くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ボーはおそれている」「Firebird ファイアバード」

「ボーはおそれている」

つまり、母を恐れて遠ざけていた息子が最後には母に殺されてしまうスリラーなのか?目眩くような奇抜なシーンの連続と、現実感が全くない映像の繰り返し、これで終わりかと思えばさらに先に続く展開、癖になるのもわかるが、ラストシーンに向かっていかない組み立てには翻弄されてしまう映画でした。監督はアリ・アスター

 

暗闇の中、叫び声が聞こえ始め、どうやら出産シーンらしい。生まれて来たのはボウという少年で、母はモナと言うらしい。カットが変わると、寂れたアパートで一人暮らしするボアの姿。路上には普通に死体があり、浮浪者が走り回っている。ボウは精神科の面談を受けていて、どうやら情緒不安定なのかもっと根本的な病気なのか、薬を処方されるが、必ず水で飲むようにと念を押される。

 

自宅に帰ったボウは、母の誕生日に実家に戻る準備をしていた。ところが、つい寝過ごして、慌てて家を飛び出そうとして忘れ物に気がつき部屋に戻った拍子に廊下に出していたトランクと鍵を盗まれてしまう。薬を飲もうとするが、薬を口に入れたものの水が出なくて、ネットで危険度を調べると大変なことになるらしく、向かいのドラッグストアへ行こうとするが鍵がないので、アパートの出入り口に本を挟んで店に飛び込み水を飲む。

 

金を払おうとカードを出すも使えず、小銭を置いてアパートに戻ろうとするが、ドアは閉められ、中に入れなくなる。ボウの部屋には浮浪者たちが侵入して大暴れして一夜が明ける。ドアのガラスを突き破ってアパートに入るが、部屋は荒れ放題で、とりあえず風呂に水を張りながら、母に電話をする。遅れる旨を話すが母にキレられて電話は切られる。

 

ところがしばらくしてかけると宅配の男が出て、どうやら母はシャンデリアが頭に落ちて来て顔を吹っ飛ばされ死んだらしい。葬儀のために急いで帰る必要が起こる。とりあえず、風呂に入り天井を見上げると不審者がいて、落ちて来たその男と揉み合って素っ裸で外に飛び出し、警官に殺されそうになり、道路に飛び出した途端車に撥ねられてしまう。

 

気がつくとベッドの上で、どうやら彼を撥ねた車の主の家らしい。グレースとその夫で外科医のロジャーに助けられ、二日眠っていたのだと言う。この家にはトニという娘がいる。夫婦の戦死した息子の戦友のジーヴスは精神に異常をきたして帰還し一緒に暮らしているらしい。ボウはロジャーに車で実家に送ってもらうことにするが、緊急のオペが入り行けなくなる。グレースも会議があると家を出てしまう。ところがトニが両親に頼まれたからとボウを車に乗せて出発する。しかし車内でドラッグを強制されボウは気を失ってしまう。

 

グレースの家で目覚めたボウだが、入って来たトニが突然ペンキを飲んで意識不明になり、飛び込んできたグレースに非難され、ボウは家を飛び出すが、ジーヴスが追いかけてくる。森に飛び込んだボウは、森の中で演劇を催す団体に助けられ、演劇を見る。その場に父らしい姿もあった。ボウの父は母が妊娠した直後に死んだと聞かされていたのだ。

 

そこへジーヴスが乱入して機関銃を撃ちまくる。慌てて逃げたボウは、ハイウェイでヒッチハイクの車に乗せてもらい、母モナの家にやってくる。しかしすでに葬儀は終わっていて、首のない遺体を収めた棺があった。落胆する棒の前にエレインが現れる。子供の頃、母と出かけた旅先で知り合ったエレインは、突然別れることになり、待っていてというメッセージを残してボウの元をさった初恋の少女だった。

 

ボウの母モナは大企業の経営者で、エレインはそこの従業員でもあった。ボウはエレインとベッドに行きSEXをするが突然エレインはボウの体の上で腹上死してしまう。そこへ、死んだはずのモナが現れる。モナはボウが幼い頃から自分を避けていたことを非難し、ボウが夢で見たさまざまは事実だと説明し、父がいるからとボウを屋根裏に誘う。

 

ボウが登っていくと、バケモノのような父がいて、ボウが驚いているとジーヴスが突入してくる。ジーヴスは怪物と戦うが殺されてしまう。ボウは屋根裏部屋から出てモナの前に行き、死んだのはこの家の女中だと真実を言い当てる。そしてモナの首に手を回して締め殺そうとしてしまうがすんでのところで我に帰り、家を飛び出す。

 

近くの湖にボートがあり、ボウがボートで沖に出ると突然エンジンが止まり、そこは大きなプールが中心にあるホールで、モナの姿もあった。そして、司会者の口上の後突然ボートは大爆発してボウは吹き飛んでしまい映画は終わり。

 

結局、母を恐れていたボウが、最後の最後についに殺されてしまうまでを、精神的に異常になったボウの妄想か幻覚を映像にしながら描いた作品なのだろうかと解釈しました。シュールというより、思いつくままに映像を繰り出していく演出にしか見えない不可思議さに翻弄される一方で、理解しようとする面白さを楽しむ作品だったような気がします。

 

「Firebiad ファイアバード」

出来の悪い脚本で、ストーリー構成がだらだらしている上に、ピュアなラブストーリーのはずがうじうじした恋愛劇に見える演出に、しまいには主人公に憎悪感さえ生まれてしまった。ただ、カメラが実に美しく、ソチでの逢瀬の場面は秀逸だったので、これが唯一の救いの作品でした。監督はペーテル・レバネ。

 

若き日のセルゲイの友人が池に飛び込んでそのまま沈んでいく悪夢のシーンから、ソ連エストニアで仲のいいセルゲイ、ルイーザ、ヴォルテクらが海で戯れるシーンへジャンプカットして映画は始まる。時は1977年、まだまだ同性愛が違法だった時代の物語です。この基地にローマン大尉が赴任してくる。セルゲイとローマンは写真の趣味が同じで急激に親しくなるが、それは友情を超えたものだとすぐに気がつく。一方、ルイーザもローマンに恋心を抱いていた。

 

ローマンはことあるごとにセルゲイと行動を共にし、演劇を見に行ったりしているうちに体を合わせるまでになってしまう。そんな二人に上官のグズネツォフ大佐の部下の少佐が疑念を抱き探りを入れてくる。しかし、はっきりした現場を見たわけではないままに時は過ぎていく。

 

セルゲイは除隊して演劇の勉強のためにモスクワへ行くことにする。まもなくして、ローマンはルイーザと結婚する。しかし、セルゲイのローマンへの思いも、ローマンのセルゲイへの思いも途切れることはなく、四年の月日が流れる。ローマンは研修で一人モスクワへ行き、そこでセルゲイと再会、再び恋が燃え上がるが、新年を迎える日、ルイーザがやってくる。そして三人はセルゲイの演劇仲間も呼んでパーティをするが、ローマンはルイーザと息子を捨てることはできないと告げる。

 

傷心したセルゲイは一ヶ月モスクワを離れるが、その間にローマンはアフガンへの赴任が決まり旅立っていく。セルゲイは後日それを知るが、ルイーザはローマンとセルゲイの関係に気がついていた。さらにセルゲイはローマンがアフガンで殉職したことを聞く。セルゲイはルイーザの部屋を訪ね、かつてローマンにもらった飛行機のおもちゃを残して去って映画は終わる。

 

非常に出来の悪いゲイ映画で、カメラこそ美しいが実話を元にしているとはいえ濁った仕上がりになっているのが残念な映画だった。