くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「東洋の魔女」「鼠小僧次郎吉」「巨人 大隈重信」

東洋の魔女

1964年東京オリンピックで活躍した日本女子バレーボールチームのドキュメンタリー。映画としての出来の良し悪しはともかく、ラストは涙が出てしまいました。監督はジュリアン・ファロ。

 

かつての日本バレーボールチームのメンバーが会食している場面をカメラが追いながら、彼女たちが語る東京オリンピック金メダルまでの日々をアタックNo. 1の曲や映像を多用し、合間に試合の場面、日紡貝塚の姿などを挟んでいく。

 

当然クライマックスは、1964年の東京オリンピックのバレーボール決勝、対ソビエト戦となる。そして、金メダルを取った姿をとらえて映画は終わっていきます。257連勝の偉業、これが日本バレーボール黎明期の記録です。

 

昭和の時代ばかり振り返るのは古いと人に思われると、自分的には避けるように心がけていることもありますが、そんな遠慮はいらないと痛感しました。やはり昭和の時代は良かった。日本はあのまま世界に君臨していれば良かったのだと思いました。色々考えさせられるドキュメンタリーだったと思います。

 

鼠小僧次郎吉

びっくりするような傑作ではありませんが、この頃の時代劇はスケールが大きくて見ていてワクワクします。しかも、様式美にこだわった画面が実に美しい。それだけでも値打ちの一本でした。監督は三隅研次

 

貧民長屋を俯瞰で捉える画面から、次々と小判が投げ入れられ、鼠小僧を称賛する声からタイトル、映画が始まる。江戸の街を騒がす鼠小僧次郎吉が屋根から屋根へ飛び回る見事なアクションシーンから物語が幕を開け、鼠小僧に恥をかかされた旗本が、懇意にしている悪徳親分に鼠小僧の捕縛を命じる。一方、鼠小僧が逃げる時にたまたま助けた浪人小谷が物語に関わってくる。

 

鼠小僧と小谷を林与一一人二役をし、二人のドラマを軸に、鼠小僧を追い詰める様をさまざまな人間模様を描きながらの流れはなかなか面白い。脚色が新藤兼人なので、物語の厚みがあるのはさすが。

 

そして、お尋ね者になった小谷は、たまたま助けた大棚の娘と一緒に大阪へ逃れ、大坂屋と言う小間物屋を営んで身を隠している次郎吉は、幼馴染の娘と船で江戸を離れていき物語は終わる。

 

スケールの大きなカメラワークと映像は流石に三隅研次らしいクライマックスだが、やはり、こう言う場面は伊藤大輔の方が一回り上手い気がします。しかし、日本映画全盛期の時代劇、見応えが十分でした。

 

「巨人 大隈重信

早稲田大学創設者大隈重信を描いたいわゆる偉人物語ですが、時間軸を巧みに描写しながらの重厚な人間ドラマとしてはなかなか見応えのある映画でした。監督は三隅研次

 

明治の始め、イギリス人外交使節が襲われて、その後始末に、九州にいた大隈重信が東京に召喚されるところから映画は始まる。その度胸と博識で見事に事件を解決した大隈は、伊藤博文井上馨らと、近代日本の政治を確立するべく奔走するようになる。物語は大隈重信が次々と困難な中、日本の歴史の一ページに存在感を見せる様子を丁寧かつ重厚に描いていく。時の流れを登場人物のメイクで巧みに描写していく演出が実に上手く、やがて早稲田大学が成立してクライマックスを迎える。

 

薄っぺらい物語にせず、締めるべきはしっかりと描いた脚本が素晴らしく、役者の演技もしっかりしていて見応え十分。傑作というわけではないけれど、見て損のない一本でした。