わずか300人の兵士でペルシャ軍に立ち向かったスパルタ軍の戦いをCGを駆使して描いた歴史スペクタクル「300」(スリーハンドレッドと読む)を見る。
原作は「シンシティ」のフランク・ミラー、当然映像自体が、まるで「シンシティ」の世界。
結論から言うと、これは映像であって、作品ではなかった。人間味が全く感じられない。感情が全く伝わらない。当然、感動を呼び起こすような胸に訴えかけてくるものは全くない。それがいいのだといわれラバそれまでであるが、果たして、観客は劇場へ足を運ぶに当たって、そんなことを期待しているだろうか?
当然のように首が飛ぶ、足が飛ぶ、人間が裂ける、腕が舞う、血しぶきが噴き出す。まるで3Dのゲームの世界である。スペクタクルのように見えて、全く暖かみのないシーンの連続に、はっきり言ってうんざりする。
物語は単純、スパルタを属国にせんがためにペルシャ軍が圧倒的な軍勢でやってくる。スパルタの王レオニダスは誇りを捨ててまで属国になることを拒否。長老たちの反対を押し切って、勇者300人を従え、大群のペルシャに立ち向かっていくというもの。
画面全体が、まるでCGで作られた虚構の世界のように殺伐としている。ペルシャの大群や先頭シーンはさすがに圧巻というほどに大スケールで展開するが、明らかにCGの世界である。スパルタ軍の知略に満ちた戦略は目を見張るものがあるものの、そこに人間の知恵は見あたらず、まるでロボットの人工知能のようである。
一方、留守を預かる王妃の苦悩も、全く真実みを帯びてこないで、あつい感動も伝わってこない。悲劇の感動も伝わってこない。
そんなメカニカルな作品であるが、2時間を一気に見せてくれる。CGの映像を楽しむには十分な演出は施されているからだ。歴史の一ページのおもしろさというより、大画面で見るCGゲームである。全くリアリティはないのであるが、それはそれで退屈はしなかったことも事実なのですから、あれでよかったのかな
でも、あそこまで人間の首や手足がもがれて、血潮が舞い散ると、ちょっとよくないですね。工夫がなさすぎます。