「ジュブナイル」
かつてのNHK少年ドラマシリーズのような物語ですが、めちゃくちゃ面白かった。特撮シーンのワクワク感、かつて子供の頃に味わっていた高揚感、そんなノスタルジーとエンタメが融合した秀作だった。監督は山﨑貴、デビュー作である。
ワームホールの中をボールのようなロボットが駆け抜ける場面からカットが変わると、2000年夏休み、草原を走る三人の少年の姿から映画は幕を開ける。キャンプに来ているのか仲のいい祐介、俊也、秀隆が部屋で勉強していると外に明るい光と音を目撃する。祐介らが森の奥に入っていくと、同じくキャンプに来ていた岬と出会う。四人は穴の中にボール型のロボットを発見する。自身をテトラと言い、祐介の名も知っていた。祐介はそのロボットを持ち帰り、他の友達と一緒に飼うようになる。
テトラの指示でガラクタを集め、やがて、テトラは自分の足を完成させる。テトラがさらに知識を蓄えるため、インターネットに繋ぎたいと考えた祐介らは、電気オタクで有名な天才物理学者神崎という青年の家にやってくる。そこで、神崎はワームホールを使ったタイムトラベルの可能性について語る。そして実験してみせたワームホールの行き先は祐介らがテトラを見つけた森の中だった。その頃、十万キロのかなかたら異星人が地球を目指していた。そして最初に派遣された宇宙船が地球にたどり着く。彼らはボイド星人といって、地球上の海をワームホールを使って全て手に入れようと三角錐の形をした巨大なワームホール発生機を海上に仕掛ける。
ボイド星人は、地球人の範子の姿に変身し、地球の知識を吸収し始める。範子は岬の姉でこの地に遊びに来ていた。テトラは祐介にロボットゲームを教える。まもなくして、テトラは行方不明になる。祐介たちは探し回るが見つからず、範子は東京に帰る前に、遅くなった祐介を迎えにくるがそこでボイド星人が変身した範子と遭遇、範子は拉致されてしまう。
ボイド星人は自分たちの計画に邪魔になるスーパーテクノロジーの航跡を神崎の家の中に発見し、神崎の目の前に現れる。そして神崎の姿になる。そこへ、祐介たちがやってくる。神崎の様子がおかしいことに気がついた祐介らの目の前で神崎の姿のボイド星人が現れる。祐介たちは劣勢になるが、岬が機転を効かせて液体窒素をかけてボイド星人は凍結する。俊也はボイド星人が持っていた小さな三角錐を奪うがついスイッチを押してしまい、爆弾だと思ってプールに投げる。するとその三角錐はプールの水を全て取り込んでしまう。
祐介はテトラを探しに出るが、戻ってみると神崎とボイド星人が酒を飲んでいた。しかし、それはボイド星人のカモフラージュだった。そしてテトラを持ってくるように指示して、岬を拉致すると宇宙船に連れ去ってしまう。そこへ、巨大ロボットを完成させたテトラがやってくる。それはかつてゲームでテトラが見せてくれたロボットだった。祐介はそのロボットに乗り岬を助けに向かう。岬らは桟橋にいた。そこでボイド星人の宇宙船とテトラのロボットが対決する。
祐介は宇宙船に乗り込み、岬と連携してボイド星人から逃れようとする。最後に三角錐をボイド星人に返したが、それをボイド星人は海上の母船に転送、しかし返す寸前、岬がスイッチを入れていたので、海上の母船は破壊されてしまう。ボイド星人らは、宇宙の母船の指示で戻ろうとするが、祐介らはまだ脱出できていなかった。
そこへ修理を終えたテトラのロボットがやってきて祐介らを助ける。地上に降り立った祐介らだが、ボイド星人は最後に祐介を殺そうと光線を放つ。すんでのところでテトラが身代わりになり祐介は助かる。神崎は壊れたこのロボットのディスクは現在の科学では作れないからと、将来を祐介に託す。
2020年、祐介はロボット工学を学んだものの、未だテトラは作れていなかった。そんな時、テトラに入っていたディスクが開発されたニュースが舞い込む。さらに、時空間の研究を続けている神崎からワームホールが完成したと連絡が入る。そして六ヶ月後、テトラ型のロボットにディスクを入れ、テトラを甦らせた祐介らは神崎の研究室にやってくる。テトラタイプのロボットをワームホール発生機にセットし、スイッチが入れられて映画は幕を閉じる。
とにかく、特撮を駆使したロボットシーンや憎めない宇宙人のキャラクター、ありそうでありえないけど夢あふれるストーリー展開がとにかく楽しく、大傑作とまではいかないまでも、なかなかの佳作という出来栄えのSF映画でした。
「金星ロケット発信す」
東ドイツ映画祭で見る。スタニスラフ・レムの原作がいいのだろう、反核というしっかりとしたテーマが映画全体から伝わってくる展開と、古さゆえに特撮はシンプルながら、丁寧に造形された未来の美術セット、など微に入り細に入った作りがなかなかの名作と言える映画だった。監督はクルト・メーツィッヒ。
ゴビ砂漠で謎の物体が発見され、シベリアで巨大な隕石が落下する事件が起こる。どうやら宇宙船らしいと推測されるがシベリアには何もなかった。ゴビ砂漠で発見された物体は世界中の天才科学者とコンピューターにより解析され、どうやら金星から送られたものであろと推測、直ちに金星に探査ロケットコスモクラトール号を送ることになる。
ロシアの科学者アルセニエフら六名の科学者が乗り込み金星へ向かって旅立つ。そして金星に辿り着くが、その途中で、解析していた物体の中にあった記録が明らかになる。それは地球を攻撃する計画が記されたものだった。地球へ連絡するにも妨害電波で連絡も取れない中、科学者たちは金星へ向かうことにする。
金星についた科学者たちは、金星人が作ったであろう施設を発見するが生物らしいものがいない。公文書館らしいところでデータを記録した昆虫のようなものを捕獲して分析すると、どうやら、金星人は地球を攻撃する準備をしていたが、その兵器によって自ら滅んだらしいとわかる。そして金星人は核爆発のせいか壁に焼け跡の姿だけを残していた。
学者たちが調査する中、ヘドロのようなものが襲ってくる。それを銃で撃つとヘドロは引いたが、それによって攻撃兵器が起動したらしいと知る。エネルギーをヘドロに変えていたものがヘドロがエネルギーに戻ったことを知った科学者たちは、決死で再度元に戻すべく二名が制御室に向かう。しかし重力以上でロケットは飛び立ってしまう。地球に戻った生き残った科学者たちは金星人が失敗したことを繰り返さないようにしないといけないと自分たちに言い聞かせて映画は終わる。
人間ドラマのさまざまなエピソードや金星についてからのさまざまがかなり荒っぽくてわかりにくいのだが、映像演出がしっかりしているので物語がなんとなくわかるから不思議で、結局、反核、反戦映画としてエンディングを迎えるのは、制作された1960年を考えるとまさに時事的に的を射た作品だった気がします。面白かった。
「六人の嘘つきな大学生」
もっと軽い映画かと思っていたら、役者の活かし方が上手いのか、しっかりした作品に仕上がっていました。単純に面白かった。物語的にはもっと深い内容のメッセージが最後にドンと見えたら大傑作だったかもしれないけれど、ここまでできたら合格点だと思います。映画スレしてるので、この後の何かを予感してしまうため、それを覆されるくらいだったらもっと評価したいですが、それでもまあこれくらいならOKです。監督は佐藤祐市。
大企業スピラリンクスの面接に一万人の中から残った六人が最終面接の説明を人事部から受けている場面から映画は幕を開ける。一ヶ月後の最終面接でグループディスカッションをし、六名全員の内定もありうると言われ、六人は面接対策を全員で立てようということになる。さまざまな課題をシミュレーションし、それぞれの長所を尊重し、最後は酒の席で盛り上がって仕上げに入った。ところが最終面接まで後十日と迫った日、全員に人事部からメールが届く。「六人の中で誰が一番ふさわしいかをお互いに決めてもらった上、一人だけに内定を出す」というものだった突然の変更に戸惑う波多野と嶌だったが、嶌はある頼み事を波多野にする。
そして最終面接の日、六人は一室に案内される。波多野の提案で、六人でディスカッションし、十五分おきに投票して、一番得票の多い人を推薦しようというものだった。室内には人事部がカメラをセットし、中途退出した人は自動的に失格になる旨伝えられる。ところが、部屋の隅に封筒が置かれているのを嶌が見つける。封筒の中にはそれぞれの名指しで六通の封書が入っていた。最初にスポーツマンでもある袴田の封筒を開けるが、なんと、かつていじめで後輩を自殺させたという告発文と写真が入っていた。当然袴田への投票は無くなってしまうが、その後も詐欺事件を起こしたことがあるという森久保、ファミレスでバイトしていたと言っていたが実はキャバクラにいたという矢代、未成年飲酒をした証拠写真の入った波多野、元カノを中絶させて捨てた久賀などなど次々と過去が暴露され、投票は混沌としていきさらにそれぞれ疑心暗鬼となっていく。
そんな時、写真と文章に傷があることを発見し、同一人物が告発文を作ったのではないかということになる。部屋にあった封筒は誰かが森久保のポストに入れたらしいというのも明らかになり、告発文を作った犯人探しに変わっていく。そして、写真が撮られたらしい二十日の予定をそれぞれ聞いていくと波多野のアリバイだけがなかった。結局最後の投票で、嶌が逆転して得票する。波多野はとうとう、自分が仕組んだことだとまだ開けていない嶌の封筒をポケットに入れて部屋を出てしまう。
そして八年が経つ。今はスピラリンクスでバリバリ仕事をする嶌の姿があったが、ある日波多野の妹が訪ねてくる。波多野は先日病気で亡くなったが、彼が残したメモ書きUSBに嶌の名前があったので持ってきたという。そこには、犯人、嶌に当ててノートに書いたメモがあった。嶌は、USBを開こうとするがパスワードがわからない。最終面接の動画を見直していて、矢代と森久保の手の動きに不審に思う。そして後日、久賀たち当時のメンバーを呼び出す。
久賀はあるIT会社を先輩と経営していた。他の人たちもそれなりに社会人になっていたが、嶌は矢代と森久保の動きを問い詰める。すると、封筒の中に告発文以外に二十日のアリバイの件のメモも入っていたという。さらに波多野の写真はピンボケで、嶌が大学サークル時代に波多野の写真を検索し、鮮明に写っている写真の飲んでいる瓶が酒だと気が付かない人物、この六人の中で唯一酒の飲めない久賀が犯人だと暴く。久賀の先輩は天才的なプログラマーだったが、スピラリンクスを受けて落とされたのだという。先輩を尊敬していた久賀は人事部のバカさ加減を確認するためこの会社の面接を受けたと告白する。最後に、波多野のUSBに入っていた波多野の声を流す。
波多野はあの後、自分が犯人ではないもののああいう形で出て行ったことが気になり、告発文の真相を探り始めた。結果、それぞれの告発文にはさらに先があり、みんな誤解などであったことが判明する。飲み会の後、嶌が波多野に頼んだのは、最終では私を推薦してほしいというものだったが、波多野は断ったとも録音されていた。嶌の封書は波多野が燃やしてしまったと録音されていて、結局わからないままだった。
嶌は波多野の墓参りをする。会社では新人面接を担当させられ、この日、三人の応募者の前に座る嶌の姿があった。嶌は波多野が望んでいた人材を発掘しようという気持ちに燃えていた。こうして映画は終わる。
終盤の鮮やかさが、原作では文章なので効果的になっているのでしょうが、ここが映像としてちょっと工夫不足なのは残念。一級品に後一歩は勿体無いけれど、それなりに楽しめたし、役者それぞれが頑張っていたのがとっても好感だった。ただ、冷静にストーリーを思い返すと、犯人の動機が実に弱いし、実は告発文に先があった無理やり感もかなり幼稚なのは、今時に人気サスペンスのレベルはこの程度なんだという落胆もないわけではなかった。