くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「イリュージョニスト」「神々と男たち」

イリュージョニスト

「イリュージニスト」
落ち着いた色彩で美しい画面を作り出し、一遍の詩のような感覚で描かれた淡い恋物語のようなファンタジーアニメでした。
それは、日本アニメのテクニカルな完成度やディズニーアニメの夢あふれる映像世界とはちょっと異なった独特の世界といえばそういえるかもしれません。

イギリスの風景のショットが実に美しくて、水彩のような霧に煙る描写がすばらしい。

時は1958年頃、そしてそこで展開するのは今や年老いた一人のマジシャンが、一人の少女と出会い、その少女がマジシャンを魔法使いのように何でも出してくれるとあこがれる。そんなピュアな心にマジシャンが答えるように夢を与え続ける切ない物語。

しかし、ひとときの幻もやがて限界がくる。そんなとき少女は一人の若者に出会い。二人の姿を見たマジシャンは長年連れ添った種であるウサギを野原に解放して自ら身を引いていく。

汽車で移動するときのイギリスの田園風景やロンドン、エジンバラなどの町の風景、さらに、ホテルの部屋の中に差し込んでくる日差しの情景などが実に詩的でため息がでます。

きらきらと瞬く電球の光や影と揺らめきをリズミカルに多用した画面づくりは本当に夢見心地にしてくれます。その意味でアニメとして非常に優れていますが、一方、日本のアニメでもこういう方向で描けば十分作り上げられるようなレベルであるといえなくもない。

なにもかもが古きよき時代になりテレビジョンの売っているショウウィンドウのショットでエンディングを迎えるのは何とももの悲しさを漂わせてくれました。いいアニメでした。


「神々と男たち」
カンヌ映画祭でグランプリを受賞した期待作である。押し殺したような感情を抑えた重厚な演出とストーリー展開で終盤まで映し出していく修導士たちの物語は正直かなりしんどかった。

物語はフランスからアルジェリアへ移って田舎の村で布教と貧しい人々をわずかな薬で医療を施す修導士たちがテロリストたちに拉致され殺戮されるまでを描いた実話に基づく物語である。

イスラム原理主義が微妙なゆがみをもたらし、テロリスト軍団がふつうの人々をも平気で殺戮するアルジェリア。当地の軍隊との半ば戦闘状態で、非常に危険かつ不安定な地域にあえて貧しい人々を救わんがため神の導きを信じてフランスから移り住んだ主人公たち。時にテロリストたちの治療さえもいとわず、ことあるごとにフランスへ帰るかどうかの評議が行われる。

しかし、時に迷いは生じるものの行き着く先には神に仕えた身としてこの地に残る決断をする修導士たち。軍隊による検閲などにも徹底的な非暴力主義を貫く彼ら。

映画の転換点は軍隊のヘリコプターが不気味にこの修導士たちのいる教会の上空に現れるあたりからであろう。不屈の闘志でひたすら祈りを捧げ、やがて遠ざかるヘリコプターの音を聞いた後、彼らは「白鳥の湖」のテープを流してワインを飲んで歓談する。今までの押し殺された映像が一気に吹っ切れて解放される瞬間が実に見事である。

そして、物語はクライマックス。ある早朝、突然テロリストたちに拉致されいずこへかつれていかれる。幸いにも二人だけが取り残され、抱き合うも、連れ去られた人々はフランス政府に対するテロリストの要求の人質となる。しかし、テロリストに屈しない政府の方針(だったのだろう)、彼らは殺戮されたというテロップが流れ映画は終わる。

クライマックスのほんの数分までの映像が息苦しくもあり、退屈でもある。正直なところ、つまらないといえなくもないのであるが、最後の解放感へ向けていくという演出スタイルがこの映画が評価されたゆえんであろう。しかし、テロに屈しなかったフランス政府の断固たる態度を切々と訴えたことが評価されたといえなくもない。そう考えると、政治色が見え隠れして非常に気分の悪い作品いえなくもないと思う。

いずれにせよ、私にとっては退屈至極な一本でした。