くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「トランスフォーマーONE」「花蓮の夏」(4K修復版)「柔らかい殻」(デジタルリマスター版)

トランスフォーマーONE」

カニカルな画面に一昔前の物語というアンバランスながら、実写版の「トランスフォーマー」の前日譚としてはそれなりに面白かった。スピーディな展開とビジュアルの美しさを大画面で楽しめるだけでも値打ちの一本でした。監督はジョシュ・クーリー。

 

トランスフォーマーが暮らすサイバトロンの地下都市、オライオンとD16は親友同士で、この日も、エネルゴン採掘の仕事をしていた。かつてサイバトロン星は、侵略者クインテッサに襲撃され、伝説のプライムたちが戦ったが及ばず、唯一生き残ったセンチネルプライムがこの星を守っていた。オライオンたちにとってはセンチネルは憧れの人物だった。

 

センチネルが主催するレースに飛び込みで出ようというD16に渋々オライオンも参加するが、そのパフォーマンスがセンチネルに気に入られ、改造を約束される。ところが手続きのミスか、二人は最下層の廃棄物処理場へ落ちてしまう。そこで、かつて採掘場にいた頃の上司エリータと再会、さらにお調子者のビーと出会う。さらにビーが関わっていた古いロボットから伝説のエネルギー源マトリクスのありかの図面を発見したことから、四人はそれを手に入れてセンチネルに認められようということになる。

 

D16は地上へ出る方法はないかと相談し、反対するエリータを巻き込んで廃棄物を地上へ送る列車に忍び込む。なんとか地上へ出たものの、四人はそこで、センチネルがクインテッサにオライオンらが必死で採掘したエネルゴンを渡している現場を見てしまう。センチネルは裏切り者だった。オライオンらは地図に基づいてマトリクスがあるらしい洞窟へ辿り着くが、そこはプライム戦士たちの最後の戦場で墓場だった。そこで唯一再起動できたアルファから、プライムたちがクインテッサと戦った時に、あと一歩で勝利したのをセンチネルの裏切りで全員死んだことが明かされる。そんな彼らにセンチネルの軍隊が迫る。アルファはオライオンらにセンチネルに奪われたコグを再装填してやり変身が可能にしる。アルファは犠牲となってオライオンらを逃し、オライオンらは採掘場へ向かうが、途中、都市防衛隊に捕まってしまう。そこへセンチネルらが襲い掛かり、防衛隊の大半と、D16らは捕まってしまう。

 

オライオンは、エリータらと共にセンチネルタワーを襲う。その頃D16はセンチネルに拷問されD16は必要以上にセンチネルを恨んでしまう。そこへ駆けつけたオライオンらは、D16を助け、防衛隊らとセンチネルと戦う。D16がセンチネルに最後のトドメを刺そうとするのを身をもってオライオンが防いだため、オライオンは地下深くへ落下してしまう。しかし途中、伝説のプライムたちからマトリクスを与えられ、オプティマスプライムとして甦り、タワーに戻ってD16=メガトロンと戦う。そして決着がついたあとオプティマスによってメガトロンは追放されるが、メガトロンは自分についてくる防衛隊の面々と旅立ってしまう。メガトロンは後にオプティマスらの最大の敵となる。こうしてサイバトロンはオプティマスをリーダーにして平和を取り戻す。こうして映画は終わる。

 

続く実写版の「トランスフォーマー」のさまざまなサーガが説明されるものの、それより展開がシンプルで面白いので、退屈せずに最後までも見ることができた。

 

花蓮の夏」

これは名作だった。脚本が素晴らしいし、細かくさりげなくカット割りする演出が見事で、ゲイを扱っているものの、思春期の恋の微妙な機微が見事に画面に描き切れている瑞々しさに涙が出てしまいました。こういう優れた映画を見せられるとしばらく何もしたくなくなる。本当にいい映画だった、監督はレスト・チェン。

 

海岸でしょうか、大学生のジェンシン、ショウヘン、ホイジャの3人が虚ろな表情で座っているカットから、いきなり少年のジェンシンを呼ぶ声に時間が遡って映画は幕を開ける。学校で問題ばかり起こすショウヘンは、この日も転校して来た女生徒の髪の毛を鋏で切って怒られて教室を追い出され、運動場で一人ぼっちにされてしまう。そんなショウヘンの母親は先生に、友達ができたら変わるかもしれないと頼みにくる。担任の先生はクラス委員のジェンシンに、ショウヘンと友達になるように頼む。何かにつけて親しくしようとするジェンシンに、ショウヘンも嬉しくなり二人は高校生になっても親友同士で、お互いに家の行き来もしていた。

 

そんな二人の前に香港からホイジャが転校してくる。ホイジャはジェンシンと同じ新聞部だったが、ある日ホイジャは学校をサボって台北に行こうとジェンシンを誘う。ホイジャはジェンシンが好きだった。台北でしこたま遊んだ二人は、一泊しようとなってラブホテルへ行く。そして二人はベッドで抱き合うが、ジェンシンは突然ホイジャから離れてしまう。実はジェンシンはゲイで、ショウヘンのことが好きだった。そんなこととは知らないショウヘンはジェンシンとホイジャを揶揄ううちに三人仲良くなっていく。

 

ジェンシンはショウヘンへの思いに悩み、次第に勉強にも力が入らなくなり、ショウヘンのバスケットの試合も観に行かなくなる。一方ホイジャはショウヘンの試合を見に来てくれるので、ショウヘンはホイジャに付き合いたいと告白、ホイジャは大学に入学したら考えると答える。やがて受験だったが、ショウヘンは合格したがジェンシンは落ちてしまう。大学に入ってショウヘンはホイジャと付き合い始めるが、ジェンシンには話さず、ジェンシンとの友達関係も途切れることはなかった。

 

次第にそっけない態度になるジェンシンに、ショウヘンは執拗に付き合いをしようとするが、大学のコンパの時、ジェンシンはショウヘンに、子供の頃先生に言われて友達になったことを告白する。そして、いつも一緒にバイクで帰っていたが、ジェンシンは一人バスで帰ってしまう。一人涙しながら帰るショウヘンだったが、二人に連絡がつかないホイジャは心配で仕方なかった。ジェンシンは気持ちを抑え切れずゆきずりの男と体を合わせてしまう。

 

一方、ショックを受けて呆然とバイクで走っていたショウヘンは帰り道事故にあってしまう。怪我は大したことはなく、ショウヘンはジェンシンに連絡を取り迎えに来てもらう。その夜、ショウヘンはジェンシンと体を合わせる。ジェンシンはホイジャに電話をして、ショウヘンと離れないで欲しいと告げて姿を消してしまう。

 

ショウヘンは、車を借りてジェンシンとホイジャをを誘い海に向かう。そして海岸で、ショウヘンはジェンシンに、自分も頼まれてジェンシンが友達になってくれたのを知っていたと告白、ジェンシンは初めてショウヘンが好きだと告白する。そんなジェンシンに、ショウヘンは、一番大切な友達だと告白する。車で待っていたホイジャが駆けつけ、三人でふざけ合って映画は終わる。

 

ホイジャからジェンシン、ジェンシンからショウヘン、ショウヘンからホイジャという、恋の一方通行の三角関係の面白さと、危うい年齢ゆえに素直に気持ちを伝えられないもどかしさ、さらにゲイという複雑さも絡んで、切ないほどに瑞々しい青春映画に仕上がっています。下手をすると、幼稚な作品になるところを、工夫されたカメラアングルやカット割の巧妙さで、なかなかの秀作に仕上げた手腕が見事な一本だった。

 

柔らかい殻

画面がとにかく美しく、空間を大きくとった構図も心地よいほどに物語を広げてくれるのですが、お話が不穏なほどに恐ろしくて、それでいて、どこか子供の残酷さと無邪気さが入り乱れている感じがファンタジーのように不思議な作品だった。監督はフィリップ・リドリー。初監督作である。

 

真っ黄色な麦畑の中をセスという一人の少年が大きなカエルを抱いて歩いている場面から映画は幕を開ける。待っているのは友達のキムとイーブン。彼方から一人の女性が歩いてきたので、セスはカエルに空気を入れてパンパンに膨らませて道路に置く。三人が見守る中、女がカエルに近づくと、セスがパチンコでカエルを破裂させ、女の顔に血が飛び散る。セスらはこの女ドリフィンは吸血鬼だと信じていた。

 

家に帰ったセスは、ガソリンの匂いが臭いと異常に喚く母親から離れて外に出る。父親も外に出て本を読み始める。不気味な高級車に乗った車が来たのでセスはガソリンを入れてやる。ドルフィンがセスの母親に文句を言いに来ている。母に叱られセスは、一人ドルフィンの家に謝りに行く。セスはドルフィンの家に入れられ、自分は二百歳だとドルフィンに言われる。そして、ドルフィンの夫が使っていた鯨を仕留める大きな銛をもらう。

 

そんな時、イーブンが行方不明になる。セスが自宅の井戸を開けると、そこにイーブンが浮かんで死んでいた。保安官助手が来てセスの両親らに事情聴取するが、その時、かつてセスの父親が十七歳の少年にキスしていた事を話し始める。父親は耐えられず飛び出してガソリンを体にかけて自殺する。まもなくしてセスの兄キャメロンが戻ってくる。セスは喜ぶが、キャメロンは何かにつけ邪魔者扱いする。セスはドルフィンの吸血鬼の証拠を掴もうとキムとドルフィンの家に忍び込むが、ドルフィンが帰ってきて逃げ帰る。

 

キャメロンはドルフィンと親しくなり、愛し合うようになるが、セスはドルフィンが吸血鬼だと思っているので気が気ではない。しかし、二人は愛し合い、セスがキャメロンの後をつけていくと、キャメロンは全裸でドルフィンに抱かれていてショックを受ける。そんな時、草原の中の小屋でセスとキムは、胎児のようなものを見つけ、セスはそれを家に持ち帰る。ある日、アメリカの国旗を着てセスの方へ走ってきたキムは、近づいてきた不気味な高級車の男たちに拉致されてしまう。しばらくしてキムも死体で発見される。

 

キャメロンとドルフィンはこの村を出て街に行く事を決める。道で街へ行く車を待っているドルフィンにセスは出会うが、彼方から不気味な高級車が近づき、ドルフィンはその車に乗っていく。まもなくしてドルフィンの死体が発見される。泣き崩れるキャメロン。セスは夕陽に向かって絶叫、次第に陽が沈んで行くが、沈むまで叫び続けて暗転映画は終わる。

 

地平線の彼方まで広がる麦畑や草原を大きな構図で捉える画面が壮大で、その中で起こる、現実かどうかわからないような悲惨な出来事の数々をセスの視点で描いていく様はなんとも不気味。といってもホラーでもなくミステリーでもない。そのシュールさに癖になってしまいような一本だった。