くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「幕末残酷物語」

kurawan2016-10-19

「幕末残酷物語」
なるほど傑作である。地面すれすれ、あるいは穴をほったのではないかというほどのローアングル、建物や障子の隙間に配置した人物の構図、ここぞという時の超クローズアップ、画面の中にほとばしるような息遣いを伴わせ、詰め込まれたような人物配置による緊迫感、まさにリアリティを突き詰めた迫力の時代劇の傑作である。加藤泰監督の代表作にして、映画史に残る名作を見る。

幕末、池田屋事件で大勢を殺傷した新撰組がことを終えて出てくる場面から映画が始まる。隊士たちの顔には血しぶきを帯びている。そしてタイトル。

厳格すぎる規律で統率された新撰組に一人の男江波が入隊するためにやってくるところから物語が始まる。木刀による試合をして勝ち残ったものが入隊を許されるとされる中、次々と殴り殺される。恐れをなしたように逃げた江波だが、罵倒され、切腹をやりかけた態度が気に入られ入隊する。いかにもひ弱なこの男がみるみるたくましい隊士になって行くのだが、厳格な規律の中で仲間が次々と斬首されるのを目の当たりにする。

幹部と称される隊士までもが斬り殺されるに及んで、新撰組の中には不穏な乱れが生まれる。そして、薩長の隊が京都へやってくると決まり、いよいよ決戦で迎え撃つ準備が整う中、江波が実は近藤勇が殺した男の甥で、その仇のために入隊したことが明らかになる。当然、近藤勇は彼を殺すように命じ、最後の最後沖田総司が彼を斬り殺し、決戦の場に出立する隊の姿でエンディング。

沖田総司が江波を殺す一瞬のシーンにストップモーションを使った演出でものすごい迫力を生み出す。

狭い路地を有効に使った空間演出も見事で、こういう作品を見せられると、映画を作ってみたくなってしまう。まさに加藤泰の真骨頂と言えるほどに見事な時代劇だった。これぞ映画である。