くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「花の生涯〜梅蘭芳〜」

花の生涯〜梅蘭芳〜

「さらばわが愛〜覇王別姫〜」から16年たって、再度京劇の世界を描いたチャン・カイコー監督の期待作品、今度は完全な実話の世界にい望んだ。
「さらばわが愛〜覇王別姫〜」が素晴らしい映画だったので、期待しないほうがおかしいというものである。

確かに京劇の世界というのはあまり知識がないのでその点からの考察は難しいのですが、さすがにチェン・カイコー監督、そのあたりの知識不足などものともせず、人間ドラマとして、きっちりと人物紹介を丁寧に行ったうえで物語が本編へと進んでいくので、非常に判りやすかった。

導入部分、父の死からはじまり、やがて一人前になった主人公梅蘭芳(メイ・ランファン)が師匠と対決するあたりから、師匠の死に直面するあたりまでの前半の出だしのあたりは、一気に観客を、聞きなれない京劇の世界の中に引き込んでしまう。
中国の京劇界で、あまりにも有名な一人の実在の天才京劇俳優の姿、その迫力が徐々に観客に伝わると共に、京劇を芸術として世界に知らしめんと、する主人公の周りの人たち。

さらに、天才的な京劇俳優ながら、一方で非常に繊細で、いざというときに歌詞が思う出せなくなってしまったりする弱さも、見事に演じきったレオン・ライの名演。
そして、男役の女優という京劇ではあまり知られていない存在である孟小冬(チャン・ツィー)が登場するあたりから、さらに物語が深みを帯びてくると共に、やがて来る激動の時代が徐々に忍び寄ってくる。

重厚なドラマであると共に、目が覚めるほどに美しく、引き込まれるほどに魅力ある映像、京劇の美と中国現代史のリアリティ、そしてひとつの芸術に生涯を翻弄されていく人々の姿が満遍なくしかも、胸に訴えかけるように語られていくこの作品の魅力はとても文章に表しきれないほどに格調高い。

いい映画でした。