くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「フラッシュ・ゴードン」(4Kリマスター版)「トリとロキタ」

フラッシュ・ゴードン

初公開以来の再見。中心の話に枝葉をつけていく展開などそっちのけで、枝葉が次々と進んでいく支離滅裂なストーリー展開にあっけに取られる、まさに珍作。無駄に大作な画面と趣味の悪い造形美術がとにかく楽しい一本で、結局面白くも何ともないのだけれどクセになる魅力が存在するカルトSFでした。監督はマイク・ホッジス。

 

ミン皇帝が、地球を破壊しようと地震津波、ハリケーンなどのスイッチを入れて大惨事を起こしている場面から映画が始まる。熱い雹が降る中、主人公フラッシュは飛行機に乗る。乗り合わせたデールという美女と飛び立つが、乱気流の中、操縦士は機外へ放り出され、フラッシュが不時着したところは、奇人ザーコフ博士の研究室。当のザーコフ博士は月が地球に衝突するのを予見し、それを防ぐためのロケットを準備していた。しかし、助手もそれに乗ろうとしないので、フラッシュらを騙して乗せてロケット発射。ところがロケットはミン皇帝の支配する宇宙に吸い込まれてしまう。

 

ミン皇帝が支配する惑星モンゴは属国の惑星を独裁的に支配している帝国で、属国のバリン王子やバルカン王子と協力したフラッシュはデールと結婚しようとしているミン皇帝に立ち向かっていく。ミン皇帝の娘オーラ姫さえミン皇帝に反抗するし、誰が味方で誰が敵かわからない心変わりを繰り返すバリン王子やバルカン王子の存在が話を支離滅裂にしていく。結局、ミン皇帝は倒され、バリン王子がモンゴ帝国の皇帝となってハッピーエンド。で、月が地球に衝突するピンチはなぜか回避されている。THE END?という意味深なエンドクレジットで映画は終わる。

 

とにかく、宇宙船の造形や、ミン皇帝の宮殿、衣装などなどが無駄にお金がかかっているのに実にダサい。プロデューサーはディノ・デ・ラウレンティスなのだ。背景の空のサイケデリックな色彩演出も独特で趣味が悪い。にも関わらず、クィーンが曲を担当しているので、妙にモダンな雰囲気がある。まさにチグハグなSF大作でした。

 

「トリとロキタ」

辛い映画でした。ビザ発給という一点に絞ったシンプルな作劇が映画全体を非常に分厚いものにした感じで、作品のクオリティが実に高いのですが、商業映画として見た時に、胸が締め付けられるほど悲しいエンディングがほんとうに辛い、そんな映画だった。監督はジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

 

一人の少女ロキタがビザ発給にあたっての面接に答えている場面から映画は始まる。アフリカから地中海を渡ってベルギーにやって来たが、弟と称しているトリと偽りの姉弟として滞在していた。弟のトリはビザが発行され、普通に学校にも行っているがロキタには疑念があるからと発行されていなかった。したがって正規の仕事につけず、ドラッグの運び屋をして祖国の母への送金や渡航仲介人への支払いの金を作っていた。

 

この日も、レストランで歌を歌って小金を稼ぎ、オーナーでドラッグの販売人のべティムの指示でドラッグを運んで金を稼いでいた。べティムは、時々ロキタに性的な行為をさせたりもしていたが、ロキタは偽のビザを手に入れるために従っていた。しかし、ドラッグの運び屋だけでは思うように稼げず、べティムに紹介してもらった大麻栽培の倉庫の管理の仕事をあてがってもらう。しかし、三ヶ月閉じ込められてトリとも連絡が取れないロキタには厳しい仕事だった。

 

しっかり者のトリは、べティムがロキタのいる倉庫へ行く車に忍び込んで、ロキタの居所を突き止め、ダクトを使って中に入りロキタと会う。そして、大麻を盗んで金を作ることにする。何とか成功したトリとロキタだったが、SIMカードを見つけられたロキタはべティムにトリを待ち伏せされ捕まりそうになる。

 

反撃してべティムの気を失わせたトリとロキタは、倉庫を逃げ出すが、車をヒッチハイクしようとしたロキタはべティムの車と出会ってしまう。ロキタは逃げるが、銃で撃たれ殺されてしまう。隠れていたトリは助かったものの、ロキタの死体を見つける。ロキタの葬儀、トリがロキタの遺骸に歌を送って映画は終わる。

 

ビザ発行に是非についての問題点に焦点を絞ったシンプルな作りが秀逸で、見ている私たちに直球でメッセージが伝わってくる。ただ、物語はさすがに辛いものがあります。