くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「コット、はじまりの夏」「ブレイキング・ニュース」「エグザイル/絆」

「コット、はじまりの夏」

落ち着いた良質のいい作品でした。荒い画面が終盤につれてシャープな映像に変化して行くさりげない演出が、主人公の少女の心の変化を見事に表すとともに、子供を亡くした夫婦の希望が見えて来るラストがとっても美しく切ない。エンディングの後の余韻も胸に迫るものがあり、クオリティの高いなかなかの秀作でした。監督はコルム・バレード。

 

草原の画面、コットを呼ぶ女性の声が繰り返され、草むらに寝転ぶ主人公コットの姿から映画は幕を開ける。家に戻って部屋に行くと、おねしょしたのかマットレスが濡れていて、ベッドの下に隠れるが母親が来て連れ出される。ほとんど話さず、学校でものけものにされているコットは姉たちからも疎まれ、ギャンブル好きの父ダンも邪魔にしていた。母のメアリーは妊娠している。夏休みが来て、コットを持て余したダンたちは、しばらく叔母のアイリンの家に預けることにする。

 

ダンに送ってもらってアイリンとその夫ショーンのところにきたコットだが、無愛想に帰ってしまうダンを見送った後、コットはいつものように黙ってしまう。アイリンはコットに、お下がりの服を着せ、近くの井戸に水を汲みに行ったり料理を手伝わせながら心を通わせようとする。翌朝、おねしょをしたコットにアイリンは、濡れたマットを出してしまったと言ってコットを責めなかった。次第に心がほぐれて行くコットだが、無口のショーンには困っていた。しかしある朝、ショーンはさりげなくコットにお菓子を与える。

 

近所に住むアイリンの友人の父が病気で寝込み、その手伝いにアイリンが行ったので、コットはショーンと二人で牛舎で仕事をするようになる。やがて、ショーンはコットに、牛舎から牧場の入り口まで走らせて、郵便を取って来させるようになる。ショーンはアイリンが息子の服をコットに着せるのは良くないと、街までコットの服を買いに行かせる。そんな頃、近所の友人の父が亡くなり、その葬儀の帰り、コットは隣人から、ショーンとアイリンの息子が肥溜めに落ちて死んだことを聞かされる。

 

やがて、夏休みも終わり、コットが帰る日が近づく。その日、ダンがたまたま近所の牛の出産を手伝いに行き、アイリンは急遽牛舎を掃除しなければいけなくなる。一人待っていたコットだが、アイリンが忙しそうにしていたので、一人水を汲みに行く。アイリンがコットがいないのに気づいて水汲み場の方に行くとびしょ濡れのコットを見つける。

 

アイリンらは、コットが自宅に帰るのを少し遅らせた後、ショーンとアイリンはコットを自宅に送り届ける。くしゃみをするコットに、ダンがショーンらに問い詰めるが、ショーンたちは答えずに車に乗る。それを見ていたコットは車を追いかけ、牧場の出口で追いつき、ショーンが出てきてコットを抱き上げる。ダンがやって来る姿を見たコットはショーンに「パパ」と言って映画は終わる。

 

静かに淡々と進む作品ですが、主人公や、子供を亡くした夫婦、それぞれの成長の物語がしっかりと描き込まれていて、なかなかの良い作品でした。

 

「ブレイキング・ニュース」

冒頭の7分間のワンシーンワンカット長回しから一気に銃撃戦に雪崩れ込んで、あとは巨大団地内での所狭しという銃撃戦の連続。途中、お決まりのコミカルシーンも挟み込んで、これぞエンタメ!を貫いて行く勢いある演出がとにかく楽しい。決して、一級品とかいう肩肘張った映画ではないけれども、のめり込んでしまう面白さに酔いしれました。監督はジョニー・トー

 

一人の長髪の男が歩いて来るのをカメラが捉え、男はある建物に入り、建物の外からカメラが別の男に会うのを捉えて、ゆっくり路上に戻ると、ユアンら強盗団を捜査するために張り込んでいるチョン警部補の車へと移る。チョンの車の前に一台の車が逆走で入ってきたのを、二人の巡査が職務質問していると、傍の老人が突然喧嘩を始め、そこに巡査の注意がそれたが、一人が車の中のカバンに目をつける。

 

突然、ビルからユアンらが飛び出してきてチョンらと銃撃戦が始まる。延々と銃撃戦が繰り返され、駆けつけた警官らも巻き込んだ銃撃戦の中、一人の警官が犯人らに銃を向けられ手を上げてしまい、たまたま交通事故の取材に来ていた記者のカメラに収まる。犯人らは救急車を乗っ取って逃走してしまい、警察の失態が世間の非難の的になる。

 

警察の威信を回復するため、若き警視レベッカは、犯人逮捕劇をワイヤレスカメラをつけてテレビに流そうと提案、そんな頃、とある巨大団地に犯人が逃げ込んだと推測したチョンらは、団地の中に突入する。レベッカらもこの団地にターゲットを絞り、各班のリーダーにカメラをつけさせて突入する。

 

ユアンら犯人は、ある家族のところに立て篭もるが、この団地に二人の殺し屋も隠れていた。ユアンら四人の強盗団と二人の殺し屋はある部屋に立て籠もる。レベッカらは、特殊班を突入させ、強盗団らとチョン、特殊班らの銃撃戦が、狭い団地の廊下を中心に展開。住民を避難させたが、全てを避難しきれず、立てこもった部屋にチョンらも迫って行く。

 

ユアンらは食事をしようと思い、殺し屋らとご飯を作り、人質と一緒に食事をするところをネットにアップしたので、レベッカらも負けじと弁当を捜査員に配る。ふざけてるというほかない展開である。そして再び銃撃戦が始まり、ユアンらは特殊部隊の突入に対抗して、住民に手榴弾を結びつけて毛布で覆って囮を作る。

 

その間にユアンらは脱出するが、チョンらとの銃撃の中、ユアンと殺し屋の一人だけが生き残りでエレベーターから脱出する。その際、殺し屋は自ら犠牲になってユアンを逃す。ユアンらの作戦を見破ったレベッカは、殺された犯人が持っていた携帯からユアンを見つけ出すが、ユアンは逆にレベッカを人質にしてバスで逃走する。そのバスをチョンが追って行く。そしてユアンを追い詰める。ユアンレベッカをヒーローにしてやると自ら銃を撃って警官らに撃ち殺される。レベッカユアンはヒーローになって映画は終わる。

 

あれよあれよと銃撃戦が繰り返される映画で、なんの中身も何もないのだが、ジョニー・トーらしい徹底的なアクションシーンの連続で退屈することがない。彼の作品の中では中の下くらいの仕上がりだが、面白かった。

 

「エグザイル 絆」

典型的な香港フィルムノワールで、男同士の友情を派手な銃撃戦と浪花節的な展開、男のロマンを見せつけるラストシーン、そして様式美を徹底した絵作りを楽しめる一本でした。監督はジョニー・トー

 

一軒の家に二人の男がやって来る。出てきた女に「ウーはいるか」と尋ね、いないと聞いてその場をさる。しばらくするとまた二人の男が現れ「ウーはいるか」と尋ねるが女はいないと答えるので、その場をさる。ウーはフェイの暗殺に失敗し追われる身だった。四人のうち

タイとキャットはウーを守るために、ブレイズとファットはウーという男を殺しにきたらしく、近くで待ち伏せしていると軽トラに乗ってウーが帰って来る。

 

四人を部屋に引き入れ、それぞれ銃を出して撃ち合うが、突然赤ん坊の声が聞こえる。ウーの妻ジンは一ヶ月前に子供を産んだばかりで、お乳をやるという。そこで四人は一旦休戦して引っ越しの手伝いやら何やらして五人とジン、子供らは記念写真を撮る。五人は元々仲間だった。

 

ウーは死ぬ前に妻に金を残したいと言ったため、ジェフのホテルにやってきた五人は、輸送車から金塊を盗むという仕事を提案されるが、その場に来たカッチョンからフェイと敵対しているキョンを殺す仕事の方がすぐに報酬を得られるとそちらを受ける。待ち合わせのホテルに来たキョンだが、フェイと提携する気はないと豪語し、銃撃戦が始まる。ウーはフェイの下腹部を撃ち、ウーも負傷したのでブレイズらは闇医者のところへ行く。ところはが治療していると、フェイらもやってきたため、また撃ち合いが始まる。

 

五人は逃走するが、車の中でウーは死んでしまう。自宅に連れ帰ったブレイズらはウーをジンに引き渡すが、ジンは銃でブレイズらを追い払い、四人は車で逃げ出す。ジンは自宅を燃やして赤ん坊と家を出る。四人はとりあえず遠くへ逃げるが、気がつくと観音山まで来ていた。そこへ金塊の輸送車が現れ、ブレイズらは強奪するか躊躇っていると、別の強盗が現れ輸送車が襲われる。警護隊の一人チェンが孤軍奮闘して、ブレイズらも彼に加勢して強盗団を倒し金塊を手に入れる。ブレイズらは今更帰れないというチェンも仲間に入れる。

 

ジンは四人を探しにジェフのホテルにやって来るが、ジェフはフェイに密告しジンは拉致される。フェイはブレイズらを誘き寄せるために電話をする。ブレイズらは、チェンを船に残して四人でジェフのホテルに行き、金塊を見せて取引を迫り、ジンと赤ん坊を逃した後、フェイらと銃撃戦を展開、それぞれが皆死んでしまう。ホテルにいた娼婦が散らばった金塊を手にしてその場をさって映画は終わって行く。

 

まさに香港フィルムノワールで、カッコ良すぎる展開に惚れぼれするが、ストーリー展開はその場限りの付け足し感満載で、それがまた面白い。クライマックスで空き缶を蹴りながら繋いで行ったり、定年前の警官が通りかかるだけで、何の参加もしなかったり、派手な銃撃戦と男同士の友情が交錯する様はまさにジョニー・トー感満載の一本でした。