くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ポトフ、美食家と料理人」「きっと、それは愛じゃない」

「ポトフ、美食家と料理人」

緑を基調にした落ち着いた色調と、ひたすら料理をする場面と食べる場面を繰り返すシンプルな展開、そこに不思議なほどに盛り込まれた熟年の男女の言葉にしづらい人間ドラマが静かに深々と心に迫ってくるとってもいい映画だった。監督はトラン・アン・ユン。

 

19世紀末、料理人のウージェニーが畑で野菜をとっている場面から映画は始まる。厨房に立つと使用人のヴィオレットがポーリーヌという少女を紹介して、料理の手伝いをさせるが、ポーリーヌは天性の料理の才能があるようだった。別の部屋では美食家のドダンが友人達四人とウージェニーの料理を食し始めていた。延々と描かれる料理シーンは圧巻というほかない。

 

ドダンが作るメニューを天才料理人ウージェニーが料理にしていくという噂がヨーロッパ中に広まり、ユーラシア皇太子がドダンらを晩餐会に招待する。ドダンはユーラシア皇太子の屋敷で8時間近くも続く晩餐会にうんざりして帰ってくる。ドダンはユーラシア皇太子を晩餐会に招待することにするが、そこで考えたメニューはフランスの一般家庭にあるとポトフだった。

 

そんな頃、ウージェニーが時々意識を無くすようになる。ドダンの友人の医師が診察するが、原因は特定できず、治るものか悪化するものかわからない。しかし、なんともない時はウージェニーは普通に料理をする。ポーリーヌの料理の才能を見抜いたウージェニーとドダンはポーリーヌの両親に、ポーリーヌを料理人として勉強させたいと提案する。

 

ドダンとウージェニーは一つ屋根の下で暮らしてお互い夫婦ではなかった。この日、ドダンが作った料理の中に指輪を忍ばせてウージェニーに出しプロポーズする。そして二人は友人たちに囲まれて結婚する。しかし、その後もウージェニーは突然意識を失うようになり、ある日とうとう亡くなってしまう。悲嘆に暮れたドダンは食事も食べられなくなり、友人達は次の料理人を連れて来ればいいかとリストを出すもドダンは受け入れない。ドダンはポーリーヌを呼び、一緒に様々な料理を作り教えていく。一方、料理人を新たに雇うべく面談するが見つからない。

 

ある日、ポーリーヌと食事をしていたドダンのところに一人の友人がある料理を届ける。さっきたまたま食べた食事が素晴らしく、料理を食べてもらおうと持ってきたのだという。ドダンがその料理を食べ、見所があると判断してその料理人に会いにいくことにし家を出る。当然ポーリーヌも連れていく。カメラがゆっくりと室内を捉える。料理途中の鍋がかかっていて、ウージェニーの声が被ってくる。そしてもう一周カメラが回ると鍋はなくなり、ドダンとウージェニーが話をしている。ウージェニーが、「私は妻?それとも料理人?」と尋ね、「君は料理人だ」とドダンが答えて映画は終わる。

 

料理を作る慌ただしさ以外は淡々と静かに展開するドラマが非常に秀逸で、作品が高級感が漂うのを感じてしまういい映画でした。

 

「きっと、それは愛じゃない」

表現したい意図は見えてくる演出なのですが、今一つチグハグな上に中途半端に次の展開に進んでいくので、雑な仕上がりに見える映画だった。主人公ゾーイの心模様もくっきり見えないし、カズの苦悩も今一つ胸に迫らない上に、相手役のマイムーナの個性が表面的すぎて映画が面白くなってこないのが残念。駄作ではないもの、妙に古さを感じてしまいました。監督はシェカール・カプール

 

パキスタン人のカズが母親から見合いを勧められている。隣に住む幼馴染のゾーイはドキュメンタリー作家で、賞もとっている実力派である。自身も母から結婚について問い詰められ、今どき見合いもありだと諭される。カズが見合いをすることを知ったゾーイは、結婚に至る流れをドキュメンタリーに撮りたいと言い出す。カズはオンラインでパキスタンの女性マイムーナと見合いをし結婚へと流れていく。

 

ゾーイはカズに同行してパキスタンに行き、あれよあれよと婚約の儀式が進んで結婚の儀式へ流れる様をカメラに収めていく。そして結婚前夜にパーティに参加したゾーイは、それまでしとやかに両親の勧めるままに振る舞っていたマイムーナが豹変するように踊りまくり、ドラッグに触れ、さらに元彼らしい男と親しくする現場を目の当たりにしてしまう。

 

ゾーイは、ホテルに戻って、結婚しないでとカズにメッセージを送りかけ、いつの間にかカズへの愛を自覚し始めた自分に気がつきメッセージを削除する。そしてカズとマイムーナの結婚の儀式は無事終わり、カズたちもロンドンにやってくる。ゾーイのドキュメンタリーも完成して披露試写会が開かれ、関係者が集まって上映が始まるが、ラストシーン、マイムーナの妹で両親の反対を押し切って好きな男性と結婚して勘当されたジャスミンの言葉で幕を閉じたために、カズを含め関係者のブーイングを受けてしまう。

 

ところが、マイムーナは今も元カレが忘れられず、カズとの寝室で、元彼からのメールをカズに見せ、離婚を決意する。この日、マイムーナの実家では親戚一同が集う祝祭のパーティが開かれる。カズは一人で訪れ、ゾーイ達もやってくるが、カズはジャスミン夫妻と二人の赤ん坊も招待していた。ジャスミン達を見たマイムーナの両親も昔気質の祖母もジャスミンをあっさり受け入れ、自分たちが何か間違っていたと反省する。ゾーイは、かつてカズと遊んだツリーハウスに行きカズを待つ。カズがやってきて、お互いの気持ちを確かめ、結婚する流れになって口づけをしてエンディング。

 

現代的なテーマを描いているようだが、物語は一昔前の流れになっているのはなんとも言えない作品ですが、こういうラブストーリーが最近減っているので、これもありかなと思いました。