くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゴーストバスターズ フローズン・サマー」「オッペンハイマー」

ゴーストバスターズ フローズン・サマー」

理屈づけがやたらくどい上にストーリー展開にキレがないのとダラダラ感が否めず、結局ひねくれた少女が引き起こした人類の危機を自らの知識で退治することになるという雑な話になっていた。そこに昔からのメインキャストを登場させざるを得ず、どんどんくどさが広がってきて、ヒーロー達の登場にもワクワク感がないし、悪役の恐ろしさも今ひとつユニークさに欠ける。全体にそろそろネタ切れ限界という仕上がりの娯楽映画でした。監督はギル・キーナン。

 

20世紀初頭、消防士達が火事の通報か何かで駆けつけると、部屋の中は凍りついていて、傍に金属の球を握った何者かが座っている場面から映画は幕を開ける。そして現代、ゴーストバスターズはニューヨークに現れた竜のようなゴーストを追いかけている。なんとか退治したものの町中破壊してしまって市長からは大目玉を喰らう上に、未成年のフィービーは今後参加することは御法度と言われる。フィービーはその処置に不満を持つものの両親はそのまま受け入れたのでフィービーと両親に溝ができる。

 

フィービーは公園でチェス盤を広げていると、火事で亡くなった同年代の少女の幽霊メロディと出くわし親しくなる。そんな頃、レイモンドの骨董店にナディームという男が金属の球体のようなものを持ち込んでくる。霊的な計測をするととんでもないものと分かり、レイモンドはそれを預かるが、この球体は、かつて世界を凍らせてしまう悪霊ガラッカを封じ込めたものだとわかる。そして、その封じ込めたのがファイヤーマスターだった。実はナディームはファイヤーマスターの末裔だった。

 

ガラッカは封印を解いてこの世にもう一度現れるべく、呪文を人間に呟かせる必要があり、メロディを使ってフィービーに近づいていたのだ。ゴーストバスターズが捕獲したポゼッサーという悪戯幽霊がそのに呪文を盗み出してしまう。フィービーは孤独の中、メロディに近づくべく二分間だけ幽体離脱できる装置に入るがそれは全てガラッカの作戦だった。

 

そして呪文をフィービーは呟いてしまい、ガラッカが鉄の球体から解放され、街を凍らせてしまう。ゴーストバスターズは、初代メンバーらも集まってガラッカに対抗するが歯が立たない。しかしフィービーが考えた真鍮を組み入れた銃をガラッカに向け、さらにナディームの力も覚醒して、ガラッカは破壊されてしまい大団円、ゴーストバスターズは市民達に歓声を受けて映画は終わる。

 

とにかく、そろそろネタ切れ感満載で、話がまとまっていないし、様々なエピソードをこれでもかと並べる作りになってきたので、このシリーズも限界かなと思う。まあ気楽に見れるからこれも良いかもしれません。

 

オッペンハイマー

全編息を呑むほどの緊張感に包まれ、目まぐるしいほどに細かいカットの連続と、三層に分かれたストーリー展開が交錯していく作劇にさすがにぐったり疲れてしまった。オッペンハイマーマンハッタン計画に参加するまでの前半、マンハッタン計画の成功までの中盤、そして政治的に貶められていく後半という三つの展開はシンプルなのですが、いかんせん登場人物と時間軸のシーンが次々と入れ替わり立ち替わり画面に関わって来るので、細かい部分にこだわっていられなくなる。それでも、原爆が完成してトリニティ実験が成功するところから日本に原爆投下されたという連絡が入るあたりは涙が止まらなかった。手放しで傑作だという感想は書けない作品ですが、アカデミー賞を山にように取るほどの力はなかった気がします。監督はクリストファー・ノーラン

 

どこから話が始まるものかはっきりと書き出せないのですが、オッペンハイマー博士が小さな部屋で国家反逆の疑いで審問されている場面に続いて自身の過去や発言を証言している場面で映画は幕を開ける。ここまでをFISSION(核分裂)としている。そして、戦後、米国務長官の任命に際する公聴会で、ストローズがオッペンハイマーとどう関わっていたかヒヤリングされているモノクロ映像が続き、これはFUSION(核融合)と表現される。

 

若き日のオッペンハイマーは、量子理論を唱え、当時の最高物理学者ハイゼンベルグやボーア達から学び、量子力学の第一人者になっていく。この時期、友人ラービ博士にも出会う。

 

ストローズは1947年、オッペンハイマーをAEC顧問に任命する。オッペンハイマーはかつて自身にかけられた嫌疑について言及するがオッペンハイマーの実力を高く評価しているからと任命した。実はストローズはオッペンハイマーと初めて会った際、アインシュタインオッペンハイマーは池のそばで言葉を交わしたのだが、何を言ったのかが気がかりだった。

 

オッペンハイマーは大学で量子力学の講義を進めるが、ドイツの科学者がウラニウム核分裂に成功、ドイツがポーランドに侵攻を開始したと知り、核爆弾の開発が急がれると感じ始める。一方、オッペンハイマーの弟フランクは共産党員になり、さらに学生時代の恋人ジーンや妻キティも共産党員だったことからオッペンハイマーは政府から疑念を抱かれ始めた。

 

1959年、公聴会でストローズはオッペンハイマー共産党との関わりの嫌疑はあったもののAEC顧問に任命したのは彼の優秀さ故だと説明する。ただ、ストローズがアイソトープノルウェー輸出の是非についてオッペンハイマーにからかわれたことは根に持っていた。

 

キティは育児に不向きで、頻繁にオッペンハイマーは非難され、子供をシュバリエ夫妻に預けることもしばしばになっていく。しかし、そんなオッペンハイマーだが、周囲からは国のための仕事に頑張るように応援される。

 

1942年、グローヴス大佐に原爆開発の「マンハッタン計画」の責任者に任命され、ロス・アラモスの砂漠地に研究のための街を作りアメリカ中から研究者を家族ごと集めていく。

 

1943年、テラー博士が核の連鎖反応の理論を発見、これが起こると一回の核爆発で大気中に連鎖反応が起こり世界が破滅すると説明する。テラー博士こそのちの水爆の父と言われた人だった。オッペンハイマーアインシュタインに確認を依頼するが断られ、もしこの理論が正しいならナチスと情報共有し人類滅亡を防ぐように言われるが、結局、理論はニアゼロだと判明する。

 

オッペンハイマーはシャバリエから、アメリカ政府がロシアに情報提供していないことを共産党員で優秀な科学者エルテントンが嘆いていることと、彼を通じればロシアに情報提供できると持ち掛けられるが、それは国家反逆罪だと断る。

 

1959年公開審問で科学者の意見を聞くべきという方針にストローズは不満をあらわにする。さらにオッペンハイマーを慕う科学者から不利な証言がされることを懸念する。

 

オッペンハイマーはロス・アラモスでの研究が進み、化学爆発から物理爆発で一千倍ほど威力がアップするのでキロトンという単位が考案され、大きなプルトニウム爆弾と小さなウラニウム爆弾を作る方針に決まる。テラーは原爆より強力な水爆開発を提案するがオッペンハイマーは却下する。

 

1949年、ロシアが原爆実験に成功し、ストローズは水爆開発が必要だと大統領に主張、またロス・アラモスにロシアのスパイがいたのではないかと疑う。

 

ロス・アラモスは規模がますます大きくなり情報統制も難しくなってくる。ストローズがロス・アラモスと敵対していると考えているシカゴ派のフェルミとシラードともオッペンハイマーは情報共有していた。クローヴスから守秘義務について責められたもののオッペンハイマーはグローヴスを説得して黙らせることもあった。

 

ロス・アラモスでは身辺調査も混迷し始め、ロマンティスが立件されてロス・アラモスから退去させられる事件なども起こる。グローヴスは表向きは厳しいものの原爆開発を急ぐあまり研究者の規則違反は黙認している状態だった。

 

この頃、オッペンハイマージーンとも面会し、彼女がまだ自分を愛しているゆえに会ったのだと聴聞会では答える。キティはオッペンハイマージーンが裸で抱き合う妄想を見てしまい、聴聞会で私生活を暴かれることに限界を感じ始める。

 

ボーア博士がロス・アラモスを訪問、彼は核兵器を持つことは人類にはまだ早すぎると警告する。サンフランシスコではジーンが浴槽で不審死してしまう。オッペンハイマーはこの事件で狼狽するがキティが支える。テラーは相変わらず水爆にこだわるためオッペンハイマーはテラーを原爆開発チームから外し独自に開発に専念するようになる。

 

1949年、ロシアの原爆実験を知って水爆開発を進めようとするAECにオッペンハイマーは、まだ時期尚早であり、世界で協力して核技術を共有すべきだと主張する。しかし現大統領トルーマンとストローズに反発される。この頃、AECに加入したボーデンが、軍人時代にナチスのH2ロケットを目撃したことを聞かされ、核爆弾が搭載される未来を想像する。

 

1945年、ドイツが降伏、ロス・アラモスでは原爆開発に疑問の声が上がるが、オッペンハイマーはまだ日本が残っていること、自分たちはあくまで研究者で核の恐ろしさを見せつけることで核技術共有構想に繋げたいと説得する。そしてトリニティ実験を7月に設定、土地勘のある弟フランクを仕事に就かせる。原爆投下の決定会議でも戦争を早く終わらせるためという大義名分で原爆投下が決定する。

 

そして三年の月日と20億ドルという巨費を投じて原爆はついに完成、トリニティ実験と称された実験が行われる。そして実験は成功し、原子爆弾は米軍に移管しグローヴスもロス・アラモスを去る。広島と長崎に原爆投下するために爆弾が搬出されていった。

 

まもなくして原爆投下の連絡の後、ロスアラモスに集まった家族の前でオッペンハイマーは、大成功を祝う演説をするが、彼の背後は地鳴りの如く揺れ、足元では炭のようになった人間を踏み、悲しみに暮れる人々の姿が歓声の中に見え隠れしてしまう。

 

マンハッタン計画の成功とと共に原爆の父として時の人となったオッペンハイマートルーマン大統領と面会するが、「手に血がついた気持ちです」というオッペンハイマートルーマンは「恨まれるのは開発者ではなく投下した私だ」と答える。

 

1959年、政治家のストローズは、オッペンハイマーが立場を利用して政府を誘導したのではないかなどと考え、オッペンハイマーの行動について回想する。

 

1945年、オッペンハイマーはロス・アラモス所長の退任式で「この施設は呪われるだろう」とスピーチする。1959年、ストローズの写真が表紙のタイム誌にオッペンハイマーの批判記事が載る。これはストローズによる世論操作ではないかと言われ、ストローズは1954年の種明かしを始める。

 

1954年ボーデンに情報提供したのはストローズだった。そして身辺調査の手続きにするため小さな部屋での密室にしてオッペンハイマー聴聞会を開いたのだという。そして審査員も検察官もストローズが指名し、オッペンハイマーの弁護士には十分な資料を渡さなかった。この目的は、オッペンハイマーが政治に口を出せないようにするためだったと語る。実際優秀な弁護士を擁したオッペンハイマーは苦戦する。そして、ボーデンのフーバーへの報告書が読み上げられ、オッペンハイマーと弁護士はロシアのスパイ容疑に打ちのめされる。

 

1959年公聴会、シカゴ派の科学者デヴィッド・ヒルはストローズがオッペンハイマーに個人的な恨みがあることと1954年のオッペンハイマーの社会的地位破壊に言及し商務長官に相応しくないと証言する。

 

聴聞会ではテラーはオッペンハイマーは忠誠心があるが行動や発言は理解できないと証言、去り際にオッペンハイマーと握手するがキティは手をださなかった。グローヴスは、誰も信じていなかったしオッペンハイマーも信じていなかったが不信があったわけではないと断言する。

 

1959年公聴会ヒル聴聞会での検察官を指名したのはストローズだったと暴露する。聴聞会では検察官はキティを厳しく詰め寄り彼女が共産党と金銭的に繋がりがあると指摘する。かつて祖国を捨てたアインシュタインオッペンハイマーに、なぜこの国にそこまで尽くすのかと尋ね、オッペンハイマーアメリカを愛しているからだと答える。

 

1959年ストローズが激昂していた。ヒル公聴会でストローズを追い詰めたのはかつて聴聞会でストローズがオッペンハイマーを追い詰めたのと同じことをされ、結局科学者に自身の立身出世を阻まれたと感じていた。それでも、オッペンハイマーを守ってやった気でいるストローズだった。

 

聴聞会ではオッペンハイマーが米国に忠誠ある市民だと認められたが共産党員との関わりは否定できず公職追放となる。1959年の公聴会でストローズの昇進は却下され、彼の昇進反対署名にJFKもいた。

 

1947年、オッペンハイマーがストローズと初対面の日、庭の池のそばに佇むアインシュタインオッペンハイマーに原爆成功を祝福するがいつか決着は下るだろうと告げる。それは賞賛も含まれるがその栄光は所詮人間は自分本位なのだと話す。オッペンハイマーアインシュタインに、地球を燃やし尽くす核爆発の際の連鎖反応の話について、あれは成功だったと告げる。アインシュタインは言葉を失いストローズの脇を過ぎていった。

 

ストローズが最後まで、オッペンハイマーアインシュタインが池のほとりで交わした会話を気にしていたが、ラストでこの場面がフラッシュバックされ、オッペンハイマーは池の波紋を眺めて、地球中に核ミサイルが発射され、世界中が核兵器で破壊され地球が滅ぶ映像の後オッペンハイマーのアップで映画は終わる。

 

トリニティ実験で原爆が完成し、世界が変わる瞬間を作ってしまったオッペンハイマーの苦悩。当初、原爆が爆発すると連鎖反応が止まらず、大気が核爆発を誘発するという懸念が、実は冷戦からその後の核競走への暗喩であったエンディングは寒気がするものがある。オッペンハイマーの妻の存在や、不倫相手の描写など人間ドラマ部分もしっかり描いたゆえか、恐ろしいほど長尺の作品になった上、クリストファー・ノーランお得意の交錯した作劇が、かなりしんどい映画になっています。クオリティは相当ですが、対抗馬が少なかった故のアカデミー賞受賞ではないかと思います。