うべく深夜に父の車を借りて彼女といちゃつこうとするがいざとなってシートの下に折り畳まれたSM写真を見つけ、彼女が興醒めして何事もなく終わってしまう。しかもタイラーが変態だという噂が流れる。とまあ、いきなりのとんでもない流れ。教会の日にいつも外で新聞を読んでいる変な女の子キャシーのことがタイラーの友達と話題になる。一方、タイラーは父が管理している物置に忍び込んで大量のSM雑誌や写真を発見、10年前に世間を騒がせたクローブヒッチ殺人事件の犯人ではないかと疑い始める。となんともいえない短絡的な展開となる。

 

タイラーはキャシーをつけて行って、実は彼女はクローブヒッチ事件の資料を持っていることが分かり、二人で調べ始める。二人はドンの物置を再度調べに入るがあったはずの写真などがなくなっていて、一枚の見取り図のようなものを発見。それを元にタイラーが家の地下室に入るとそこにはクローブヒッチ事件の被害者の免許証などが隠されていた。ドンはタイラーに自分が隠していたものについて問い詰められ、タイラーが疑うので、実は入院している叔父の仕業だと話す。そして一切の資料を焼いてしまう。

 

タイラーはボーイスカウトの研修に行けることになり、ドンは娘のスージーと妻にたまには実家に帰るように提案する。一人になったドンは、なんと女装して自分を縛った風にして写真を撮り始める。と、なんとも滑稽な展開へ。しかし、満足できないドンはベッドの上で地団駄を踏む。たまたまスーパーで見かけた女性の家に忍び込んで彼女を拉致し縛ったところへ、突然、研修に行ったはずのタイラーが猟銃を持って現れる。実は、ドンが怪しいと思ったタイラーとキャシーはドンをつけていたのだ。

 

ドンとタイラーは揉み合った後、ドンはキャシーに殴られ気絶。そしてカットが変わると、ドンの行方不明の張り紙と、戻ってきたドンの妻とスージー、タイラーとの食事の場面。間も無くして、ドンが亡くなったことが公になる。どうやら銃の事故で死んだらしい。実は、タイラーとキャシーが、ドンをクローブヒッチ事件の犯人にしたくないために、事故に見せかけて殺したらしい。まあ、なんということやというクライマックス。そして、タイラーはボーイスカウトの新しい隊長となって映画は終わっていく。

 

全体が実にゆるゆるで、キャシーの母がクローブヒッチ事件の被害者というサプライズも全然インパクトが弱いし、とにかく十三人も殺したサイコキラードンの不気味さが全然出ていないので映画が締まらない。なんとも言えない映画でした。