「バッド・ティーチャー」
どうでもいい映画なのですが、大好きなキャメロン・ディアス目的で見に行ったお気楽なアメリカンコメディです。
と、気楽に見に行ったのですが、これがまた結構楽しめる。笑いのテンポが実に最高なのです。しかもキャメロン・ディアス扮するエリザベスとそのライバルでやたらとちょっかいをかけてくるルーシー・パンチ扮するエイミーとの掛け合いのおもしろさに、目的である玉の輿の彼氏と体育教師とのからみが実に楽しい。
最近、キャメロン・ディアスのような典型的なアメリカンガールがでてこなくなったアメリカ映画界ですが、やっぱりこの吹っ切れたような陽気さのあるキャメロン・ディアスの魅力はまだまだ衰えませんね。
これから玉の輿の乗るということで教師を寿退社ところから映画が始まる。派手なベンツのスポーツカーに乗ってフィアンセのところに戻ってみれば相手の母親に疎まれて破談。
前半は、玉の輿に乗り損ねたエリザベスが再び教師に戻ってきて新たなターゲットに好かれるために豊胸手術の金を作るためにひたすら金儲けに奔走する主人公がコミカルに描かれる。そこにさりげなく絡む彼女に思いを寄せる体育教師。
どたばたコメディなのだが、大笑いというより終始にこにこと楽しませてくれるストーリー展開が最高。しかも、年をとったとはいえキャメロン・ディアスはまだまだ十分魅力的だからいい。
結局、エイミーのじゃまをことごとく跳ね返していくエリザベスの行動が爽快で、ラストは見事エイミーを追い出し、自分は本当の恋を知って体育教師とうまくいったかのようなラストで締めくくる。そして生活指導の担当になったというエリザベスが自分のオフィスに入ってい区という皮肉な笑いでエンディング。
小気味よい笑いとテンポのいい展開、退屈しない物語構成がとってもお気楽で楽しい。こんな映画アメリカ映画でないと味わえませんね。とっても楽しかった。
「幸せへのキセキ」
昔懐かしい夢を求めるアメリカンファミリーの物語ですが、とってもさわやかに素直に感動させていただきました。
実話を元にした作品ですが、仰々しいほどの苦難のエピソードの後に感動を呼ぶというようなありきたりの演出をキャメロン・クロウ監督はとっていません。淡々と妻を失った主人公ベンジャミンを中心にした家族の物語を描いていきます。そして、そこに絡んでくる形で動物園の再生の物語が描かれていく。このさりげない物語構成が実にさわやか。
ストーリーの転換点で目の覚めるような風景のショットを二度挿入し、ともすると地面をはうようなストーリーになるところを外の世界へ観客の視点を向けてくれます。背後に流れる軽いタッチの音楽も作品をとってもさわやかなものにしてくれます。
ロージーを演じたマギー・エリザベス・ジョーンズの愛らしい演技も見所ですが、どの登場人物にも極端なウエィトをおかず、途中でベンジャミンが「なぜ動物園を買ったの」ときかれ「いけないか?」という返事をラストシーン、ママと知り合った瞬間を子供たちに見せる場面で「初対面の男にどうして答えてくれるの?」と聞いて「いけない?」と答えるママのショットでエンディングを迎える。とっても懐かしいほどにすがすがしい古きアメリカ映画のスタイルをみた気がしました。
かつてはこんな夢を求めるアメリカ映画がいっぱいあったのに、いつの間にかアメリカ映画というと派手なアクションやCGを売りにするだけになってしまった気がします。
取り立てて、卓越した作品とは思えませんが、とってもきれいにまとまった暖かい家族の物語、夫婦の物語に、何のこだわりもなく、画面から伝わるままに感動できる一本だった気がします。
「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」
三島由紀夫が組織した盾の会と彼の自決を描いた若松浩二監督作品であるが、若松監督らしい迫力が感じられなかったというのが正直な感想です。特に当時の世相の息吹が伝わってこない。これはいわば、時がたってしまったものかと思わなくもないのであるが、ロバート・アルトマン監督作品を今見ても、自然と当時の世界の臭いが漂ってくることを考えると、この作品は今一つ若松監督のメッセージが描き切れていないのだろう。
学生運動や新宿暴動事件など歴史的な出来事のドキュメンタリー映像を挿入してリアリティを求めているのであるが、いざ、創作した映像場面になるととたんに緊張感がなくなる。それは三島由紀夫を演じた俳優の力量不足というものではなく、若松浩二が演出している画面に緊張感がないのである。どこか空間が目立つカメラの構図、一つ一つのせりふの組立の迫力のなさ、シーンとシーンの組み合わせの緩さ、ではないだろうか。生意気なことを書いているかもしれないが、息苦しくなるような若松浩二監督の鬼気迫るものが見えないのである。
三島由紀夫の自決を描いていったいどんなメッセージを訴えたかったのか。若松浩二の声が聞こえない。
こういう映画に出来不出来をいうべきではないかもしれないが、若松浩二監督にはもっと期待してしかるべき力量があるのだから、たとえ反感を生み出すものであったにせよ、迫ってくるものがほしかった気がします。