「忍びの国」
ハイテンポで独創的な演出で見せる殺陣シーンはそれなりに面白いのですが、どこかスケールを感じさせないのはカメラワークが悪いのか。さらに物語のエピソードの配分があまり良くないので、畳み掛けてエンディングに向かうクライマックスが妙にダラダラ感が見えるのが残念。監督は中村義洋。
伊賀の国の人を人と思わず、遊び半分のように人殺しをしながらゲームのような小競り合いをしているシーンから映画が始まる。その異様なくらいのアニメチックな紹介シーンは確かに面白いし、主人公無門の並外れた強さの紹介には見事なのだがどこかせせこましく見える。
そんな伊賀の国に織田信長の息子の信雄が攻めてくることになる。信長の先鋒として伊勢国を手に入れた信雄は家臣たちの反対を押し切って伊賀の国にへ攻めることを考えるが、それもこれも、伊賀の国の長老たちの術で動かされていたという背景が見えてくる。
この辺りの展開もストーリーの組み立ても面白いのに、なぜスケールの大きさが見えないのかと不思議で仕方ない。
一方、無門はというと最愛の妻お国に頭が上がらない。無門を演じる大野智は嫌いなのだが、今回は全くはまり役で、そのままに無門のキャラクターが生きている。
そしてクライマックスは信雄と無門らの伊賀軍との戦いになるが、一旦逃げた無門たちが戻ってくるあたりの畳み掛けの面白さは絶品。なのにそのあと、さらにダラダラ続くシーンが余計で、無門に茶器を預けて自害した北畠凛と無門のエピソードももう少し膨らませて深く演出すれば映画自体が引き立った気がするが今ひとつ通り一遍だったのはもったいない。
結局、お国はふとしたことで伊賀人たちに殺され、無門は伊賀を去る。そして数年後、圧倒的な織田軍に伊賀は滅ぼされるが、無門はかつてのお国が気にかけた少年を助け、何処ともなくさってエンディング。
おそらく原作は面白いのだろうが、今ひとつ映画として仕上がっていないのは脚本の弱さだろう。もったいない作品だった気がします。
「パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊」
シリーズ完結したと思っていたら、またまたスタート。正直、キャラクターの関係がほとんど覚えていないし、今回余計にわからなかったが、まぁ娯楽映画としては面白いからいいとしよう。監督はヨアヒム・ローニングとエスペン・サンドペリです。
ジャック・スパロウに恨みを持つサラザールが魔の三角域から解放され、復讐を目論むが、その復讐を阻止するべく、ポセイドンの槍を見つけるというのが物語の中心。ただそこに至るまでが例によってひたすら戦いシーンの連続で、ドタバタと展開するので物語の本筋が見えない。
当然、見事なポセイドンの槍を見つけ、サラザールの呪いを解いてやるが、海の中に飲み込まれてサラザールらは全滅。
今時、CGの特撮も物珍しくもないし、カメラの構図や切り替えに工夫もないので、ただ派手なシーンだけが目立つ。特に個性的な映像が見られるわけでもなく、ありきたりの展開のままにラストシーンという映画である。
気楽に楽しむにはそれなりの出来栄えの一本ですが、このシリーズも面白いものは素直に面白かったから、やはり作り用というのはあるのだと思います。