「未来を乗り換えた男」
面白い話なんですが、どこかすっきりと見終わることができないのはなぜだろう。舞台となる国と時間に入り込めなかったせいか、主人公の姿に感情移入できなかったせいか、いずれにしても、すっきりしなかった。監督はクリスティアン・ペッツォルト。
ナチスの迫害から逃れ、パリからマルセイユにやってきたゲオルクがカフェにいる姿から映画が始まる。たまたま、ヴァイデルという作家が自殺した現場に出くわし、そこで、手に入れた書類からヴァイデルになることを決めたゲオルクはマルセイユからメキシコに行く計画を立てる。
折しもヴァイデルを探している彼の妻マリーと出会うが、マリーはまさかゲオルクがヴァイデルになりすましているとは知らず親しくなっていく。
ゲオルクは夫を探し求めるマリーにもビザを用意し、船に乗せようとする。ゲオルクの周りに関わってくる言葉の喋れない母と少年、マリーと一緒にいる小児科の医師などのエピソードが絡み、難民問題を絡めたような不思議な時間描写を交えて物語は展開。
ゲオルクは、一旦はマリーと同じ船でメキシコに旅立とうとするが、マリーが、ヴァイデルも船に乗っていると聞いてきたため、真実を打ち明けられないゲオルクは小児科の医師にビザを譲り、自分は残ることにする。
ところが、カフェで過ごしているゲオルクの前にマリーが現れた気がして、港に行って乗船記録を調べると、確かに乗ったが、その船は機雷で沈められたと知る。
ナチスの迫害と難民問題を絡めた作品であるという解説もあるが、素直にミステリーとしてみる感じの映画だった気がします。
「札束無情」
非常にシンプルなストーリーですが、娯楽のエッセンスが詰まったフィルムノワールの秀作。単純に面白かった。監督はリチャード・フライシャー。
警察に、強盗事件が球場のそばで起こったと連絡が入り、コーデル警備らが駆けつける。その時間を計っている一人の男パービスの姿から映画が始まる。パービスをボスとする強盗団は、球場前に巡回してくる現金輸送車を襲う計画を立てていた。
そして、まんまと計画は成功したかに思われたが、駆けつけた警官達と銃撃戦になり、手下の一人が撃たれてしまう。さらに追い詰める過程で、警官も撃たれ、手下も裏切り、空港から情婦と高飛びしようとしたパービスは、警官に追い詰められ、旅客機と接触して死んでしまう。そしてエンディングとまぁ、シンプルな映画である。
ハイスピードで捉えるカーチェイスのシーンから、ラストの畳み掛けまでテンポが実にいい。気楽に楽しめる娯楽映画の一本という感じでした。