「1950 鋼の第7中隊」
国連軍と中国人民志願軍が激突した長津湖の戦いを描くスペクタクル。とにかく全盛期のソ連映画を見るような物量映像とCGの氾濫を楽しむだけの映画で、3人の監督がそれぞれパートを分けて作ったものを一本にした感じで、主人公のドラマはあるもののほとんど本編に影響のない戦争スペクタクルでした。監督はチェン・カイコー、ツイ・ハーク、ダンテ・ラム。
国共内戦を終えた主人公千里が故郷に戻ってくるところから映画は始まる。この冒頭のシーンが実に映像が美しい。出迎えたのは弟の万里で、兄の百里は戦死したらしい。ところがすぐに召集がかかる。時は朝鮮戦争勃発時、米軍を中心にした国連軍が朝鮮半島から38度戦を超えて中国本土へ迫って来たのである。
千里は駐屯地へ向かうが、無理やり万里が志願兵として飛び込んで来る。やがて、千里らの中隊は米軍が侵攻する東部戦線へ向かう。物語はここから、迫って来る米軍を迎撃する中国人民志願軍の活躍を繰り返し描いて行く形となる。制空権をとっている米軍の火力は圧倒的で、そこを人海戦術的な応戦をする中国人民志願軍の活躍をCGと物量作戦の映像で見せて行くスペクタクルは面白い。
クリスマスまでに勝利するというマッカーサーの思いを覆しながら徹底抗戦する中国人民志願兵たち。クライマックスは、東部の拠点長津湖で中国人民志願軍とアメリカ軍が激突、見事中国人民志願軍がアメリカ軍を追い返して朝鮮半島38度戦に引き退らせる。一応、万里の心の成長場面もあるものの軽くいなして映画は終わる。
エンドクレジットで、中国の若者たちへ、アメリカを叩き潰せという意味の歌が流れるという国策映画丸出しの作品ですが、久しぶりの戦争スペクタクルなので、まあ退屈はしませんでした。
「紅い服の少女 第一章 神隠し」
都市伝説を元にしているだけあって、目に見えない呪いの恐怖という感じではなくてストレートに化け物が現れるホラーテイストになっています。単純に怖いし、物語はシンプルで中身はないので気軽に楽しめる映画になっていました。監督はチェン・ウェイハオ。
一人の老婆リンが森を歩いている場面から映画が始まり、カットが変わると、不動産屋に勤めるジーウェイがベッドで目覚める。ジーウェイの祖母の友人リンが行方不明らしく張り紙が貼られている。ジーウェイは恋人のイージュンを家に招きたいが、祖母は何かこだわりがあるようである。まもなくして、今度は祖母が行方不明になる。と同時にリンが帰って来るのだが何やら訳のわからないことを言っている。世間では神隠しが横行するのはモーシンナアという魔物が連れ去りに来ているからだと噂が流れ、マンションの管理人のクンおじさんは爆竹を炊いてお祓いをしている。
ところが、ジーウェイの周囲に怪しい人影が見え始め、しばらくして彼が行方不明となり、同時に祖母が帰って来るがどこかおかしい。そして、その祖母も姿が見えなくなる。イージュンは、捜索隊を伴って森の奥に入っていく。その森の場所は、イージュンが聞いた不気味な電話の声からだった。森の奥に進むなか、祖母は見つけたもののイージュンははぐれてしまう。そんな彼女に魔物が迫って来る。木に囚われていたジーウェイを助け出し二人で逃げる。迫るモーシンナアの魔物たち、すんでのところで手にしていた発煙筒で追い払い、二人は何とか脱出。
祖母、イージュン、ジーウェイ3人の幸せな家庭の場面で映画は終わるが、イージュンのお腹には赤ちゃんが宿っている。そのエコー画像に写る姿はモーシンナアの顔でエンディング。
ストーリーはかなり適当ですが、モーシンナアの魔物がなかなか怖いので映画を最後まで楽しめました。
「紅い服の少女 第二章 真実」
第一章の物語の真実を明らかにするという続編。台湾の宗教的な展開や、CGを使ったアクションスペクタクルも見られるのでエンタメ性は十分。一方でホラー色はやや薄れた感じです。少々辻褄の合わないところがあるのかないのかですが、それなりに楽しめる映画でした。監督はチェン・ウェイハオ。
森の奥、不法伐採をしている業者が、不気味な死体を発見し、その帰り何者かに襲われるところから映画は始まる。役所に務めるリーの娘ヤーティンはまだ学生なのに妊娠していることがわかる。リーはヤーティンに中絶を薦めるがヤーティンは反抗、しばらくしてヤーティンは学校の帰り紅い服の少女と共に姿を消してしまう。そんな頃、リーは児童虐待の通報で一軒の家を訪ねる。中に入ると、虐待されているらしい少女ヨンチンを発見するが家の中は護符が書かれ、母の体にも護符の文字が記されていた。しかし、リーは強引にヨンチンを施設に入れる。
リーはヤーティンの恋人であるリンの元を訪ねる。リンの祖父は何やら神がかり的な力があり、リンに神獣を乗り移らせることができた。その指示する先を訪ねたリーは、15年前に閉鎖された病院で、行方不明だったイージュンを発見する。実は第一章のラストでイージュンとジーウェイ、その祖母の3人が仲睦まじく食事していたが、実はモーシンナアの結界から抜け出せていなくて、祖母は発見されたのちに死亡し、ジーウェイも森の木の中で死んでいたのだ。リーはイージュンに、ヤーティンの居所を尋ねるが、はっきりしなかった。そして、モーシンナアは、自分の母を探すために人を誘拐しては連れ込んでいるらしいとわかる。
リーとイージュンはヨンチンの母の元を再度訪ねる。そしてヨンチンの母が告白した真実はこうだった。彼女にはかつてヨンチンという娘がいたが、ある時遊園地に連れて行き遊具の事故で大勢の子供が亡くなった。ヨンチンの母は諦めきれず曽祖父が行っていた死者を蘇らせる儀式を行うことにする。森に死体を埋めて一週間、血の儀式を母は続け、一週間目にヨンチンは蘇るがそれはモーシンナアという魔物として蘇ったのだった。母は魔物になった娘を封じ込めるために護符を縫い付けた布で抱きしめて消そうとするが失敗した。のちに妹を身籠ったが、その妹に同じヨンチンの名をつける。しかし魔物となったヨンチンは母を探し求めて神隠しを繰り返していた。
ヨンチンの母とイージュン、リーの三人はリンの父に憑依したモーシンナアの言葉を頼りに森の奥に向かう。ところがそれはモーシンナアの罠だった。リンの祖父がリンに罠だからという旨を告げ、リンはリーらの後を追う。一方リーらは、ヨンチンの母の指示でかつて姉のヨンチンが事故で亡くなった遊園地にやって来る。ヨンチンの母は身を持ってヤーティンを助け出そうとする。しかし、ヨンチンの母はモーシンナアの力に倒れてしまう。リーは遊園地の奥に進み、ヤーティンを発見し助け出す。一方、自分が死んだら妹のヨンチンを頼むと言われていたイージュンは施設に行きヨンチンを助け出す。しかしそこに紅い服の魔物が襲い掛かる。一方、遊園地ではヤーティンを助け出したリーとリンが逃げようとするがモーシンナアの魔物たちが襲いかかって来る。神獣に変身したリンが果敢に魔物に立ち向かうが苦戦。
そんな頃、妹のヨンチンに説得され、母は姉のヨンチンにも愛情を注いでいたことが紅い服の少女ヨンチンにも伝わり、彼女に乗り移っていた魔物が取り払われる。遊園地ではリーたちが襲いかかって来る大勢のモーシンナアに苦戦していたが、突然紅い服の少女が現れ、リーたちを助け、モーシンナアを蹴散らしてしまう。そして三人は無事脱出する。
間も無くヤーティンは出産しようとしている。傍にリーやリンその祖父、イージュンが見守っていた。無事子供を産んだヤーティンの笑顔で映画は終わる。ハッピーエンドです。
第一章の不気味なホラー演出から、魔物対人間というバトルシーンをメインに据えた第二章はそれなりにエンタメとして楽しめる上がりになっていて面白い。決して良くできた作品ではないけれど、B級ホラーのテイストは十分こなせている映画だったと思います。