くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「過去のない男」

過去のない男

淡々と展開する渇いたコメディという感じの一本で、例によって軽快な音楽センスと冷めたユーモアの数々がニンマリさせてくれて楽しい作品でした。監督はアキ・カウリスマキ

 

列車の中、一人の男が乗っている。目的地に着いたがまだ夜明け前の深夜で、公園で居眠りをしてしまう。そこに暴漢が現れ、男を殴り倒し、金を奪い、財布を捨て、カバンから溶接の仮面を男に被せてその場を去ってしまう。病院に担ぎ込まれるが、顔中包帯で瀕死の状態。間もなく心肺が止まってしまい医師は死を宣告して部屋を出る。ところが直後、男は起き上がり、体に繋いでいる線をとって外に出るがしばらくして河岸に倒れる。その男を子供らが発見し、トレーラーハウスに住む夫婦に知らせる。夫婦は男を介抱し、やがて男は元気になるがが記憶が無くなっていた。

 

施しのご飯を食べ、この地の警備員の男にトレーラーハウスの空き部屋を紹介してもらう。福祉局のイルマに勧められて服を手に入れ、仕事をしようとするが、名前もない中では見つからない。そんな男はイルマと付き合うようになる。男はこの地で福祉局の仕事を手伝い、救援団のバンドに庶民的な音楽をした方が良いと企画しながら生活する。

 

ある日、溶接の仕事を見ていてかすかに自分の記憶が戻り、その溶接を手伝ったことで仕事をもらえることになる。給与が振り込みだから銀行で口座を開いて欲しいと言われ、地元の小さな銀行へ行くが、そこへ強盗が入る。強盗は自分の経営している会社の金を奪い男と銀行員を金庫に閉じ込めて逃走する。銀行員の機転で、スプリンクラーを作動させて二人は脱出するが、男は警察に捕まる。そして名前もない中拘束するしかないと留置所に入れられる。

 

男はイルマに連絡し、イルマは福祉局から弁護士を派遣してもらう。そして無事釈放されたが、後をつけてきたと言って強盗が声をかける。そして、自分は溶接の会社をしていたが、解散するので従業員に金を配って欲しいという。男は引き受けるが直後強盗は自殺する。しかし、強盗と思われた男の顔写真が新聞に載り、妻から連絡が来る。

 

男は列車に乗り、妻の待つ家に行くが、妻は、男はいつも博打ばかりで夫婦喧嘩が絶えず離婚することになったと言う。そして新しい恋人と一緒に暮らしていた。男はその恋人に妻を託し、再び列車に乗る。そこで寿司を食べて日本酒を飲む。そして戻ってくる。ところが列車を降りたところで自分を襲った暴漢が別の男を痛めつけている現場に出くわす。男は木切れを持って応戦しようとすると、あちこちから浮浪者らしい仲間が現れ暴漢を追い詰めていく。その中に警備員もいた。警備員は親睦会の最中だからと男に伝える。男が親睦会の会場に行くとイルマが待っていた。男はイルマと手に手をとって踏切を渡り去っていく場面で映画は終わる。

 

とにかく、至る所にニヤッとさせるセリフや、テンポいい音楽を挿入し、なぜか日本食が出てきたり日本の歌が流れたりと遊び心にも溢れているユニークさがクセになります。カウリスマキ色満載の一本でした。