くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「あぶく銭」「敵中横断三百里」「ある殺し屋」

あぶく銭

「あぶく銭」
特に取り立てるほどの秀作ではなかったが、クライマックス、雨の中、天知茂勝新太郎が道行きで殴り込みにいく場面が抜群に美しく、このシーンをみるだけでも値打ちのある一本だったと思う。

土砂降りで真っ赤な傘をきた天知茂と皮のコートの勝新太郎が雨の中二人で道行き。やがて雨が上がり夕日の黄色い光の中、橋を渡るときの美的なショット、そして殴り込みの中、中庭で切り合いをする天知茂たちをとらえる真上からのショットはまさに「薄桜記」のクライマックスの如し。この数分がこの映画の見所かもしれない。

大映晩年の一本で、この翌年倒産する。量産してきたプログラムピクチャーの一本のようで、物語にもこれといって奥の深い物もないし、途中の展開もかなり荒削りである。

主人公のヒゲ松(勝新太郎)が賭場を荒らしながらとある町にやってきて、そこでやくざ同士の争いに巻き込まれていくのだが、それぞれのエピソードやプロットにその場限りのような演出しかなされていない。前後の物語へのつながりも即興的、まさにお手軽映画であった。

しかし、最初に書いたクライマックスは必見。さすが森一生、量産の中にこだわりを見せる腕は衰えていなかったといえる作品でした。

日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里
黒澤明が脚本に参加したという必見の一本である。
六人の斥候兵がロシア軍の奥深くへ潜入し、最後の攻撃点となるロシア軍の集結地を探るという単純な話であるが、どこか、西部劇のような見せ場がちりばめられていて、さすがに小国英雄黒澤明の脚本らしいエンターテインメント性満載の一品でした。

時は日露戦争末期。すでに国力の限界に達している日本軍は死力を投じて最後の決戦の場を探っている。そしてその場を決めるべく六人の斥候兵がロシア軍の深くへ潜入するという危険な任務を負うのである。
一人でも帰ればいいという任務ながら結局五人が生還するという結末になるが、途中、馬族を組織する日本の軍人や中国の村で出会う危険など様々なエピソードをちりばめている。

広大な雪原をただひたすらに駆け抜けるという単調になる物語を劇的に描いたという点ではかなり脚本に頼る部分が大きい一本でした。

いったいどこでロケーションをしたのかは不明ですが、セットといい、ロケのシーンといい、かなりの大作であることが伺えます。せりふの一つ一つにきびきびとした演出を施し、戦争末期の緊張感を醸し出していく森一生の演出も力が入っていますが、いつものような荒削りな豪快さがみられないのは、ちょっと気負いが合ったのでしょうか。

しかし、みるべき映画の一本であることは確かであり、一級品かどうかというより、脚本の出来映えがいかに作品に反映するかを証明する映画だったと思います

「ある殺し屋」
日本フィルムノワールの傑作。おもしろい!その一言につきる娯楽映画でした。

ヒルでその正体が全く分からない主人公塩沢(市川雷蔵)の存在感、一方ちょっと姑息な成田三樹夫扮するチンピラやくざ前田の好対象な存在、そこへ色を添える若い頃のかわいらしい野川由美子扮する圭子がそれぞれ抜群に生き生きしているのです。

映画が始まって、一人のサラリーマン風の男が駅からでてくる。そして埋め立て中の寂れた土地の傍ら、墓地のある横に立つアパートに入って部屋を借りる。なんともいえない設定がわくわくさせてくれます。

そこへやってくる前田と圭子。フラッシュバックで塩沢の仕事ぶり、裏の顔、表の職業、腕前などが紹介されていく。何ともうれしくなってくるアンチヒーロー像の描き方。

これから塩沢をだまして殺してしまおうとしている前田たちの行動と、これからかかる大仕事の成り行きが交互に展開し、過去の塩沢の手口の鮮やかさもフラッシュバックされて、どんどんクライマックスへ盛り上がってくるという演出スタイルはまさにエンターテインメントである。

そして、まんまとだますはずがそんなことはとうにお見通しという塩沢に前田たちはあたふたするが、そんな彼らに塩沢は取り分の麻薬を与えて去っていく。いやぁニヒルだねぇ。イキだねぇ。でもこんなロマンが今の映画にはないのですよね。

塩沢が言ったせりふをまねをして去っていく成田のユーモアもまた絶品。これぞ映画黄金騎の娯楽映画である。