くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「罪と女王」「恐竜がおしえてくれたこと」

「罪と女王」

かなりクオリティの高い心理ドラマの秀作でしたが、内容がちょっと重いです。辛い映画でした。監督はメイ・エル・トーキー。

 

森のカットがゆっくりと回転し、主人公アンネのカットへ。夫ペーターがこれから出かけるのだが、送るという申し出を断ってタクシーで出かける。

 

少し物語が遡る。ペーターとアンネの間には双子の娘がいて仲睦まじく暮らしていたが、アンネは弁護士で、時に依頼人を自宅に連れてくることがあり、家庭と仕事を分けて欲しいとペーターに責められたりする。ペーターには前妻との間にグスタフという息子がいる。学校で問題を起こしたということで、ペーターが引き取ることになりが、何かにつけて反抗的なグスタフにアンネは途方に暮れる。しかし、娘二人はなついていた。

 

ある日、アンネたちの家に泥棒が入るが、実は犯人はグスタフだった。アンネはそれを知るが夫ペーターには話さなかった。アンネはなんとかグスタフと距離を縮めようとするが、いつのまにかそれは日頃のストレスの吐口となり、体を重ねてしまう。

 

グスタフも次第にアンネに本気で惹かれ始め、二人はSEXを繰り返すが、ある時、ホームパーティーでアンネとグスタフがキスしているところを友人に見られて、慌てたアンネは二人の関係をここまでにすることを決心し、途端にグスタフに冷たく当たるようになる。

 

うまく行きかけていたように見えていたグスタフが突然寄宿学校に行くなどと言い出したのを不審に思ったペーターは二人きりで山小屋に泊まりにいく。帰ってきたペーターはアンネに、グスタフがアンネと寝ていたと言っていると告げる。慌てたアンネは、狂ったように拒否し、グスタフの嘘だと強行的に反論、家を出て行こうとする。

 

妻の態度に反省したペーターは妻を抱きしめる。そして翌日三人で話すにだが、アンネはグスタフの前で、はっきり嘘を言っていると責め立てたので、グスタフはアンネに唾を吐いて去っていく。しかしペーターはどこか不自然を感じていた。

 

ペーターとアンネ、娘たちに平穏な生活が続く。ある日、グスタフはアンネの会社に乗り込んでくるがアンネに言いくるめられてしまう。クリスマスの夜、グスタフが深夜に突然訪ねてきて、アンネに迫るが剣もほろろにアンネに追い返される。

 

春になり、アンネの誕生パーティー。友人たちが集まる中、グスタフが行方不明だという知らせがペーターに入る。パーティーの後、ペーターは警察に呼ばれて出かける。これが冒頭のシーンである。

 

警察から戻ったペーターは、グスタフが山小屋で凍死していたと告げる。アンネは、自分の行動を後悔して、思わずペーターに話そうとすりが、ペーターは口を押さえる。全てわかっていたにかもしれない。ペーター、アンネ、娘二人が車で向かう。グスタフの葬儀なのかどうか不明だが映画はここで終わる。

 

この家族のこの先に余韻を残す終盤の演出は見事だと思うのですが、どうもお話が暗くて辛い。前半はアンネがいかにも男好きの欲求不満の女に見えたが、後半にグスタフの純粋さが表に出てくると、二人のラブストーリーが見えてくる展開はうまい。夫ペーターの心理ドラマもなかなか見せてくれるし奥の深い仕上がりになっていたと思います。

 

「恐竜がおしえてくれたこと」

さりげない映画なんですが、なんか、心に残る何かを感じてしまう素敵な作品でした。監督はステフェン・ワウテルロウト。

 

主人公サムが浜辺に棺桶のように穴を掘ってそこに寝転んでいる。自分が最後の一人になったときのために孤独に耐えられるようにしないといけないなどと考えている。サムの家族はバカンスでオランダに来ていた。サムは父らと遊んでいて兄のヨーレがサムの穴に落ちて骨折。近くの診療所へ行く。外で待っていたサムは風変わりな少女テスと知り合う。

 

ヨーレと父が街まで行く間サムはテスト遊ぶことにする。テスは突然入ってきた電話に応えて自転車で離れたところのレンタル別荘の準備に行く。お客はヒューホという男性とその恋人だったが、テスはヒューホと握手もせずに飛び出す。追いかけたサムだが途中でテスに置いてけぼりを食ってしまう。

 

翌日、サムはテスと再会する。テスは昨日のことをさりげなく謝る。テスの父は十二年間いないのだという。しかしテスは、母にもらったいろんな写真などからヒューホと言うのが実は父親だと見つけたとサムに告白したのだ。テスはヒューホたちを招待する計画を勝手に立てたのだとわかる。

 

テスはヒューホたちと一緒に遊ぶことにし、サムを交えて浜辺に行くが、ふとしたことでヒューホが怪我を負ってしまう。慌てて診療所へ向かうが、実は診療所にはテスの母が勤めていた。巧みに会わないようにしたサムはなんとかその場を切り抜ける。

 

ヒューホたちが帰る最後の前の日、街の露天祭りがあり、そこでサムとテス、ヒューホと恋人が出会い、テスはヒューホに真実を話そうとするが話せなかった。

 

やがてサムが帰る日が迫る。サムは干潟へ一人で行き足が抜けなくなってしまう。彼を助けたのは地元で一人暮らすヒレという男だった。ヒレは思い出を集めながら暮らしていた。それを見たサムは帰りかけるヒューホを止めてテスが娘であることを教える。

 

テスは一瞬はサムを責め、サムは一人家族のところへ戻る。そこへやってきたテスは、晴れやかに笑顔があった。ヒューホが父親だと認めてくれたという。そして、みんな集めて今夜パーティをするという。

 

テスの家にサムの家族、ヨーレとヨーレが知り合った彼女、テスの母、ヒレ、テスの母に想いを寄せる地元の自転車屋シルらも交えて賑やかな夜を過ごす。翌日、帰路の船のサムがあった。

 

映画はここで終わりましたが、いろんなさりげないエピソードをラストまとめてしまう心温まる構成でとっても心に響く作品でした。映画の出来不出来よりも気持ちが晴れやかになる一本でした。いい映画を見た感じです。