「ソウルメイト」
オリジナル版も良かったが、これはこれでめちゃくちゃ良かった。今回、設定は一部変更してますが展開やセリフの隅々までほとんど同じですが、ラストはわかっているとはいえ泣いてしまいました。監督はミン・ヨングン。
精密画を描く手のアップから、その絵が保管されている地下のギャラリーへミソという女性が案内されるところから映画は幕を開ける。ギャラリーの学芸員が見せたのは巨大なミソの若き日の顔の大作だった。学芸員は作者であるハウンに連絡を取りたいので居場所を聞くがミソはわからないと答える。しかし学芸員はハウンがアップしているBLOGを示して、ミソが連絡をとっているのではないかと尋ねる。ミソはハウンと出会った日を思い出す。
済州島、小学生のハウンは授業中も先生の絵をノートに書くほど絵が好きな少女だった。ある日、ソウルからミソという少女が転向してくる。ミソはハウンの隣の席を指定されるが、座った途端学校を飛び出してしまう。ハウンはミソの鞄を持って後を追いかけ、高台に登っているミソを発見、高いところが苦手なハウンに、目を細めて登っておいでとアドバイスする。こうして二人は仲良くなり、ミソは時々ハウンの家にも遊びに来るようになる。ミソもまた絵を描くのだがかなり個性的だった。
高校生になった頃、ミソの母がミソを置いてソウルに帰ることになり、ミソはコテージのような家でバイトをしながら済州島で暮らすようになる。ミソはバイクに乗ってハウンを誘って遊ぶようになるが、ハウンがバスケットボールをしているジヌに恋心を抱いていると知り、あらかじめジヌに会ってハウンに興味を持つように頼んでやる。やがてハウンとジヌは付き合うようになる。ある時、ライブハウスにやって来た二人はそこでバイトをしているミソと出会う。そして三人であちこちに遊びにいくようになる。
大学受験が迫った日、森の奥の洞窟の祠に合格祈願に三人で出かけるが、ハウンは靴擦れを起こしてしまう。ジヌとミソが二人で祠へ行くが、そこでジヌは、いつも首にかけている御守りのペンダントの説明をする。そしてついミソと口付けをしてしまう。まもなくしてミソは絵の勉強をしたいとソウルへ旅立つことになるが、その見送りの港でハウンはミソがジヌのペンダントをしているのを見つけてしまう。ミソは、ソウルではバイトを掛け持ちしながら貧しい生活の中絵を描き、ハウンには、楽しく暮らしていると嘘の手紙を送る。
しばらくして済州島にやってきたミソはハウンと楽しく過ごす、旅行に出かける。しかし生活が苦しく、世渡りの術で人と接するミソに対し、ハウンはラブホテルに泊まろうとするのを普通のホテルに誘い、外で食事しようとするのをホテルの高級レストランに誘う。たまたまミソのカバンを見たハウンはそこにジヌのペンダントを発見し、ついミソにそっけない態度をとり喧嘩別れしてしまう。
ハウンはあれから教師になるべく教育大学へ行き、ジヌは医者になるべくソウルに旅立つ。時が経ち、ジヌはソウルでミソに再会する。ミソは投資会社の社長を恋人にして、安定した生活をしていた。ところが、再会したジヌと話している最中、ミソの恋人は首を攣って自殺してしまう。それから行き場のなくなったミソはジヌの部屋で暮らすようになるが、ある夜、酔っ払ったミソを介抱して戻ってきたジヌは遊びに来たハウンと鉢合わせてしまう。ハウンはミソを責め、二人はジヌの元から去っていく。
反省したジヌは済州島へ戻りハウンにプロポーズする。そして結婚式になるが、ハウンが教師を辞めて絵を描きたいというのに否定的な返事をしたジヌのことが引っ掛かり、式の後ハウンは式場から姿を消す。時が経ち、ソウルで仕事をしているミソのところにハウンがやって来る。一方、ジヌは医師になりソウルで働いていたが、たまたまハウンのBLOGを見つけ、連絡先を辿ってギャラリーで聞いてミソと再会する。ジヌはミソに、ハウンの行先を聞くが、そこにハウンからの電話がミソに入る。ところがそれはミソの娘の名前だった。ミソが面倒を見ているのはハウンとジヌの娘で、娘の名がハウンだった。
ミソはハウンの娘を世話するようになった経緯をジヌに話し始める。ソウルのミソの会いに来たハウンは妊娠していた。間も無くして女の子を産むが、ミソが病院へ見舞いに行くと置き手紙を残してハウンがいなくなっていたのだという。ハウンは自由を求めて娘を残して旅立ったのだとミソはジヌに打ち明ける。ハウンは、望んでいない教師を捨て好きな絵の道へ進んだのだった。事情を聞いたジヌはミソと別れる。
一人になったミソは、本当のことを回想する。ハウンが出産してしばらく後にお見舞いに行ったミソは、ハウンの容態が急変し大量出血して亡くなったことを知る。ミソはハウンの娘を引き取ることになるが、ミソの年齢は27歳だった。学生時代、ミソは27歳まで生きることに決めたとハウンに話していた。ミソはそれまで事故がないようにジヌに御守りのペンダントを借りたのだった。
ミソはハウンがソウルで一人暮らしていた部屋を訪れる。そこはかつてミソが暮らしていた部屋だった。その部屋にはたくさんの二人の思い出があり、ミソを描いた精密画が残されていた。ミソはその続きを完成させ、ハウンになり変わってギャラリーに送り、ギャラリーとの契約は遠慮する旨を伝える。元気だった頃のハウンは、夢だったバイカル湖へも赴き、一人氷原を歩く姿で映画は幕を閉じる。
若干の設定の変更はあるのですが、おおむねの展開は同じなので、どんどん引き込まれて、終盤の真実が見えて来ると涙が止まりません。オリジナルに負けない出来栄えだと思いました。
「ゴースト・トロピック」
16ミリフィルムの柔らかい映像で描く一夜の何気ない物語で、これという劇的なものもなく淡々と普通の時間が映し出されていくのは、先日見た「Here」と同じ監督だからでしょうか。シュールというわけではなく、映像詩という感じです。細かくインサートカットが繰り返されたり、長回ししたりしながら流れていき、それほど長くない作品なので最後まで見れた一本です。監督はバス・ドゥボス。
居間を捉えるカメラ、次第に黄昏ていき、ナレーションが被りながらやがて暗闇になる。灯が入ると、ビルの清掃をする人たちが集まって談笑している場面に繋がり、主人公の女性ハディージャが仕事を始める。仕事を終えて帰路に着く彼女は、列車に乗っていてやがて居眠りしてしまう。そして終点まで行ってしまい、娘に連絡をするが電話に出ない。
仕方なく、お金を下ろしてなんとか帰ろうとするが、やっと見つけたATMで操作すると残高不足と出る。そこの警備員に教えられた深夜バスに乗るが、急遽運休になってしまう。仕方なく夜の道を歩き出すハディージャは、路上で倒れている浮浪者を発見、近くに犬もいた。救急車を呼んでやり、犬はその場につないで浮浪者は搬送される。
コンビニに入りコーヒーを飲んで、そこの店員の女性の車で送ってもらうが、途中、友達と遊んでいる娘を発見して、車を降りて様子を見る。その後、帰路に着くが、途中で救急病院の前を通り、さっきの浮浪者がどうなったか聞くために入ると亡くなったという。繋がれていた犬は紐が解けて何処かへ走り去る。
なんとか家に着いたハディージャはベッドに横になり、しばらくして起き上がって服装を整えて出ていく。娘は明るいビーチで友達と戯れている。冒頭の居間に次第に灯が差してきて映画は終わる。エンドクレジットは、虫食い状のクレジットが埋まって行ってエンディング。
淡々と紡ぐ作品で、映し出される柔らかい映像を感じていくだけの一本ですが、こういう描き方もありという作品でした。