「続・荒野の用心棒」
マカロニウエスタンのカリスマ的な一本。「荒野の用心棒」とは全く関係のないある意味名作。久しぶりに見直したが、シンプルな絵作りが楽しいし、やっぱり、これは映画史に残す映画なのだなと改めて感じた。監督はセルジオ・ゴルブッチ。
棺桶を引きずって主人公ジャンゴが登場。メキシコ人に裏切り者として鞭を受けようとしているマリアの姿を見つける。あわやのところでアメリカ軍がマリアを助けたかと思えば、実は処刑するため。ジャンゴは目にも留まらぬ早打ちでアメリカ人を倒し、マリアを助けて街へ。
その街はジャクソン少佐が牛耳ってメキシコ人を阻害していた。ジャンゴは棺桶の中に隠した機関銃でジャクソンらを追い払うが、続いてやってきたのがメキシコ人たち。彼らとジャンゴはアメリカ人の砦を襲い金を奪う。メキシコ人が分け前を払う気がないのを見たジャンゴは、マリアを連れて逃げるが、途中底なし沼に金を落とし、瀕死で脱出したところへメキシコ人が追いつき、ジャンゴを捕まえて、両手を潰す。
メキシコ人はその帰りジャクソン少佐らに殺され、瀕死で街に戻ったジャンゴは、墓場でジャクソンとの最後の決戦に臨む。ピストルを十字架に結わえ、引き金を細工して、潰れた手でも操作できるようにして、ジャクソンらを返り討ちにしてエンディング。
まあ、中身もなにもない西部劇ですが、余計な制約もない痛快さはやはり映画全盛期の一本という感じです。構図も見事だし、ぬかるみの道もいい雰囲気を出している。やはり必見の一本ですね。
「母との約束、250通の手紙」
ジーン・セバーグの夫でもあったフランスの作家ロマン・ギャリーの半生を描いた作品ですが、非常にしっかりした演出と絵作りで、なかなかクオリティの高い仕上がりになっていました。なんといっても、母親役のシャーロット・ゲンズブールの演技が見事で、彼女の迫力で映画を引っ張った感じです。ラストは胸がじんわりと熱くなってしまいました。監督はエリック・バルビエ。
作家活動をしているロマンのところへ妻が駆けつけるところから映画は始まる。部屋に飛び込んでみたらロマンは倒れていてそのまま病院へ。物語は1926年、ロマンの幼い頃に遡る。
ユダヤからフランスに帰化したロマンの母ニナは息子に絶大な期待をかけ、未来の作家で、士官で、政治家になる天才だと吹聴しながら必死で生活をしていた。そんな母の思いに応えるべくロマンも必死で毎日を送っていく。
時に母に反抗しそうになるが、母からの熱い思いがぶつけられてくると、自らを鼓舞して期待に応えようとする。やがてフランスのニースに移り、ロマンは間も無く大学へ。短編小説も発表するもそれ以降続かず、間も無くして第二次大戦が勃発。ロマンは戦地へ向かう。
母ニナからの手紙は途切れることなく、ロマンも長編小説に臨み、とうとう、英語訳さえも実現して母の夢は叶う。そして終戦。ロマンがニースに戻ってくるが母はいない。かつて入院していた病院を訪ね、母の死を知る。ニナは死の直前250通の手紙を知人に預け、自分が死んだ後もロマンに送るように依頼する。ニナが亡くなって3年がすぎていた。
ロマンは、かつて母が夢見た全てを手に入れたが、それを母は知ることはなかった。こうして映画は終わる。時の流れがどんどん先に進んで行く展開で、ロマンの人生に、必ず母ニナが関わってくるカットの挿入が実にうまい。そのわずかなシーンに母の熱意と必死さを見事に見せたシャーロット・ゲンズブールの演技がとにかく素晴らしい。いい作品を見れたなという映画でした。
「37セカンズ」
普段、障害者の映画は見ないのですが、この作品はちょっと惹かれるものがあって見に行きました。映画としては普通でしたし、脚本もそれほどでもなく、もうちょっとテンポよくまとめるところもあったほうがいい部分もありましたが、絵作りは所々綺麗でした。主演の女性は実際の障害者ですが、こういう役者さんがもっと表で活躍すればいいと思います。監督はHIKARI。
生まれる時37秒呼吸しなかったために下半身に障害の出た主人公ユマは、友達のアニメスタジオで助手をしている。執拗にユマを介護する母恭子の元で普通に過ごしていたが、自分の作品を世に出したい思いを持っていた。また、何かにつけ世話してこようとする母を疎ましくも思い始めていた。
ユマは、雑誌に作品を送ろうと思うが、一般誌だと今ついている漫画家を通さなけれならず、道に落ちていたアダルト雑誌の編集室に電話をし、一社の面接に行く。しかし、アダルト系は経験が必要だと言われ、ユマは風俗街へ出かけるが、そこで紹介された男性とうまくいかず途方にくれる。そんな時、障害者専門に相手する舞という女性と知り合う。
舞と、彼女についている介護士の青年俊哉と行動を共にする内、次第にユマは自由な世界へ飛び出していく。ところが、ユマの行動に不信を持った恭子が、ユマの持ち物から心配になり、ユマを閉じ込めてしまう。ユマはリハビリの時に逃げ出し、俊哉の部屋に泊めてもらい、そのあと、父の元へ向かう決心を知る。父はユマが幼い時に家を出ていた。
ところが、父が住んでいると思った海辺のペンションには父の弟がいて、父はすでに亡くなっていた。そして、タイに双子の姉ユカがいることを知ったユマは俊哉とタイへ。そこでユカに会い、再会を約束して日本に帰ってくる。強引な展開でさすがに雑に思える展開でした。
ユマは、勇気ある行動が取れたきっかけになったアダルト雑誌の編集長に礼を言う。そして、自分が書いた普通の漫画のデータを見せる。編集長は彼女に才能を見出したと言う電話の声でエンディング。
最初に出てくる漫画家がいかにも障害者を利用しているというキャラクター設定はありきたりだし、妙にあれこれ詰め込んだ割に余計じゃないかと言うエピソードが散りばめられたのは残念。ただ、見て損は感じなかった。