「ガールズ・ステップ」
この手のガールズムービーは時として、いい映画に出会うのです。その期待で見に行きましたが、普通の映画でした。キャラクターが引き立っていないし、と言って、それぞれの俳優さんも光っていない。全部が一つのものに見えるために、楽しくないのです。その上、ストーリーは、ありきたりというより、やや俗っぽいために、そちらで見せるものもない。ちょっと残念でした。監督は川村泰裕です。
ステージでエンディングの挨拶をするシーンから始まる。このオープニングは、よく使われる手ですが、効果的に使うととってもいい展開になるのですが、この後、タイトル、本編と流れていく中では、普通のお話と映像になってしまう。
クラスで、いつも使いっ走りで、友達をなくしたくないと、調子を合わせている主人公のあずさ。このクラスにはジミーズと呼ばれる、どこか暗い女子がいる。という冒頭の設定がまず、見えてこないで、セリフの説明だけになっている。
ダンスの授業をこのメンバーがサボったことで、先生は地元のイベントで踊るように提案。とりあえずイベントで踊った彼女たちは、もっとダンスをやりたいからと、全国大会出場を目指すのが本編。
ですが、どれもセリフで説明する展開で、とても感情が湧き上がって流れていったというように見えない。
後は、よくあるお話で、彼女たちを妨害するクラスのリーダー的なグループが入って、一旦バラバラになるも、社会人の男に遊ばれているメンバーが妊娠するというありきたりの展開から五人が再度まとまって、クライマックス。
まず、選曲センスも良くないので、映画がリズムに乗ってこない。それと、主演の石井杏奈が、いまひとつ個性が弱いのと、周りの脇役も精彩に欠ける。ダンスをただ楽しむために、キャッキャ言う感じで走り抜ければそれはそれで面白かったのに、どれも平坦で、動きのない作品で終わってしまった。それほど期待もしてなかったけれど、ちょっとさみしいね。
「薩チャン正ちゃん 戦後民主的独立プロ奮闘記」
時間つぶしに、普段見ないドキュメンタリーを見た。
戦後間もなく、大手映画会社から抜け出して独立プロを作り、社会問題を前面に出した作品を連発していく山本薩夫や今井正、新藤兼人などの姿を記録したドキュメンタリーである。
様々な独立プロ作品の名作名場面をちりばめ、裏話を混じえて描くので、映画ファンにとってはたまらない面白さがある。
ドキュメンタリーなので、それ以上の感想はないが、名場面のダイジェストを見ているだけでも見た価値があった一本でした。
「荷車の歌」
これはなかなかの一本。圧倒的な俳優の気力というか迫力に圧倒されるドラマでした。監督は山本薩夫、独立プロ時代の作品です。
物語は、農村に嫁いだ主人公が、舅の仕打ちに耐えながら、子供を設け、荷車を引いて生計を立て、夫の浮気にも耐えて、時代を生き抜いていくたくましい話です。
戦争を越え、やがて夫が死んで、たくさんの子供や孫に囲まれながら、戦後に続くシーンでエンディングを迎えます。
少女時代から老年までを演じる俳優たちの迫力が物凄いし、脇役で登場する様々な俳優の存在感も半端ではない。しかも山本薩夫の演出は、殺風景ながら広がる農村の景色、車を引く道の場面、荷下ろしする渡し場のカットなど、非常に大きく見せる映像も素晴らしく、一級品の映画の貫禄を見せつけてくれます。
素晴らしい古き傑作に出会った気がしました。