くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エターナルズ」「アンテベラム」

「エターナルズ」

高級なB級娯楽映画という感じの壮大なテーマを背景にしたアベンジャーズもの。こういう作り方もありと言える一本でした。アクションシーンのスピード感も面白いけれど、世界中を舞台にして転々として行くストーリー展開と、真実が明らかになり哲学的なクライマックスはなかなか重い。監督はクロエ・ジャオ。

 

時は紀元前5000年メソポタミアに始まる。浜辺で漁をしている男が海から現れた化け物に食われるが、突然熱線が放射され、その男が怪物と戦う。目から光線を出したのはイカリスという男で、間も無く巨大な宇宙船ドーモが現れる。そして、エターナルズと呼ばれる人たちが降り立つ。彼らは人類の進歩に手を貸し、人類を怪物デヴィアンツから守るために現れたのだ。

 

場面が変わるとロンドン、デインという男が講義をしている。そこへ遅れてやってきたのがセルシという女性だった。二人は恋仲で、川辺を歩いていると突然化け物デヴィアンツが現れ襲われる。そこへ駆けつけたのはイカリスだった。500年前にすべてエターナルズが退治したはずにデヴィアンツが再び現れたのだという。しかも、以前のデヴィアンツよりも強大になっていた。

 

イカリスやセルシは世界中に散らばったエターナルズを集めることを決意する。こうして映画は、デヴィアンツが絶滅してからエターナルズを解散し、世界中で人間の中に入って生活しているメンバーを探し始める。しかし、メンバーそれぞれはそれぞれの生活を持って生きていた。ところが、彼らのリーダーだったエイジャックがデヴィアンツに殺されているのが見つかる。デヴィアンツはエイジャックの力を吸収して大きくなっていた。セルシはエイジャックの遺体から、彼らを派遣した惑星オリンポスのリーダーセレスティアズでありエリシャムとの交信手段である球体を引き継ぐ。

 

セルシはセレスティアズと交信し、セレスティアズの本当の目的を知ります。それは、エターナルズもデヴィアンツも共にセレスティアズが創造したもので、セレスティアズは惑星に自らの種を蒔いていて、それらが成長するための餌として惑星の知的生命体を育てていて、デヴィアンツが生命体を殺さないようにエターナルズを派遣していたのだった。そしてその惑星でセレスティアズが成長したらエターナルズの記憶は消され、また次の惑星に派遣されていたのだ。

 

地球で成長したセレスティアズつまりティアモットは間も無く地上に出現しようとしていた。しかしセルシらは、いつの間にか人間の心を感じ取るようになり、ティアモットによる人類抹殺に抵抗し阻止しようとし始める。かつて、イカリスは、エイジャックがその真実を知り、反抗的な気持ちになっていたことを危惧し、氷に閉じ込められていたデヴィアンツが氷が溶けて活動をし始めたことを見せた上で、エイジャックを彼らに襲わせ殺していた。

 

セルシらがティアモット誕生を阻止しようとファストスが作り出したユニ・マインドでエターナルズの力を一つにして対抗しようとするが、任務に忠実なイカリスがセルシらの敵として立ちはだかる。セルシたちはティアモットが現れる場所に集結し、敵対するイカリスを阻止しながら、セルシの力でティアモットを岩に変化させ阻止します。イカリスは太陽に向かって飛び去り、イカリスを慕っていたスプライトはセルシの力で普通の人間にしてもらい、成長と死を受け入れることになります。

 

エターナルズは元の地に戻り、セルシはデインと仲睦まじくなりますが、突然エリシャムが現れ、エターナルズのメンバーを宇宙に引き上げ、今回は人類を生かすこと、再び地球を訪れて最後の審判jを下す時までエターナルズの記憶を残すと告げる。こうして映画は終わります。エンドクレジットで、スターフォックスがエターナルズの宇宙船ドーモに現れて映画は完全にエンディング。

 

なかなか、哲学的な内容を散りばめたアベンジャーズ映画という感じで、これまでの派手な戦闘シーンだけのシリーズと一線を画した仕上がりになりました。これもまた新しい方向かもしれません。

 

「アンテベラム」

ちょっと奇妙な映画ですが、じっくり振り返るとこういう着想は昔からあったのかなと思えなくもない映画。全体にテンポが平坦なので、中身は面白いがちょっと前半しんどい。クライマックスにあざとい黒人問題へのメッセージがしつこいのは鼻につきます。ストレートに楽しめるホラーではなかったです。監督はジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ。

 

南北戦争当時でしょうか、ある白人の屋敷と、そこからいかにもな女が降りて来る。まるで「風と共に去りぬ」のワンシーンのようである。カメラが延々と庭から裏手のプランテーションまでワンカットで捉えていくと、一人の女が馬に乗せられていて、さらに一人の男が南軍の兵士らと争っている。その男の首には拘束具がつけられ、一人の黒人の女が逃げようとするのを兵士が投げ縄で首を捕まえ引きずって殺してしまう。馬に乗せられていた女は小屋に連れて行かれる。

 

カットが変わり小屋に連れて行かれた一人の黒人女が兵士に執拗に名前を言うように責められ、背中に焼印を押され、女がエデンと名を言ってしまう。どうやら、黒人は奴隷であるらしく、外では黒人たちが綿花を積んでいて兵士らしい男たちが管理している。しかし、摘んだ綿花は捨てられている。何かおかしい。

 

エデンは将軍という一人の男に夜の相手をさせられている。ことが済んで女が呆然としていると突然携帯が鳴る。カットが変わると、ヴェロニカという女性が愛する夫のそばで目覚める。可愛い娘もいる平和な家庭。ヴェロニカは社会問題を訴える活動家で、この日、講演場所へ向かうために早朝の飛行機で旅立つ。そしてホテルに着くが、何かにつけ従業員らの態度がおかしい。講演の後友人二人とレストランで酒を飲む。一方、ヴェロニカのホテルの部屋に怪しい女が忍び込む。

 

ヴェロニカは翌日、愛する娘の元に帰らないといけないと夜遊びを断り一人タクシーに乗るが、なんとその運転手はホテルの部屋に忍び込んだ女で、ヴェロニカは拉致され、奴隷の如く何処かへ誘拐されてしまう。

 

ヴェロニカ=エデンは従うふりをして逃げるタイミングを図っていた。そして、将軍が寝静まったところで部屋を出て。将軍が自分の馬に隠している携帯を取り、もう一人の黒人の男性と逃亡を図るが、そこへ将軍が現れ格闘の末、将軍を倒し、ヴェロニカは死体焼き場へ将軍を放り込み、駆けつけた司令官も閉じ込め火を放つ。将軍というのは地元の上院議員だった。女性運動を嫌う上院議員とその妻エリザベスは、南北戦争体験場というイベント会場を運営し、黒人を拉致して迫害していたのだ。この地域は極端な黒人蔑視の街だったようである。

 

馬に乗り必死で逃げるヴェロニカをエリザベスが追う。ヴェロニカはエリザベスを投げ縄で捉えて、馬で引きずり殺してしまう。そして会場を飛び出す。こうしてヴェロニカは無事脱出、警察がこの施設に踏み込む映像がエンドクレジットに被って映画は終わる。

 

黒人女性蔑視を問題視したメッセージが終盤しつこいほど描写される映像がやや鼻につきますが、ちょっと風変わりなサスペンスホラーでした。