くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「水は海に向かって流れる」「ゴダールの決別」

「水は海に向かって流れる」

煮え切らない映画でした。面白い話のはずなのに、個性的な脇役が全然映画に彩を加えてこないし、中心になる話に勢いがないので、全体がだらだら淡々と展開して、ラストはそれかというエンディングが勿体無い。さすがに広瀬すずの存在感は抜群で可愛いけれど、相手役の男の子に、そこまでの力がないように見えるのは演出が悪いのか脚本が悪いのか。當真あみが抜群の存在感で唯一生き生きしていた。画面作りは色彩を意識した演出がとっても綺麗でした。監督は前田哲。

 

サイケデリックな色彩で「シェルブールの雨傘」風に俯瞰で雨傘を捉える。駅に着いた直達は、叔父の家に下宿させてもらうためにやってきたがあいにくの雨。そこへ無愛想な顔立ちの榊千絵がやってくる。叔父の茂道は忙しくてこれないのだという。こうして映画は始まる。光を過剰に演出した美しい場面に惹かれるが、わざとらしさだけが目立つ。榊は直達を古民家風の豪邸に案内する。

 

榊は早速豪華な肉で牛丼を作ってくれ、高校生の直達は貪り食う。そこへここの住民の一人颯が出迎える。この家は叔父の住む一軒家ではなくシェアハウスだという。しかも、普通に勤め人だと思っていた叔父の茂道は漫画家なのだという。直達は十年前、茂道の家にしばらく住んでいて仲良くしてもらっていた。

 

戸惑う直達は、学校へ行く途中、捨て猫を見つける。飼い主を探そうとたまたま猫のアクセサリーをつけていた楓に声をかけると、彼女が快く飼い主探しに協力すると答える。しかし、帰り道猫を見に行った直達は女装している颯と出会う。猫がいじめられていたので助けたのだという。楓の同級生だと知った颯はすっかり直達と仲良くなる。颯は楓の兄で、女装して占いをしていたのだ。

 

家に連れ帰った猫に、榊は優しい言葉を呟く。それをじっと見る直達。まもなくして、榊の父の友人でこの家の住民でもある海外に行っていた成瀬が帰ってくる。その歓迎会の焼肉パーティーの席で、成瀬は榊と二人きりになった時に、直達が十年前榊の母とダブル不倫した相手熊沢の息子であることに困っていないか聞く。榊の母沙苗は、直達の父熊沢と不倫したが、熊沢は家族の元に戻ったが、沙苗はそれっきり家を出たのだという。それをたまたま直達と遊びにきていた楓が聞いてしまう。

 

直達は自分の父が不倫していたこと、その詳細を茂道に聞こうとするが榊に止められる。茂道も実はそのことは知らないのだ。直達が父に直接聞こうと実家へ向かった日、熊沢が茂道のシェアハウスにやってくる。出迎えた榊が千紗と呼ばれているのを聞いて、かつての不倫相手の娘だと知る。そんな熊沢に榊は盆を投げつけて怪我を負わせてしまう。一方、楓は何かにつけて直達に話しかけ、榊さんやら不倫のことの相談に乗るようになるが、実は楓は直達が好きだった。

 

直達は榊さんに、過去のことを尋ねたりするが、榊は自分は今後恋愛しないと決めたのだと話す。そんな榊に直達も、自分も恋愛しないと言うが、直達のことを思ってくれる女子がいるはずだからと一喝される。洗濯を干している榊のところに突然楓がやってきて、榊が直達に行ったことを謝って欲しいと言うが、自分の恋愛がうまくいかないのを人のせいにするなと一喝される。一方、熊沢は、榊が辛い思いをしているのが気になり、沙苗に電話しようと古い携帯を触っていて妻に見つかってしまう。

 

昼休み、楓と食事をする機会があった直達は楓から告白される。そのことを榊に話す。そんなある日、熊沢は沙苗の居場所を探偵社に頼み、その報告書を榊に送ってくる。直達は、父の行き過ぎた行動を謝るが、榊は母に会いにいくと言う。そして二人で沙苗の今の家に行くと、新しい家族ができていた。帰りにレストランで食事をしていた直達と榊の前に、沙苗の幸せそうな家族がたまたま入ってくる。いづらい榊はバス停に向かうがすでに最終バスがなく、仕方なく直達と旅館に泊まる。翌朝、海岸で物思いに耽る榊を見た直達は駆け寄るが、そこで二人はしばらく波遊びをする。

 

数日後、学校の教室にいた直達は校庭に茂道が来たのを認める。榊があの家を出るのだとスケッチブックで連絡してきたので、直達は慌てて教室を飛び出す。出ていく榊を見つけた直達は、榊に駆け寄る。そこへ雨が降ってくる。引っ越しの段ボールで雨よけをする榊に、直達は好きですと告白して、じっと見つめる榊のカットで暗転エンディング。

 

コミックが原作ということもあり、エピソードが詰め込まれた展開になっていて、今ひとつお話の整理ができていない脚本なのが残念。もうちょっと思い切った削除と、まとを絞ったストーリーで仕上げれば素敵で軽妙なコメディタッチのラブストーリーになったかもしれないが、直達役の大西利空が広瀬すずの相手には役不足で、當真あみが引き立っただけの存在で終わっている。しかも、茂道がなんとも適当な存在で、そのほかの脇役も個性的な面白さが全く生かされていない。無駄に美しい画面作りもなんのためかと思える演出で、チグハグこの上ない仕上がりの映画だった。とは言っても広瀬すずは抜群に可愛い。

 

ゴダールの決別」

相変わらず、全くストーリーのわからない映画でした。ゴダール作品の中で最も美しいらしいですが、そこも理解できない。確かに美しいショットはちらほら見られますが、それ以上にならない。創造主神と肉体について突き詰めたセリフと展開を描いているという解説はなんとなくわかるけれど、それ以上はついていけませんでした。監督はジャン=リュック・ゴダール

 

一人の男クリムトレマン湖のほとりの駅にやってきて、シモンとその妻ラシェルのいどころを探す。こうして映画は始まるが、そこから後は次々と出てくる人物や行動、台詞、その解説テロップに追いまくられていくので、なんのことか不明。どうやらシモンの肉体を神が借りたようで、ラシェルはシモンに抱かれたと思うが他人だったかのような錯覚に囚われる。そして、神=シモンによる肉体についての定義やらを延々と語り、それに応えながらも気を失うラシェル。美しいカットやシーンもないわけではないが、シュールに終始する展開にキツネに摘まれたようにエンディング?を迎えた。これぞゴダール。(笑)