くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「上流社会」「Ribbon」

「上流社会」

グレース・ケリー最後の出演作。これは楽しい映画でした。わずか二日間の物語ですが、エンタメ感が詰め込まれているし、グレース・ケリーの存在感とお芝居がとってもキュートで飽きさせずにラストまで行きます。主演なのに、ミュージカルなのに、一曲も歌わないけど。(笑)監督はチャールズ・ウォルターズ

 

ルイ・アームストロング(本人)とその楽団がバスで上流階級ロード家の結婚式前日にやってくるところから映画は始まる。ジャズ好きのデクスターがジャズフェスティバルを邸宅で行うために招待したのだ。この家の末娘キャロラインが、お転婆よろしく走り回り、そこへ、今回再婚するトレイシーが現れる。彼女は自由奔放な女性で、前夫デクスターがやってきても平気で、フィアンセのジョージを呼んで、今から陽気に走り回っていた。

 

一方、叔父のウィルは、ロード家の主人のスキャンダルをネタに、トレイシーの結婚式の取材を三流雑誌の編集長に依頼されていた。そして、マイクとエリザベスの二人の記者が邸宅にやってくる。トレイシーは二人を冗談半分に迎え入れる。トレイシーは、作曲など自由に生きているデクスターのことが今でも気に掛かっていた。一方ジョージは堅物ながら頼れる男性であるというのも認めていた。さらに、庶民階級のマイクの自由さにもどこか魅力を感じ始めていた。

 

やがて、結婚式前夜のパーティが開かれるが、しこたま飲んで、何かにつけてジョージの視線が気になるトレイシーは一人息抜きに外に出ようとする。そこへマイクが現れ、二人で夜遊びを始める。そして酔ってプールに飛び込んだトレイシーがマイクに抱えられて戻ってくるところに、デクスターやジョージ、ウィルと鉢合わせしてしまう。マイクはトレイシーを寝室まで運んだもののデクスターに殴られて気絶。やがて一夜が開ける。

 

昨夜のことを全く覚えていないトレイシーだが、デクスターから、ことの経緯を説明され驚く。そこへジョージが現れる。一旦は許したジョージだが、トレイシーの奔放な言い訳に、結局結婚を辞めることにする。程なく結婚式が始まる。トレイシーはかねてからデクスターのことをまだ愛していると感じていたこともあり、デクスターの機転でそのままデクスターとトレイシーは結婚式をあげて映画は終わる。

 

ルイ・アームストロングの口上の出だしからラストまでの存在感とグレース・ケリーの美しさに魅了される映画で、ビング・クロスビーフランク・シナトラの歌声も素晴らしく、まさに豪華絢爛ミュージカルという感じの一本でした。でもグレース・ケリーはなぜ歌わないのでしょう。

 

Ribbon

それほど期待もしてなかったが、意外に面白い作品でした。なるほどこういう切り口もありかという「のん」の感性の面白さに感心してしまいました。日常が非日常になり、異常な毎日が普通になるコロナ禍を逆手に取ったユニークで、それでいてどこか希望と青春の1ページ的な爽やかさが漂う映画でした。監督はのん(旧能年玲奈)

 

美大の校庭に全身にリボンをまとった一人の女性が歩いている。学内では、コロナ禍で中止になった卒業制作展の中止のアナウンスと、自分たちが作った作品を壊している学生たちが映し出されていく。浅川いつかも、自分の作品を両手いっぱいに抱えて校舎を出てくる。途中、友達の平井と会う。平井の作品は大きすぎて持ち帰れず、学内に残したままになっている。

 

四苦八苦して自宅のアパートに戻った浅川だが、外出自粛の中、何もすることもなく、と言って何をする気にもならず、暇を持て余している。突然かかってくる平井からのビデオ電話に大騒ぎしながらストレスを発散する。さらに、予告なくやってきた母は、部屋中を勝手に片付けた挙句、壁に立てかけていた浅川の作品をゴミだと思ってゴミ置き場に捨ててしまい、浅川と大喧嘩、翌日、様子を見に父も訪ねてくる。異様な格好でやってくる浅川の家族の訪問ドラマがまずコミカルで面白い。

 

気晴らしに公園に行くと、怪しい青年が座っていて、浅川は逃げるようにかえってきたが、妹の舞と一緒に行った時に、舞にどこかで見たことがあると言われる。その後一人で出かけた浅川は、その青年から中学時代の同級生に田中だと言われる。ここから、浅川が田中だと確信するまでのコミカルなシーンが続く。

 

そんな時、平井から、学校へ忍び込んで絵を描いたと連絡が入り、浅川は彼女に思い切り怒るが、よく考えると、なぜダメなのかという感覚がコロナ禍でおかしくなっていることに気がつく。そして、帰宅した浅川に、コロナ禍により内定取り消しになった連絡が入る。浅川は自暴自棄になり、描きかけていた絵を再度ゴミ置き場に捨てる。翌朝、平井がやってきて、自分の絵を持ち帰りたいと相談される。その夜、二人は学校へ忍び込み、平井の絵をバラバラにして持ち出す。そして、組み合わせて欲しいと平井は浅川に託す。

 

公園で、田中と会った浅川は、田中が浅川が捨てた絵を拾ったこと、中学の卒業の時に浅川にもらった絵をいまだに持っていることを告白する。そして浅川が捨てていた絵を浅川に返す。何かが吹っ切れた思いになった浅川は、絵の続きを描き始める。翌朝、部屋中にリボンを飾り、玄関に卒業制作展とプラカードした浅川の家が出来上がる。訪ねてきた平井が浅川の部屋の中で見たのは、平井の絵を組み直して浅川の絵と一体にし、部屋中にリボンが飾られた室内だった。こうして映画は終わる。

 

浅川の心が高揚したり落ち込んだりした時にリボンが現れて、部屋を舞ったりする映像効果が映画に微妙な心の機微を生み出して、ちょっとしたアクセントになっているし、マスクやソーシャルディスタンス、刺又や過剰な潔癖症の描写を巧みにコミカルに使ったストーリー展開も面白い。いつのまにか非日常、異常な世界を、普通と感じ始めている人たちへのメッセージも見えたりするし。そんな中での青春の1ページも綺麗に映し出されているのがとってもオリジナリティがあって良かった。ちょっと面白い作品でした。。