くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「岬の兄妹」「21世紀の女の子」

「岬の兄妹」

思いの外しっかり作られた作品。映画全体が必死でバイタリティがある。見応えがあるというべきか、そんな作品でした。監督は片山慎三。

 

海辺の町、主人公良夫が、妹が行方不明になり家から飛び出してきたところから映画が始まる。妹の真理子は知恵遅れの障害者である。やっと見つけて帰ってきたと思ったら、ポケットに一万円札が入っていて、下着が汚れていた。ゆきずりの男性に体を売ったことがわかり激怒する良夫。

 

良夫は片足が悪くひきづっている。勤め先も辞めさせられ、その日暮らし以下の生活でどん底である。二進も三進もいかなくなった良夫は真理子に売春させることを決心し、手作りの宣伝カードをポストに放り込み始める。兄である良夫が、どうにもならなくなって崖っぷちの中選択した展開が実に真に迫っている。見事というほかない。

 

真理子が体を売ったお金でそれなりの生活ができるようになり、窓に貼っていた段ボールも剥がし、見た目は普通の生活になっていく。なんとも皮肉な話だが、これがリアリと言わんばかりの迫力に圧倒されていきます。

 

しかし間も無くして真理子が妊娠してしまう。真理子がご執心だった小人症の男性が父親だと確信した良夫はその男のところへ行くがむげなく断られる。

 

仕方なく子供をおろすのだが、家に帰ってみると真理子がいない。良夫が必死で探すと海岸の崖っぷちに立っている真理子を見つける。真理子はゆっくり振り返り、微笑んだかのようなカットで暗転エンディング。果たしてあのまま飛びこんだのか、正気になったのか、子供を下ろした罪悪感が芽生えたのか、複雑なラストだが、どこか胸に訴えかけてくるものがあります。

 

雲間の太陽の明かりを画面に配置した構図など、絵作りにもこだわりのある映画で、一見、あまりにひどい兄であるかのようで、ギリギリまで切羽詰まっているリアルさが心を打ちます。なかなかの仕上がりの作品だったと思います。

 

「21世紀の女の子」

15人の新進女性監督によるオムニバスドラマ。単純に一編8分の映画が次から次と映されるので、あるようでないストーリーが展開。そこに描かれるのは恋であり男女の物語であり、SEXであり、トランスジェンダーでありと、それぞれ個性的なドラマが続く。

 

全体にびっくりするような映像が飛び出すこともなく、横並びに見えなくもないのは気のせいでしょうか。こういう企画もまた面白いと思える1本でした。