くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バツグン女子高生16歳は感じちゃう」「放課後」「パーフェクト・ケア」

バツグン女子高生16歳は感じちゃう」

吉沢京子全盛期の昭和色満載の青春映画。シンプルなストーリーと陽気なお色気を含んだ楽しい娯楽映画でした。監督は松森健。

 

美少女川村弓子が転校してくるところから映画が始まる。そしてテニス部に入るが、テニスコートは、不動産屋と癒着した教頭らによって新校舎建設のために売却され、困ったテニス部員と山岳部員は離小島の無人島にコートを作ろうとする。当然、教頭らの反対にあい、すったもんだの末、かつての島の持ち主で弓子をブラジルに連れていくためにやってきた五郎兵衛が全て丸く収めて映画はハッピーエンド。

 

爽やかなラブストーリーと、ちょっとエッチなお色気シーンを入れてサービス精神満載で展開していく様がとにかく明るくて楽しい。昭和満載の台詞の数々が懐かしい作品で、今の映画がいかに制約に縛られているかを実感してしまいます。娯楽はこれでなければいけません。

 

「放課後」

これはなかなかの秀作でした。一見、軽いタッチの青春ドラマと思いきやどんどん物語が膨らんで、心の奥の部分に踏み込んでいく辛辣な展開が見事。小悪魔を演じる栗田ひろみの存在感も秀逸で、優れた映画とはこういう仕上がりをいうと言わんばかりの映画でした。監督は森谷司郎

 

モノクローム画面で、登校から下校までの場面を捉えて映画は始まる。女子高生亜矢子は、隣に住む研二に密かに恋心を持っていて、この日も、研二の家にいって何やかやと世話を焼く。同級生で、研二の家の二階で下宿するカメラ好きの勉らと街へ行った時、研二が奥さん以外の人と歩いているのを見つけて、勉が写真に撮る。しかし、研二に見せても、研二の妻夏子に見せても、思ったような反応がないことが不満だった。勉は実は夏子に憧れていた。

 

研二が一緒に歩いていたのは同級生の小宮克彦の姉由紀で、青山でスナックを経営していた。気にしないふりをしていた夏子も、さりげなく由紀の店に行く。次第に夏子と研二の夫婦関係に歪みが生まれ始め、仕事で遅くなる夏子も、どこか反省はするものの、疑念が深まってくる。亜矢子は、夏子に嫉妬し、どんどん研二へのアプローチは積極的になっていく。一方、夏子は、研二の洋服にも由紀のスナックのマッチが入っているのを見つけ、ついに家を出ることにする。そのマッチは亜矢子が入れたものだった。

 

まもなくして、研二は大阪へ赴任することが決まる。夏子の行方がわからない中、一人で荷造りする研二の所へ亜矢子がやってきて、好きだと告白する。研二は思わず亜矢子を抱きかけるが、そこへ、何事もなかったように、会社を辞める決心をしてスッキリした表情で夏子が帰ってくる。何食わぬ顔で荷造りをする夏子をじっと見つめる研二、そんな二人を、勝ち誇ったように見つめて家の外に行く亜矢子。亜矢子が学校でテニスをしているシーンで映画は終わる。

 

余韻を思い切り残した見事なラストシーンに圧倒される作品で、小品ながら、凝縮されたクオリティに唖然としてしまう見事な映画でした。

 

「パーフェクト・ケア」

今時のハードボイルドを作ったらこうなるのだろうなという作品で、脚本は実によくできているが、後一歩細かい詰めをしっかり描いていれば傑作になり得た一本です。主演のロザムンド・パイクの悪女ぶりが驚くほどに秀逸で、彼女の迫力で映画が引き立った。ただ、マフィアのボスが小人だったり、能のない裁判官が黒人だったり、後見人制度に過剰な描写を用いたり、ところどころに作り手の偏見が垣間見えて、あまりすっきりと誉められる作品ではなかった。監督はJ・ブレイクソン

 

一人の男が老人介護施設に乗り込んでくるところから映画は幕を開ける。母が不当に後見人をつけられて財産を没収されたとやってきたが、本人にも合わせてもらえず力づくで追い返される。その男は、母の後見人についたマーラを訴えるが、あっさり負けてしまい、罵倒して去る。マーラは相棒でレズの恋人のフランと組んで、裕福な老人を、賄賂で操った医師に要介護と認定させ、これまた賄賂で操っている介護施設に監禁して財産を奪っていた。もちろん、表面上は裁判所の決定を元にしているので合法である。

 

ある時、彼女が後見人となっていた裕福な老人が早死にし、次のターゲットを探すことになる。そこに浮かんできたのが、ジェニファーという老婦人で、全く問題なく一人で暮らしているがマーラの息がかかっている主治医の診断で強制的に施設に送り込むことに成功する。マーラは早速財産を処分し始めるが、そこに一台のタクシーがやってくる。ジェニファーを迎えにきたというがフランに「ジェニファーは引っ越した」と言われその場をさる。

 

タクシーの運転手が向かったのはとある高層ビルのオフィスにいる一人のヒゲモジャの小人ローマンだった。彼はロシアンマフィアで、定期的に母ジェニファーと会っていたのだ。早速ことの次第を調べ、マーラの存在を知り、弁護士を使ってジェニファーを助け出そうとするが失敗、なんとも頼りない部下である。さらに、タクシーの運転手らの部下を使って力づくで救い出そうとするも駆けつけたマーラらに反撃され失敗する。これも頼りない。

 

背後にマフィアが存在することを知ったマーラは、ジェニファーの貸金庫を調べていて、巨額の値打ちのあるダイヤモンドを発見する。身の危険を感じながらも、ローマンらに対抗しようと決意したマーラだが、仲間の医師は殺されてしまう。そして、ついにマーラも拉致され、事故に見せて殺されかかるが、すんでのところで脱出したマーラは、殺されかけていたフランも助け、反撃を開始する。

 

ローマンを拉致し、死にかけの状態で道路に放置して、病院に入ったところで取引を持ちかける。ここの展開も実に雑で、あれほどのボスがボディガード一人だけで、しかもあっさり拉致されるというのはどうかと思う。マーラが提示した取引の価格は1000万ドルだった。ローマンは仕方なく承諾するが、一方で、一緒にビジネスをしようと提案。

 

ローマンが金を出すのでマーラが活動して後見人ビジネスを拡大することで二人は手を組むことになる。やがてビジネスは大成長、マーラは時の人になっていくが、そこへ冒頭の男が目の前に現れ、母は施設で死んでしまったと叫んで、マーラを銃で殺す。こうして映画は終わります。

 

実に上手い作劇ではありますが、弁護士なども含めローマンの側近の手下がいかにも能無しだし、警察の存在の描写がほとんどない。荒っぽい展開でぐいぐい前に進むので、面白いのだが、厚みにないサスペンスになってしまったのが実に残念。

 

結局、マーラは死んでもローマンは生きているのだからビジネスは続くわけで、いかにも後味は悪いと言えば悪い。中盤は、まるで悪であるマーラらが正義であるかのようになって、ただ、母を救い出したいだけのローマンが悪人という奇妙な配置はちょっと練り足りないところと気分が悪くなる流れでした。大傑作になりきらなかった佳作という出来栄えの映画でした。