くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クライ・マッチョ」「コンフィデンスマンJP英雄編」「ハウス・オブ・グッチ」

「クライ・マッチョ」

落ち着いたいい映画ですが、それ以上でも以下でもない普通の作品でした。原作があるとはいえ、ちょっと取ってつけたようなエピソードの羅列になってしまったのは残念ですね。もうちょっと情緒のある映画にしてほしかった気がします。監督はクリント・イーストウッド

 

かつてロデオスターだったマイクがピックアップトラックを走らせているところから映画は始まる。仕事先の牧場に着くが時間に遅れ首になってしまう。そんなマイクに、かつて恩のあるハワードからメキシコにいる息子のラフォを連れ帰ってほしいと依頼される。ラフォはハワードの元妻から虐待を受けているのだという。気が進まないながらも仕事を請け負ったマイクはメキシコに向かう。

 

メキシコについて元妻のところへ行くが、ラフォの居場所は知らないという。ラフォは不良で、多分闘鶏をしているというのでマイクは闇の闘鶏場へ行きラフォを見つける、この流れが実にあっさりである。そしてマイクはラファとアメリカ国境へ向かう。ここから映画の本編となる。というか、ここからの道のりがやたら長い気がする。

 

途中、車が動かなくなり、メキシコでマルタという女性とその家族と知り合うエピソードを挟んで物語を膨らませ、警察からの追手をまきながら、馬の調教などもするエピソードを交えて、最後はラファをアメリカのハワードに引き渡し、マイクはマルタの元へ帰って行ってハッピーエンド。

 

引き伸ばすためだけのエピソードが挿入されるのは、原作があるとはいえ、映画としてうまく処理されていないのはもったいない。クリント・イーストウッドの作品としては中レベルという感じの映画でした。

 

「コンフィデンスマン JP 英雄編」

テレビスペシャルレベルの茶番劇シリーズだが、まあ賑やかな中に気軽なエンタメ作品で、楽しむにはハズレのない映画でした。例によって、中心のストーリーから最後のドンデン返しという定番の展開で安心して見終わりました。監督は田中亮。

 

ガー子、ぼくちゃん、リチャードの三人が二年間仕事をしていない。そこで、これを最後にしようと三人で騙し合い合戦をすることに決定。舞台は地中海のマルタ共和国、イタリアンマフィアが所有する踊るビーナスという時価二十億と言われる美術品を騙し取ることにする。ところが、かつて日本の義賊として名をはせたツチノコが再度イタリアに現れたということで、インターポールなども動き始める。

 

てんこ盛りのキャラクターが次々と現れ、二転三転のストーリー展開はいつものごとくで、結局、真相は別にありというラストシーンからもう一回ひっくり返してエンディング。

 

たわいにない映画というのはいつもの通りですが、ちょっと今回はスケールダウンした気がしないわけではありません。でも、このシリーズまだ大丈夫かなという気もします。面白かったしいいとしましょう。

 

「ハウス・オブ・グッチ」

期待通り見応え十分な映画でした。2時間以上あるけれど画面から目を離せないほど面白かった。登場人物の心理変化がまるでフェードインアウトのように変化していく様が細かい演出の隅々から伝わってくるし、まさにグッチ帝国の大河ドラマのようでした。映画を堪能したという感じです。監督はリドリー・スコット

 

一人の男がカフェでコーヒーを飲んだ後自転車で走り始める。降りたところで建物に入ろうとして、グッチさん、と声をかけられてタイトル。彼の名前はマウリツィオ・グッチである。

 

トラックが並ぶ運送会社、一台の車からセクシーな女性パトリツィアが降りてくる。彼女は父の運送会社で事務をしているが、父のサインを真似るのが得意だった。友人に誘われて豪勢なパーティに行った彼女は、そこでマウリツィオと知り合う。彼がグッチ一族と知ってか、パトリツィアは彼を待ち伏せて偶然を装って書店で再会する。マウリツィオは弁護士を目指していたが、父のロドルフォはグッチ一族だった。

 

マウリツィオとパトリツィアはみるみる恋仲になり、マウリツィオはロドルフォに会わせるべく自宅に連れてくるが、父は結婚には反対する。マウリツィオはロドルフォの考え方を受け入れられず、家を捨ててパトリツィアの父の運送会社で働くようになる。そして間も無く結婚する。

 

ある日、ロドルフォのところに兄のアルドがやってくる。彼はニューヨークでグッチブランドのビジネスを行いグッチ帝国を作り上げた人物だった。ロドルフォはどちらかというと芸術に造詣の深い人物で、ビジネス優先のアルドとは考え方が異なっていた。アルドにはパオロという息子がいたが、才能がない上にあまり頭が良くなく、アルドはマウリツィオのことを気に入っていた。

 

アルドの70歳の誕生パーティにアルドはマウリツィオを招待する。そこでアルドはマウリツィオ夫妻をニューヨークへ来るように提案し、強引に航空券を渡す。パトリツィアはたまたまテレビで知った占い師のピーナから、巨額の資金が手に入ると予言され、グッチ一族に取り入ることを画策し始める。元々商才もあった彼女はアルドにも気に入られ、マウリツィオもアルドの仕事をするようになる。

 

やがてロドルフォが病で亡くなり、巨額の遺産が入るが、グッチの株券にサインしていなかったため相続税がかかってくる。パトリツィアがサインをして逃れたようだが、その場面ははっきりと描写されません。そんな頃、グッチの偽物が大量に露店で売られているのを見つけたパトリツィアはマウリツィオと一緒にアルドのところへ行くが、アルドは品質よりも儲ける機会だと意見を出す。

 

一方、パオロは自分のデザインを商品にしたい気持ちはあったが資金がなく、さらにロドルフォに、生前その才能のなさを指摘されて反感を持っていた。パトリツィアは彼を味方に入れて、アルドの株式も手に入れるのが得策だと計画を立てる。ところがパオロが持っていた裏帳簿が明るみになってアルドは逮捕され、実刑を受けてしまう。マウリツィオにも警察の手が回ってきて、彼はカナダに脱出する。

 

さらに、頼ってきたパオロにも冷たい態度をとるパトリツィアに、次第にマウリツィオとパオロの関係もギクシャクしてくる。やがて、アルドが出所してきたが待っていたのは株式をすべてマウリツィオに譲渡するものだった。

 

グッチを全て手に入れたマウリツィオは、グッチの新しい出発のために斬新な計画を立てていく。しかし、カナダで知り合った旧知の女性パオラと親しくなり、パトリツィアとの関係も疎遠になり始め、とうとう別居から離婚へと進んでしまう。一方、グッチの経営は厳しく、共同経営者らからの追求の中、父の代からいる弁護士ドメニコらの提案で、マウリツィオは全株を手放さざるを得なくなる。そんな頃、ミラノにいたパトリツィアは、ピーナの提案で、殺し屋を雇いマウリツィオを暗殺する計画を進める。

 

一人カフェでコーヒーを飲むマウリツィオ。冒頭のシーン、自転車に乗り街を走った後建物に入ろうとして、声をかけてきた男に銃で撃たれ死んでしまう。法廷でパトリツィア、ピーナらが裁判にかかっている場面で映画は終わる。その後、彼女らが求刑されたこと、アルドらのその後がテロップされてエンディング。

 

とにかくしっかり作られた作品で、ほとんど隙がない演出で、相当見応えのある仕上がりになっています。リドリー・スコット監督の音楽センスも見事だし、さすがと言わざるを得ない一本でした。