くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「グラディエーター」「シラノ」

グラディエーター

二十年ぶりの再見。やはり名作です。圧倒的な人間ドラマに画面から目を離す瞬間が一度もなかった。ここまで描かれると、もはやスペクタクルなコスチュームものの範疇を超えています。傑作ですね。監督はリドリー・スコット

 

ゲルマニアの蛮族を目の前にした最前線で、ローマ将軍マキシマスは、皇帝アウレリウスと共に今にも戦闘が開始される瞬間にいた。やがて、マキシマスの合図で戦闘が開始されるが、圧倒的な火力の前で、ローマ軍は大勝する。その夜、アウレリウスの息子コモドゥスも戦地を訪れる。コモドゥスは、次期皇帝は自分であると確信していたが、アウレリウスはマキシマスを次期皇帝にと考えていた。そして田舎に帰りたいというマキシマスに皇帝はその真意を伝える。さらにコモドゥスにも、次期皇帝を譲らない旨話すが、これまで尽くしてきた事を訴え、思い余ってアウレリウスを締め殺してしまう。

 

駆けつけたマキシマスは、皇帝は殺されたと見抜くが、コモドゥスは、眠るように死んだと話し、新皇帝に敬意を払えと迫る。マキシマスが反抗的な態度をとった事で、コモドゥスはマキシマスを捉え、翌朝処刑するようにと言い渡す。しかし、すんでのところでマキシマスは処刑人を倒し逃亡する。目指すのはコモドゥス達が狙っているマキシマスの家族だった。しかし、一足遅れで、家族は皆殺しにされ、妻も息子も殺された後だった。悲嘆にくれるマキシマスは、気を失っていて、奴隷商人に拾われてしまう。

 

やがて、プロキシモというグラディエーターを戦わせる興行師のもとに売られたマキシマスは、次々と敵を倒し、スペイン人というニックネームで人気を博していく。一方ローマでは、コモドゥスが凱旋したものの元老院の態度は冷たく、さらに、密かに思いを寄せる姉ルシラもそっけなかった。しかし、ローマを思う気持ちにかわりのないコモドゥスは、自分なりに人気を得るために執政を続ける。そして人々の剣闘好きを逆手にとって、アウレリウス皇帝が中止にした剣闘を再開し、アウレリウス皇帝追悼大会を計画する。

 

その噂を聞いたプロキシモは、マキシマスらをローマへと連れていく。そして、アウレリウス皇帝追悼大会で、戦車隊を殲滅させるという大勝利をコロセウムで見せ、コモドゥスの興味を引く。そして、スペイン人と言われていた人物こそ、処刑されたと報告のあったマキシマスだとわかる。ここまでスペクタクルなコスチューム劇として展開するが、この映画の凄さはここからです。

 

人々の心がマキシマスに傾くのを良しとしないコモドゥスは、さまざまな手段でマキシマスを排除しようとするがうまくいかない。一方

ルシラは元老院のメンバーでコモドゥスに反抗的なクラックスと共に、マキシマスを擁護しながら、軍によるクーデターを計画する。しかし、多方面に用心をしているコモドゥスの知るところとなり失敗する。それでも、コモドゥスは密かに愛するルシラと息子のルシアスを罰することができずにいた。

 

ますますマキシマスの人気が高まる中、コモドゥスは最後の手段に出る。それはマキシマスとのコロッセウムでの直接対決だった。しかしコモドゥスは競技場へ入る直前、マキシマスの背中に重傷を負わせ剣闘場へ向かう。

 

コモドゥスとマキシマスの戦いが行われるが、重傷を負っているにもかかわらず、マキシマスはコモドゥスを倒す。マキシマスは剣闘士仲間の釈放とアウレリウス皇帝が望んでいた新しい共和政への約束を元老院にさせる。ルシラが駆け寄るがマキシマスは故郷へ戻るという夢を見ながらやがて息を引き取る。剣闘士仲間や彼を慕う人々が彼の遺体を担ぎあげる。こうして映画は終わる。死してようやく彼の夢である農場へ戻ることができた。

 

コスチュームものの常道である、派手でスペクタクルな場面がクライマックスではなく、スペクタクルなシーンは中盤で終わらせ、マキシマスが正体を表すところからをこの映画の本編を進めるという作劇に圧倒される。しかも、後半部分、コモドゥスのルシラへの愛や皇帝としての苦悩がどんどん映画に重みと深みを与えていき、一方でマキシマスの脱出に関わるサスペンスフルな展開と相まって、映画が、とんでもない人間ドラマに昇華していくのは凄い。まさにアカデミー賞にふさわしい名作でした。

 

「シラノ」

元々がいい物語なので、それなりに仕上がるのですが、ミュージカル部分とセリフ部分の感情の流れがうまく連続できていなくて、せっかくの美しいミュージカルナンバーが生きていないのが勿体無い作品でした。監督はジョー・ライトなので、画面は上品で美しいのですが、その映像が美しい恋愛ドラマとして生きていなかった感じです。それと、なぜ、小人と黒人にしたのかが元にしたエドモンド・ロスタン版のミュージカルを知らないので何とも言えませんが、ちょっとあざといのが鼻につきました。ついでに、ロクサーヌ役の小太り目の小さい女優さんがちょっと役不足の気がします。

 

ロクサーヌはこの日、求婚してきている公爵の誘いで芝居を見にいくことになっていた。全く気がないロクサーヌだが、公爵は権力も金もある実力者だった。芝居が始まり、主人公か口上を始めると、大根呼ばわりする罵声が聞こえてくる。声の主はシラノで、フランス軍きっての騎士でもある男だが、いかんせん小人だった。ここに、今日軍隊に入る予定のクリスチャンもやってくる。そして客席のロクサーヌに一目惚れ、一方クリスチャンをみそめたロクサーヌもその姿に一目惚れする。クリスチャンは黒人だった。何でという感じです。

 

ロクサーヌとシラノは旧知の友人同士だが、シラノはロクサーヌのことが好きだった。ロクサーヌに告白しようとシラノはロクサーヌを呼び出すが、そこでロクサーヌから軍隊の新入りクリスチャンという男性に一目惚れしたから、彼を頼むと言われてしまう。シラノは辛いながらもロクサーヌの頼みを聞いてクリスチャンに近づくが、クリスチャンは詩の才能が全くなかった。この時代、美しい詩をかけ、話せることが知性の証でもあり、ロクサーヌもクリスチャンにそれを期待していた。

 

クリスチャンは困ってしまうが、シラノは、自分が代わって手紙を書くことにする。こうしてクリスチャンの代わりにシラノが手紙を書いて、ロクサーヌとクリスチャンの恋のやり取りが始まる。ところが、軍隊に出征の命令が降る。しかし、クリスチャンとシラノと別れるのを嫌ったロクサーヌは公爵に頼んで、二人をこの地にとどめさせる。クリスチャンはロクサーヌに直接話をして恋を語ろうとするが失敗し、シラノに影からサポートしてもらって恋を語ることにするが、途中からシラノが一人でロクサーヌに語りかけることになってしまう。

 

指揮のために戦地にいた公爵は、待ちきれずに司教を使いにして、すぐに結婚するか、拒否して、肉体だけ奪われるか選択を迫ってくる。無茶苦茶な話である。ロクサーヌは慌ててクリスチャンと結婚式を挙げるが、それに怒った公爵はクリスチャンとシラノの二人を戦地へ送り出してしまう。戦地からはシラノがロクサーヌに手紙を送り続けるが、やがて突撃の命令が降る。いよいよという時、シラノが書いた最後の手紙を見たクリスチャンは、そこに涙の跡を見つけ、本当はシラノがロクサーヌを愛していたのだろうと責め、自暴自棄になって最前線に飛び出し撃たれてしまう。シラノも重傷を負うが無事帰る。それから三年が経つ。シラノは教会で働くロクサーヌに毎週ニュースを届けていたが、自らは、ろくに食事も取らず弱ってきていた。そして、最後にロクサーヌの元を訪れ、ロクサーヌの最後の手紙を誦じて読み、実は自分が書いていたことをロクサーヌは知る。そしてロクサーヌの口づけを受け、シラノは息を引き取る。こうして映画は終わるのですが、終盤が、あっさりと仕上げてしまって、ちょっと残念。

 

いい話だし、ミュージカルナンバーもとっても素敵だが、歌の部分に感情が載っていないのは歌唱力不足か演出の弱さか、今ひとつ、原作の機微が伝わりきれない仕上がりになっていた感じがしました。