くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マエストロ その音楽と愛と」

「マエストロ その音楽と愛と」

Netflix配信映画ですが、ゴールデングローブ賞ノミネートしたので見にいきました。レナード・バーンスタインと愛妻フェリシアとの出会い、音楽家としての成功までがジャンプカットを多用したテンポの良い映像作りで駆け抜け、次第に人間ドラマに移り変わってからの丁寧な展開はなかなかのクオリティの仕上がりだったと思います。自宅の寝室からカーネギーホールへ、女性の顔から男性の顔へなど絵作りを駆使した演出が見事。モノクローム映像を中心に、現代をカラーワイドで描くのは今更珍しくもないけれど、画面中央に配した人物のカットでインパクトを作ったのは上手い。いい映画でした。監督はブラッドリー・クーパー

 

老齢となったレナード・バーンスタインがピアノの前でインタビューを受けている場面から映画が始まる。そしてフェリシアを亡くしたことが寂しいという一言から、場面はモノクロスタンダードに変わり、彼の寝室、窓のカーテンの隙間から光が四角に漏れていて電話に出ている。そしてカーテンを開け、テンポ良い音楽と共にドアを外に出るとカーネギーホールでの初指揮の成功の場面へ飛ぶ。

 

友人のホームパーティでフェリシアという女性と知り合ったレナードはすぐに惹かれ合い、やがて結婚、子供が生まれる。レナードの仕事は順調に進み、フェリシアの女優業も順風満帆だが、いつのまにか二人の間に溝ができ始める。レナードの行動に伴うものかもしれないが、フェリシアのレナードへの嫉妬か、その微妙な色合いで淡々と物語は進み、子供達も大人になっていく。しかし、それぞれが絶頂を迎えんとしたとき、フェリシアに乳癌が見つかり、やがて亡くなる。

 

レナードは晩年、後進を指導しながら余生を送り、冒頭のインタビューのシーンに移っていく。フェリシアは若き日にレナードに言った、夏の音が聞こえなければ終わり だというのを繰り返して映画は終わっていく。

 

前半のハイテンポな流れから中盤以降の淡々とした時の流れを描く展開になると、若干間延び感が見えてくるのはちょっと勿体無いが、レナード・バーンスタインの名曲をさりげなく挿入してみたり、彼の人柄を描写する演出は良かった。難をいうと、フェリシアとレナードの関係性がもう少し深みを持たせてくれれば傑作だったかもしれない。