くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「愛と哀しみの果て」「アイヒマンの後継者ミルグラム博士の

kurawan2017-03-13

愛と哀しみの果て
アカデミー賞作品賞などを取ったシドニー・ポラック監督の名作を見る。美しい。とにかく画面の美しさに最初から目を奪われる。広大なアフリカの大地、広がる平原、彼方の山々、動物たち、さらに人物の配置から光の当て方、演出、どれもが一級品で素晴らしいのです。

物語はアイザック・ディネーセンという人の自伝を映画化したもので、デンマークの資産家カレンがアフリカで事業を起こそうとしている男爵と結婚する場面から映画が始まる。

しかし結婚当初から自分勝手に狩に出かけたり、勝手にコーヒー園を始めたりとカレンを無視する夫に不満が募って行く。

そんなある日、デニスという一人アフリカで暮らす男性と知り合い、いつの間にか恋に落ちて行く。

物語はこの二人のラブストーリーを中心に、アフリカで一人事業を切り盛りするカレンの奮闘ぶりと、原住民との交流を描いた大人の恋物語である。

とにかく、画面いたるところに絵画のような美しい構図がちりばめられているのに目を奪われる。

ある日コーヒー園が火事になり、何もかも失ったカレンはデンマークに戻ることになる。そんな時デニスが飛行機事故で死んだという知らせが入り、アフリカの大地にデニスを葬り帰国して映画が終わる。

壮大な大河ドラマという感じの一本で、メリル・ストリープの名演が光る。シドニー・ポラックの名演出が光る。名作とはこういうものだと言わんばかりの見事な一本でした。


アイヒマンの後継者 ミルグラム博士のおそるべき告発」
アイヒマン裁判が行われた1961年、アメリカイェール大学で行われたアイヒマン実験という衝撃的な実験の実話を描いた作品で、一人称映像で主人公ミルグラム博士を捉える独特の映像演出が面白い作品でした。監督はマイケル・アルメレイダです。

今まさに1つの実験が行われようとしている。二人の男が実験室にやって来て、一人は電気ショックの装置をつけられ、別室にもう一人が質問をする係となる被験者となる。そして回答が間違うたびに電気ショックを強めて行くが、苦しむ声を聞きながらも服従するように実験を続けて行く被験者たち。しかし、現実に電気ショックなど行われていずに、ただ悲鳴だけが流されていたのだ。

苦しんでいるのがわかりながらも65%の人が実験を最後まで行う。この実験結果が話題になり、どんどん主人公ミルグラム博士は話題になって行く。

カメラがこちらに向かって語りかけるミルグラム博士を捉える、時に物語に戻り、人々の反応をドキュメントタッチで写し、さらにはカメラに向かって語るミルグラム博士の姿を捉える。

語りかける博士の映像がなかなか個性的で、後ろから像が歩いて来たりとシュールな演出も施されています。

人間の心理と人間性に焦点を当てた実験が正しいことかそうでないのかはともかく、この実験で見えてくるホロコーストの真実はどこか考えさせられるものがあります。ちょっと変わった映画ですが面白かった。


「ANTIPORNO」
ロマン・ポルノリブートプロジェクトの一本。サイケデリックな色彩演出で見せる園子温監督作品ですが、セリフは過激でいつもの暴力的な作品に見えるのですが、ストーリーというか展開に凝り過ぎたために、映画としていつもの過激さが見られない。しかも、色彩演出もただ色を投げつけるだけで美しくもグロくもないのがちょっと残念で、やたら長く感じてしまった。

ベッドで主人公真理子が目を覚ますシーンから始まる。室内は黄色や赤で彩られていて異常な空間である。そこにマネージャーの冨手がやって来て今日のスケジュールを説明するが、やたら罵倒する真理子。そして、冨手を犬のように扱い始める。そこへ今日の撮影スタッフたちがやって来て、エロとグロのシーンが展開。しかし、しばらくするとこれは撮影で、どうやら真理子はできの悪い女優ということで冨手を演じる先輩女優やスタッフたちから罵倒される。

真理子は家に帰ると妹がいて、後妻をもらった父がいて、何やら異様なセリフが繰り返され、幻想とも現実とも見分けられない物語が次々と展開して行く。

冨手と真理子が立場が変わったり戻ったりを繰り返すので、非常に作品が長く感じられるのが残念。しかも園子温らしいエロと下品さがただひたすらに突っ走るだけで、映画としてはどうかなという出来栄えになっている。

面白みがない園子温作品、という感じの一本でした。