くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「白雪姫と鏡の女王」「夢見るふたり」「鍵泥棒のメソッド」

白雪姫と鏡の女王

白雪姫と鏡の女王
インドのターセム・シン監督が描くファンタジーの世界。先日の「スノウホワイト」のような中途半端なアクション映画ではなく、完全に人を食ったようなブラックと風刺の効いたせりふの数々と有名なおとぎ話をあざ笑うかのようなストーリー展開がとっても楽しい。

テンポよく進む「白雪姫」の物語だが随所に改変が散りばめられ、その奇想天外な展開もまた楽しめる。傑作というには今一つリズムが乗り切らないのがもったいないが、ターセム監督独特の感性で描くアクションシーンやキャラクターの造形がとにかく夢満載の大人の童話に仕上げているのです。

悪の女王ジュリア・ロバーツの向こうを張る白雪姫にイギリスのフィル・コリンズの娘でエキゾチックな風貌のリリー・コリンズを使ったキャスティングも絶妙で、エンドタイトルに小気味の聞いた冗談と白雪姫に歌って踊らせる趣向が最後まで観客を楽しませてくれます。

どうせ有名な童話を改変するならこんな方向も一興です。これはもう監督の感性なくしては実現しない一本かと思います。大好きですね。


夢売るふたり
さりげない日常をゆっくりとカメラが横にとらえていってタイトルバック。そして10年の努力が実って一軒の小料理店を忙しく切り盛りする里子と貫也夫婦のシーンへ物語ははいっていく。タイトルの終わりに車の急ブレーキの音が流れてそれを振り返る一人の女性。これからの物語のきっかけになる女性のアップからの導入は見事。全体にいえるが、西川美和監督の作品は独特の空気とリズムが全体に漂う。それは一種独特の個性で、そのムードがとってもいいなと思うのです。

なんといっても秀逸は松たか子の抜群の演技力である。ふとしたことで玲子と一夜を過ごした夫を風呂場で責める。夫のいいわけにチッと舌打ちをするタイミングは絶妙。

これをきっかけに人をだまして金を借りて再起をかけようという計画を思いついた里子は貫也に次々とそのチャンスを作っていく。ターゲットを見つけては次々と仕掛けていく。

しかし、どこかに一抹の寂しさを見せる松たか子の微妙な女心を描写する演技はすばらしいし、自慰をするシーンやトイレでナプキンを下着につけるシーンなど女性監督ならではの繊細な女心を示す脚本もすばらしい。

結局、次第に自分から心が離れていく夫貫也を追ってしまう里子のショットが切ない。夫貫也が昼間一緒に過ごす滝子の存在を知って、夫の後を追い、土砂降りの雨の中、滝子の家にある貫也の包丁をとり殺しにいかんとするが、階段に子供があがってきて思わず落としてしまう。しかし、このときの里子の予定した行動の続きをこの子どもが田中麗奈扮する咲月が雇ったやくざまがいの探偵を後ろから刺すというクライマックスへの伏線となる。

貫也は子供の罪をかぶって服役、里子は魚市場で働き、咲月も田舎にかえる。すべてが終わりふつうの日常に戻っていくこの空気が西川美和の作品である。驚くほどの傑作ではないが、なかなかの秀作だったかな。何度も書きますが、松たか子はすごい女優かもしれません。


鍵泥棒のメソッド
軽いタッチのリズムと音楽、軽快なテンポとウィットのきいた演出で楽しめる娯楽映画の佳作という感じでした。

監督は「アフタースクール」の内田けんじ。いきなりどこかの雑誌の編集室、広末涼子扮する水嶋が結婚宣言をする。しかも相手はこれからで、みんなに協力してほしいと宣言。スタッフは仕事の依頼のように淡々とその計画に協力しようという態度を示す。この導入部のノリが最高。そして舞台は山崎(コンドウ)が仕事で一人の男wさあザ八家に殺害するところ、そして南沢が自殺未遂で目を覚ますところへと移る。

背後に軽いピアノの曲が彩り、画面全体が実にふわふわと流れていく様がとってもいい。ただ、南沢の堺雅人がどうもキャラクターがうまく統一されず、山崎の香川照之ももうちょっと使い切れていないのは残念。光のは広末涼子飲みというのはちょっと残念である。

風呂場で滑って転倒した山崎が記憶を失い、たまたま金のなかった南沢が山崎のロッカーの鍵をすり替えて山崎になりすまそうとするところから本編。そこへ水嶋が絡んできて、山崎の次の依頼でやくざの工藤が登場して物語はどんどん絡み合ってくる。

水嶋の父のシーンや水嶋の姉のキャラクター、南沢の彼女の描写など、ちょっと弱いところも多々あるが、随所に散りばめられた乾いたギャグの数々が最後まで飽きさせずに見せてくれる。

そして、ラスト、山崎がピンチを切り抜けようと画策するもどうもかみ合わない展開でラストシーンへ。当然のようですが水嶋と山崎のハッピーエンドで幕を閉じる。この作品も決して傑作とはいえないのだが、楽しい一本でした。