くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「蝶採り」「ワース 命の値段」

「蝶採り」

徹底的な日本人蔑視というか、自国称賛的なコメディで、それを面白いと捉えるかどうかは複雑な一本。ただ、例によっての入れ替わりたち変わり登場する人物達のストーリー展開と絵作りの面白さは堪能できました。監督はオタール・イオセリアーニ

 

フランス郊外の村に列車が入って来る。降りてきた大勢の客達の中にアラブ人もいたり雑多である。出迎えたのは地元のオーケストラで、中の一人の女性は近くの古城の主人マリ=アニエスの従姉妹である。教会に行き、使用人達を指図し、城内を仕切りながら日々生活している。マリ=アニエスは、車椅子に乗り、城内でピストル射撃をしたりしている。従姉妹の老婆も弓矢で魚をとったりしている。隣人で公証人アンリは古城を日本人に売却する事を考え動いていた。時々、亡霊のように透けた映像で軍服姿の男達がビリヤードをしていたりして、この屋敷がいかに古いかを見せる。

 

やがて日本企業のメンバーがやってくる。しかしマリ=アニエスの従姉妹は、マリ=アニエスが死んだら考えるし、まだ五十年は生きると追い返す。着物姿の日本人の一行を始め、観光客が次々と古城の見学に来たり、中のお宝の家具や絵画はその手の業者が鑑定に来たり買い取ったりする。そんなある時、マリ=アニエスが亡くなる。遺言書を開封するにあたり、様々な地から親戚が集まってくるが、財産は全て妹に譲ると書かれていて呆れて帰ってしまう。

 

しかし、妹に所有権が移ったことで、アンリは日本企業に古城を売却することに成功。居場所がなくなった妹は娘に引き取られていく。マリ=アニエスの従姉妹の老婆もオーケストラと一緒にこの地を離れることになり列車に乗り込む。古城は日本企業によって、ふざけたような改装がなされ、門が閉じられて映画は終わる。

 

なんとも言えない幕切れに開いた口が塞がらない作品でしたが、作品のレベルはやはりそれなりに高い。そこがこの特集の値打ちだと思います。

 

「ワース 命の値段」

実話だとなれば、そこかしこの嫌なシーンも受け入れざるを得ない。結局そういうことに終始してしまう作品でした。主人公ファインバーグがこの仕事を受けようとした動機の描写がやや弱いので、展開の中で彼が次第に行動方針を変え、一方でチャールズの意見を入れていく部分が非常にリアリティを欠いたようになってしまった。しかも結局パーセントで締めくくるエンタメのようなストーリー構成は、実話だからと思わないと、さすがに素直に受け入れられないようにも思いました。監督はサラ・コランジェロ。

 

オペラ好きの弁護士ファインバーグは、ある時列車に乗っていて、9.11の現場の景色を遠目に目撃する。そして、政府はその被害者を救済するため、またそれに関わった企業の損害賠償を最小限にして経済を守るために、被害者基金を設立して、提訴を防ぐ計画を立てる。その矢面に立つと名乗り出たのがファインバーグだった。彼は無償で交渉にあたると明言して仕事を始めるが、被害者の陳情を部下に任せ、数字による割り切った提案により解決を図ろうとして暗礁に乗り上げる。

 

最初の説明会にもやってきた基金反対派を率いるチャールズは、ファインバーグのやり方に若干の異議がある事を仄めかす。同性婚の問題、不倫問題さえ絡み始めて複雑化していく交渉に、ファインバーグは辟易とし始めるが、個々の被害者に向き合うことの必要を感じ、なぜ応じないのかの具体的な問題点に目を向け、次第に同意者を増やしていく。そして、先へ進むためにという彼の方針を再度思い出し、最後の交渉を行い、結果は目標の80%を優に超えて95%となる。こうして映画は終わっていきます。

 

特に映像表現として秀逸なものもなく、悪くいうと平凡な社会ドラマですが、こういう事実もあったというのを知る意味では面白い作品でした。