くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ナイトメアー・アリー」

「ナイトメアー・アリー」

たまたまフィルムノワール特集で見た「悪魔の往く町」と同じ原作、つまり二度目の映画化作品で、旧作をバージョンアップした映像を堪能できる秀作でした。やはりギレルモ・デル・トロ監督の絵作りは少々シュールでダークですが、見事でした。物語は二部構成的な配分ですが、そのバランスも上手いし、十分にサスペンスフルな展開も面白かった。

 

一人の男が死体らしいものをひきづり、床下に落として火をつける。そして燃え盛る家を後に草原を降ってくるところから映画は始ま

る。男の名はスタン、バスに乗りそのまま眠ってしまい終点で起こされる。そこでは見世物小屋を中心にしたカーニバルが行われ、ふらふらとそこへ入り込んだスタンは一人の女性モリーに惹かれる。

 

スタンは、獣人と言われる出し物の口上をしているクレムに誘われ一時凌ぎの仕事をもらう。そして、獣人を生み出すやり方などを享受され、ここの出し物小屋で働くようになる。モリーは体に電気を通す見せ物をしていたが、スタンの過激なアイデアで人気を博して行く。ここで、透視術を操るジーナと相方のアル中のピートと親しくなる。たまたま出し物の途中でピートが酔っ払ってしまい、急場凌ぎに行った幽霊ものに惹かれる。

 

ピートとジーナが考えた出し物だったが、幽霊ものは身を滅ぼすからとピートは厳しくスタンに忠告する。ただ、ピートはスタンに透視術を教えることになる。ピートはこれまでの技をノートに認めていて、スタンは興味を持つ。ところが、ある時、ピートがメチルアルコールを飲んで急死してしまう。スタンがわざとメチルアルコールの瓶を手渡したのだ。スタンはピートが持っていたノートをジーナに断って手に入れ、モリーに一緒にここを出て、大儲けしようと提案する。そして二年が経つ。

 

スタンはピートのノートを使った通し術で成功を収めていた。相方のモリーとも息もあい、順風満帆だったが、ある時、判事のチャールズの透視をした際同席していたリリスから、疑われるような質問をされる。その場を切り抜けたスタンは、チャールズから、妻のことを見てほしいと自宅に招かれる。

 

リリスは精神科の博士で、自分の患者との診療記録をオフィスに残していた。スタンはリリスに、患者の資料を見せてもらい、大儲けしようと取引を持ちかける。リリスは、関わるような関わらないような態度で資料を見せることに同意する。

 

スタンはチャールズの妻の透視術ですっかりチャールズに信頼され、チャールズの友人のエズラのことも見てほしいと頼まれる。エズラもまたリリスの患者だった。エズラは大富豪ではあったが、リリスは関わるのは危険だと忠告する。しかし、リリスの記録庫の鍵を複製したスタンは、リリスが部屋を出た隙にエズラの資料を知り、さらに、さまざまな方面でエズラを調べ上げる。

 

やがて、エズラの屋敷に呼ばれたスタンは、エズラの用心棒アンダーソンに疑われながらもエズラに取り入っていく。エズラは、過去に死なせてしまった愛する女性ドリーという娘のことで悩んでいた。スタンはドリーの事に入り込んでいくうち、ドリーに会わせざるを得なくなる。スタンはモリーに変装させて、エズラの前に立たせる計画を立てる。

 

そして、一時は断ったモリーだが、スタンの強硬な態度に、準備を進める。そんな頃、チャールズの妻は、息子の元へ行くと言って夫と無理心中をして死んでしまう。

 

スタンの計画の夜、、アンダーソンを邸内に残し、スタンはエズラと二人きりで庭でドリーに扮したモリーを待つ。やがてドリーが現れるが、エズラはドリーにすがりつく。段取りが狂ったスタンは思わずエズラを殴り殺してしまう。駆けつけたアンダーソンは銃でスタンを撃つが、モリーとスタンはアンダーソンを車で轢き殺す。そしてモリーはもうついていけないと姿をくらましてしまう。スタンは、リリスに預けていたエズラにもらった大金をもらいに行こうとするが、金は全て一ドル札に変わっていた。しかも、リリスもスタンを罵倒し、狂った患者だと叫んで追い出してしまう。

 

警察に追われたスタンは列車に隠れ、なんとか脱出する。やがて時はたち、スタンはすっかり落ちぶれていた。たまたま来ていたカーニバルの事務所に立ち寄ったスタンは、そこでクレムが飾っていた胎児のホルマリン漬けを見つける。透視術ができると売り込むが今はそんなものは入らないと酒を勧められ、かつてクレムが話していた獣人を作る方法と同じ手管をされる。スタンは、そうと知りながらも今の自分はそれで良いと答える顔のアップでエンディング。

 

物語は旧作とほとんど同じです。旧作はフィルムノワール色が強いモノクロ作品でしたが、今回も、意識した光と影を強調した絵作りになっています。ケイト・ブランシェットが登場する後半部分は圧倒的な迫力がありますが、前半部分をそこそこの尺で抑えた構成が見事に功を奏しています。シュールでダークな秀作という仕上がりに映画でした。