「空の大怪獣ラドン」
「ゴジラ」に比べて脚本の甘さが目立つけれども、真面目に大人向けに作られた怪獣映画として十分に楽しめました。有名なラストのラドンが阿蘇山に飲み込まれる場面は、どこか哀愁を帯びていて、この時代の怪獣映画の特色をきっちりと見せてくれます。福岡襲撃シーンも迫力があるし、やはりミニチュア特撮は楽しいですね。監督は本多猪四郎。
阿蘇山のそばの炭鉱で、謎の水没事故が起こり、まもなくして、巨大なヤゴが人々を襲う。炭鉱夫の河村は、炭鉱の落盤で、ヤゴがある巨大な鳥に食べられるのを見て記憶を無くしてしまう。
そんな頃、謎の飛行物体が航空機を襲う事件が起こり、そのスピードから、UFOではないかとさえ思われてしまう。自衛隊の追撃を軽く交わしたその飛行物体は古代生物プテラノドンと判明、ラドンと名付けてその対策を練り始めるが、ラドンは福岡市を襲う。なんで福岡市を襲ったのかが全く不明なのですが。
古代生物の研究者柏木博士によって、ラドンは帰巣本能で阿蘇山付近の炭鉱に戻ってくると推測する。調査しにいくと、そこにはラドンのつがいがいた。自衛隊は、周辺を爆破してラドンの逃げ道を塞ぎ、誘発される阿蘇山噴火で退治しようとする。そして、攻撃が開始され、飛び出したラドンのつがいは阿蘇山の炎で再び溶岩の中に落とされる。やがて、溶岩に食われるようにラドンのつがいが溶かされていって映画は終わる。
なんとも切ないラストシーンですが、人間ドラマにほとんど視点が向けられていないのと、当時のこの手の作品への評価もあって、かなり雑な展開になっています。でも円谷英二の特撮場面はやはり楽しい。それだけでも見た値打ちのある映画でした。
「N ever Goin’ B ack ネバー・ゴーイン・バック」
軽快な音楽に乗せて展開するビッチな女の子二人のまさに吹っ飛んだガールズムービーの快作。楽しい。ひたすらに楽しくて明るい映画だった。クソな二人の女の子が憎めないほどに陽気なのも良い。さすがA24という感じの下品さも明るく楽しめました。監督はオーガスティン・フリッゼル。
アンジェラとジェシーが、いつものように同じベッドで朝、目が覚める。といってレズビアンではないただの高校中退した友達。アンジェラはジェシーの誕生日に一週間のビーチリゾート旅行をプレゼントしたというのだが、そのお金は二人の家賃だった。一瞬戸惑うジェシーだが、アンジェラの気持ちにそのまま乗っかる。このオープニングがまず爽快。
家賃を稼がないといけないので、バイト先のファミレスで無理なシフトを入れてもらうが、突然、兄ダスティンのコソ泥失敗で、わけもわからないままに家電を持って行かれてしまう。しかもそのどさくさで自宅に大麻があるのを見つけられたアンジェラらは警察に逮捕された48時間拘束されてしまう。留置所でトイレにいけないジェシーはひたすら我慢して便秘になってしまう。
便秘解消のためにスーパーでブルーベリーを大量に試食していて、買い物に来ていた老夫婦に責められ、悪態をつきながら、その店を飛び出す。アンジェラらはお金のためにさらに奔走し始めるが、バイト用の制服を兄達に汚されてしまい、クリーニングしようとコインランドリーを回っていて、友人のパーティに誘われる。そこで洗濯機も借りようと出かけたものの、誤って大麻入りのクッキーを大量に食べてしまう。
ハイになったまま、汚れた制服を着てその夜のシフトにバイト先に向かうが、当然ながらクビになる。仕事もなくなり途方に暮れた二人は友人のブランドンが働くファーストフード店に強盗に入ったように見せかけてブランドンにお金を借りようと画策、店に向かう。そんな頃、ジェシーの兄ダスティンらも金の工面のためにブランドンの店に本気で強盗に入ろうと計画する。
アンジェラらがブランドンに協力を交渉している時、ダスティンらが強盗に入ってくるが、アンジェラらに見破られ、渋々帰っていく。しかも店には50ドルほどしかないとブランドンに言われガッカリするアンジェラ達。
ところがそこに、店のオーナーがやってくる。慌てたブランドンはアンジェラらを掃除用具倉庫に匿う。オーナーは、やりたいことがあるから先に帰れとブランドンを無理やり帰し、アンジェラらは逃げるタイミングを失するが、よく見ると、そのオーナーは昼、スーパーで責められた老夫婦の夫の方だった。最悪な状況の中、アンジェラらが覗き見する前でオーナーはエロサイトを見て一人でオナニーを始める。
驚いたアンジェラらだが、食べたサンドイッチのせいで、ジェシーは便意をもよおし、用具室で排便してしまう。我慢しきれず吐きながら飛び出したアンジェラは驚いたオーナーを気絶させてしまう。しかもオーナーは店と手提げ金庫のキーを置いたままだった。アンジェラらは、オーナーの携帯のエロサイトの写真と妻のアドレスを手に入れたと置き手紙をし、金庫を開けて大金を手にして逃走する。
家に帰ったらアンジェラらは、兄達が寝るそばをすり抜けてベッドに行き、どこかのビーチへ行って楽しんでいる夢を見て映画は終わっていく。現実なのか夢だったのかという曖昧さの残るエンディング。
とにかく、痛快で楽しい快作で、決して傑作ではないかもしれないけれど、軽快な音楽に乗せて、なんでもありの青春真っ只中というフレッシュな映像がとっても心地よいです。小品ですがちょっとした佳作でした。