くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ロバと王女」

ロバと王女昨年はジャック・ドゥミ監督の仏語15周年ということでジャック・ドゥミ監督の隠れた傑作とされる「ロバと王女」がデジタルリマスターされて東京で上映された。
そして今年ようやく大阪でも見る機会を得て今日見てきたのだ。

27歳のカトリーヌ・ドヌーブの美しさは最高である。物語はあの「シンデレラ」のシャルル・ペロー、つまり童話である。
まず、分厚い本を開くところから始まり、ある王国での出来事が描かれていく。すべてが青いこの王国は馬も全身真っ青に塗られている。正直ちょっと毒々しい限りだ。

本筋はというと王妃を亡くした王様がその王妃に匹敵する美貌を持った王女に求婚するところから事件となり、王女はロバの皮をかぶって他国へ逃げる。そしてそこで王子様と出会って、めでたしめでたしなのだが、当然場面は全編ファンタジックな彩りとミュージカル仕立てで展開していきます。まさにジャック・ドゥミの世界ですね。

圧巻はカトリーヌ・ドヌーブ一人二役でケーキを焼くシーンのミュージカル場面。ジャック・ドゥミ監督といえばミッジェル・ルグラン。そのミッシェル・ルグランの軽快なナンバーがこのシーンで最高潮に達します。
歌とメロディに乗ってロバの皮をかぶったドヌーブが太陽のドレスを着たドヌーブにケーキの焼く手順を歌で教えていくのですが、もう見ていて楽しくて、このシーンを見るだけでもこの映画を見た甲斐があるというものでした。

クライマックスになる王子様の手にしている指輪にぴったりの女性を国中から集めて応じ様の結婚相手を決める下りはまさに「シンデレラ」そのものですが、その後、あっと驚くラストシーンが用意されています。なぜこのシーンを挿入してあるのか結局ジャック・ドゥミ監督の意味するところは理解できなかったのですが、全体としてそれほど傑作だろうかと思う程度の作品だったような気もします。

確かに画面は美しいです。でも、「シェルブールの雨傘」で見せたほどの斬新な場面はないし、確かに王女が着る空のドレスはドレスに空の画面が流れていくのが映っているなど見応えのある画面は随所にありますが、90分弱の作品であるからこそ最後まで見れるという程度のものだったような気もします。要するに好みではないということでしょうか。

それにしてもカトリーヌ・ドヌーブは素晴らしいですね。ロジェ・バディムに一流の女優として世に出してもらったもののロジェ・バディムとの恋に破れ、世間からのさげすみの中、再起不能になるところをジャック・ドゥミ監督が「シェルブールの雨傘」で彼女を大女優として開花させ、その後フランスの大女優の代名詞のような存在となり、今なお大活躍するまでになった彼女の魅力はただ者ではありません。

従ってジャック・ドゥミ監督の作品には要請されれば絶対に拒否しなかったほどの恩義を最後まで貫き、しかも自分の信念は曲げることなく女優業に誇りを持つスター、おそらくこれほどの大女優は数えるほどしかいないでしょう。

ロバと王女」の作品の善し悪しや好みの有無はともかく、彼女の姿を見るだけでも十分に傑作と言える映画でした。良かった。

「ロバと王女」サウンドトラック「ロバと王女」サウンドトラック
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