くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マクナイーマ「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」

マクナイーマ

「マクナイーマ
カルトムービーの一品としてデジタル修復されたブラジル映画。フランスで3年間ロングヒットしたという一品。
なんとも、奇妙キテレツな作品でした。

映画が始まると一人の黒人の老婆が息んでいます。次の瞬間、黒人の大人の赤ん坊がぼたっという音とともに生まれる。あっけらかんとしている観客をよそに、マクナイーマと名付けられたこの赤ん坊とその家族の物語が、何ともサイケデリックな色彩表現と、奇想天外な展開でつづられていく様はまさにカルト。

魔法のたばこで突然白人の王子になるかと思えば、魔法の水を浴びて白人に変身。兄弟とともに都会へでていくアドベンチャー?が始まります。

都会で出会う人々はあまりにもマンガチックにデフォルメされた成金や革命家など時代風刺も交えて、何でもありの展開とわけのわからない映像が次々と語られていく。

そして、もう一度ふるさとに戻ろうと思い直した兄弟とマクナイーマ。戻ってみれば懐かしい家が。しかし、一晩たつと、兄弟はマクナイーマを残してどこかへ消えてしまう。そして、マクナイーマは人食い人魚に食べられて水面に真っ赤な血が漂っていくところで映画が終わります。昨日の「切られた首」よりストーリー性はあるし、これはこれでレアな一本と呼べる映画だったと思います。


嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん
この映画、なかなかの一本です。しかもかなりなミステリーでもある。
ポップな映像と荒井由美の「ルージュの伝言」をバックに映画は始まる。コマ落としでハイテンポに序盤を演出し、主人公となるみーくんとまーちゃん、そしてキーマンとなる生徒会長の菅原道真くんを紹介する導入部は見事。

まるでファンタジックに突然校舎の屋上に座って手を振るみーくん、机で居眠りするまーちゃん、そして子供の誘拐事件のチラシ、連続通り魔事件の話題がさりげなく挿入される。この舞台設定の演出は近頃の作品にない丁寧な脚本で非常に好感である。
そして、ふらふらとまーちゃんについて行くみーくん、一人暮らしのまーちゃんの部屋に強引に入るみーくん、そしてあれよあれよという間にみーくんが
「まーちゃん!」と声をかけると、とつぜんまーちゃんがみーくんを認めるファーストシーンが何とも意味深でファンタジック。
そして、部屋の奥にはさっき話題になっていたふたりの子供が拉致されている。もうここからぐんぐんストーリーに引き込まれていく。

そして時々フラッシュバックでみーくんとまーちゃんが幼い頃に監禁され、猟奇的な男にいたぶられていた様子が描かれて、次第にこのふたりの生い立ちが浮かび上がってくる。
じわりじわりと一方で恐怖が表現されると共に、拉致している子供たちは実は自由に動けたり、すっかり拉致された部屋で勉強や遊びを満喫し始めるコミカルな展開も対照的でなかなかユーモアのセンスも垣間見られ引き込まれます。さらにみーくんがセリフをしゃべるごとにカメラに向かって「嘘ですけどね・・」などと語りかける一人称も効果的。

こうして、まーちゃんとみーくんの二人の奇妙な生活と、過去のトラウマが交互に語られ、さらに連続殺人を追う刑事、まーちゃんやみーくんを診察する担当医の精神科医などが脇に見え隠れし始めると物語は次第に深みを増してくる。
やがてふとしたきっかけでまーちゃんが壊れ、みーくんをわからなくなる下りから、過去の自分たちの監禁事件の真相が語られていく。

実は最初のフラッシュバックでみーくんとまーちゃんとして登場していたみーくんは途中でまーちゃんをおいて脱出。その後その家のもうひとりのみーくんがまーちゃんといっしょになる。実は脱出したみーくんは後の菅原道真君。そして後からまーちゃんによりそったみーくんが今、登場しているみーくんで、監禁している男の子供。
その犯人の男はまーちゃんの両親も拉致し、まーちゃんに殺させるという猟奇的な行動さえ起こしたことが語られ、さらに自分のこどもであるみーくんを斧で殺そうとし、それをかばった母親を殺害。まーちゃんにその犯人も刺し殺されるという結末が描かれていく。

現代に戻ると、実はみーくんは連続殺人の犯人が菅原であることを知っている。まーちゃんが拉致している子供を逃がし、菅原を捕まえるために寄るの公園におびき出すが、逆に刺されてしまう。しかし一命を取りとめるものの、まーちゃんはすでにみーくんのことがわからなくなっているということを精神科医から知らされる。

そして、町を歩くみーくん、目の前をまーちゃんが通り過ぎ、再び呼び合ってキスをするというエンディングである。

実にポップで個性的な画面が展開し、モダンな演出とセリフ回し、さらにファンタジックな映像が反乱する上に、音楽の使い方が実にうまい。ラストシーンの落としどころがちょっとしつこいように思うが、今後が本当に期待できる監督ではないかと思う。良い映画でした。